NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「真・鮫島事件」(50点/オカルト)

■■■「真・鮫島事件」■■■
(50点/オカルト)


 コロナ禍で外出の規制されていた時期、菜奈は高校の頃の部活仲間と6人で毎年恒例の『リモート飲み会』を行う事となる。


 しかし予定の時間になっても、メンバーの一人であるあゆみが参加して来ないことから不審に思っていると、あゆみのアカウントで彼女の恋人らしい男性が会議へと参加。


 彼は『お前たちと一緒に行ったこんな事になってしまった』と『あゆみの死体』と思われる映像を見せた後に、画面の向こう側で何者かに襲われて姿を消してしまう。


 映像を見た彼らは急いで警察に連絡しようとするが、電話が一切繋がらないうえに、部屋からも出られない状態になっている事に気付く。


 パニックに陥った彼らは、『あゆみに何があったのか?』とメンバーを問い詰めたところ、裕貴と鈴とあゆみの3人で『鮫島事件』という『真相に触れたものは必ず死ぬ』と言われるネット怪談の発祥の地とウワサされる廃ホテルに肝試しに訪れた事と、肝試しから帰って来て以降、あゆみの様子がどこかおかしかった事を知らされるが…

 


 『関わったもの全てが死ぬ』とネットで噂される『鮫島事件』という謎の事件を題材とした、シチュエーションホラー系のオカルトサスペンス映画。


 以前にうちのブログでも感想を書いた「きさらぎ駅」「リゾートバイト」の監督である永江二朗監督によるネット怪談シリーズ(?)の新作なのですが、「きさらぎ駅」や「リゾートバイト」がかなり変化球だったので、本作もどんな奇抜な変化球が飛んでくるのかと期待していたのですが…


 『えっ、この監督ってこんな普通のホラー映画も撮るんだ』と逆にビックリしてしまうぐらいに、オーソドックスな感じのオカルトホラー映画になっています。(笑)


 お話としては『学生時代の友達同士で「ネット飲み会」を行っていたところ、仲間の3人が前日に「肝試し」と称して「鮫島事件」に関わる心霊スポットを訪れていた事が判明。その呪いによってネット飲み会の参加メンバーが次々と恐怖に見舞われる事となっていく…』みたいな感じの展開。


 構成的には、「アンフレンデッド」「ズーム/見えない参加者」といった作品と同様に複数人での『ネット通話の画面』を表示しながらリアルタイムにホラーストーリーが展開していくという感じなのですが、前述の2作ほど『ネット通話の画面』に限定してお話が作られている感じでも無くて、どちらかと言えば『マンションの一室を舞台としたシチュエーションホラー』的なテイストの強い作品という印象。


 本作の題材となる『鮫島事件』に関しては、ネット怪談が好きな人であれば知っていると思いますが、『牛の首』と並んで『実体のない都市伝説』と言われており、『とてつもなく恐ろしい』とか『口にしてはならない』とかって言うウワサのみが広がっていて、『実体となる事件や怪異が存在しない』タイプの怪談なんですよね。


 この『実体のない都市伝説』をベースにどのように話を作るんだろうと思っていたのですが、作中では『鮫島事件』の正体は『ネット民によるリンチ殺人事件(とその実況配信)』とされており、月並みな設定ながらも『ネットで口外してはならない事件』となった理由付けを上手く取り入れているのは、なかなかに上手い設定だなという印象。


 他にも山の牧場』やらといった幽霊屋敷探検系のネット怪談っぽいネタも取り入れられた『色んな都市伝説のハイブリッド』的な設定となっており、他のシリーズと同様にその手の怪談が好きな人を色々と楽しませるような作りになっているのは、いつものこの監督の手法という感じです。


 『ネット通話の画面越しに他のメンバーが次々と危機に晒されていく』という展開は、他のネット通話系ホラー作品と同様といった感じですが、小さい画面のため迫力不足な部分はあるものの、助ける事も手出しする事も出来ないもどかしさと、徐々に『自分の番』が迫ってくる恐怖といった感じの盛り上げ方としては悪くありません。


 また、中盤以降の『謎解きパート』的な展開は、なかなかに予想外の演出という感じで、『ホラー系アドベンチャーゲームの謎解き』の実況配信を観ているようなテイストで面白かったです。


 ただ、「鮫島事件」という『全てが謎につつまれた事件』を題材としている割には、いかんせん設定が割と月並みな印象なのと全体的に『いかにも低予算ホラー』って感じで、やや盛り上がりに欠けること、あと最後も『定番の投げっぱなし展開』という感じで面白味に欠けるのは残念なところかなぁ…


 せっかく永江監督の作品なんだから、もっと『トンデモないオチ』を見せて欲しかったですよ。(笑)

 


 総評としましては、低予算で『いま一つ盛り上がりに欠けるネット怪談ものオカルトホラー映画』って感じですね。


 シチュエーションホラー的なオカルト作品としては平均点を付けれるレベルの出来なのですが、「きさらぎ駅」や「リゾートバイト」ほどブッ飛んだ内容でもないですし、「アンフレンデッド」みたいにネット通話にこだわった尖った演出の作品でもないので、やや中途半端な感がある印象です。


 とはいえ、都市伝説系のオカルト作品としては普通に楽しめる内容ではあるので、題材とかが気になるようであればチェックしておいても悪くない一本かもしれませんよ。

 

映画感想:「リゾートバイト」(55点/オカルト:一部のファンにはオススメ)

■■■「リゾートバイト」■■■
(55点/オカルト:一部のファンにはオススメ)


 女子大生の桜は、引っ込み思案な性格のせいで春から通い始めた大学にもあまり上手く溶け込めないで、ストレスを貯める日々を送っていた。


 そんな桜の様子を心配した幼馴染の聡は、同じく幼馴染の希美と共に、3人で気分転換を兼ねて離島の旅館で短期のアルバイトを申し込む事となる。


 中年夫婦の経営する旅館で働き始めた彼らは、オフシーズンという事もありリ休暇を兼ねてリゾート地を楽しむが、そんなある日、桜は旅館の女将である真樹子が、毎晩の深夜の2時頃に行き止まりとなっている2階の廊下の奥に、ひっそりと食べ物を持って行っている事に気付く。


 女将の不審な態度に不気味なものを感じた彼らは、好奇心から女将が深夜にその場所で何を行っているのかを探ろうとするが…

 


 リゾート地の旅館の『開かずの間』に踏み入ったバイト学生が、禁断の場所に踏み入ったせいで恐るべき恐怖に晒されることとなる…という、オカルトホラー映画。


 いわゆるネットの都市伝説や実録怪談として有名な、「リゾートバイト」というエピソードを題材としたオカルトホラー映画ですね。


 同じ監督によって同じような題材で作られた「きさらぎ駅」異世界ものホラーと思わせて、主人公が異世界から脱出するRTAに挑戦する』というトンデモ系の作品になっていたのですが、本作も期待を裏切らないレベルの負けず劣らずにトンデモな感じの作品に仕上がっています。


 最近は、実録怪談とか都市伝説を映画化する際には、なんかトンデモ系の展開にするのが流行っているのでしょうか?
 (正直、面白いのでもっとやっていただきたい。(笑))


 お話としては『とある学生バイトの面々が、旅館に隠された「開かずの間」的な秘密の場所を発見するんだけど、その場所に足を踏み入れた事が原因でとんでもない恐怖に巻き込まれていく…』みたいな感じの展開で、ストーリーの『ベースとなる設定』はほぼ原典と同じような感じ。


 ただ映画の中では主人公が女子大生になっていたり、幽霊に追いかけまわされるようなチェイスっぽいシーンが追加されていたり、絵的に見栄えするようにアレンジされているのは悪くない印象です。


 しかし、元々のベースとなっているエピソードは、かなりドロドロとしたグロ系の『気持ちの悪い内容』なのですが、旅館とかも妙に新しい建物でですし、恐怖シーンも湿っぽさやグロっぽさが無くて、全体的に映像が小ギレイすぎて不気味さが薄くなってしまっているのは残念なところかも?


 終盤までは、主人公たちが取り憑かれてしまった『何者か』の存在の謎を追う形でお話が進んでいく感じで、緊迫感を盛り上げる展開としては悪くないのですが、原典と同様の展開すぎるせいで『開かずの間』にまつわる因習とかの解説がやたらと唐突な感があるので、この辺はもうちょっと上手くストーリーに盛り込んで欲しかったです。(まあ、原作が『実録怪談』なので仕方ない部分はありますが…)


 ただ、『開かずの間』にまつわる謎解きまではほぼ原作と同じ展開なのですが、終盤の展開がかなり予想外のとんでもない事に…


 ここからはネタバレになってしまうものの、ネタバレされても本作の面白さが損なわれるようなものではないと思われるので語ってしまいますと、『因習やらに関連する謎の儀式』を題材とした本格的なオカルトストーリーが進んでいたかと思いきや、終盤で『子供たちの魂を奪っていたのは実は八尺様だった(海で溺れたとか関係なかった)』という、原作には全くない驚愕の事実が判明!!


 唐突に登場した『謎の法力坊主と八尺様の法力バトル』みたいなトンデモ展開に突入していきます。(この坊主もどことなく『寺産まれのTさん』とかっぽい…)


 正直、この超展開の前までの部分は『ちょっとテンポが悪くて原作の雰囲気の再現度もイマイチだな…』と思いながら観ていたのですが、『八尺様バトル』に突入してからのテンポの良さとテンションの高さ、バカ映画っぷりはかなりハイレベルなので、お馬鹿系のオカルトホラーが好きな人には、この超展開だけのためにも是非とも観てみて欲しいところ。(笑)


 ただ個人的には、こういうお馬鹿ノリは好きですし原作にはないオチの落としどころなんかも悪くないのでオススメしたい気持ちもあるのですが、原作となる元のストーリーが結構ガチ目のオカルト的なストーリーなので、原作のガチの再現を期待してるようであればちょっと期待外れになるかも…ってのは気になるところかなぁ?

 


 総評としましては、全体的に見ると『やや微妙な出来のオカルトサスペンス映画』というのが正直なところかな?


 普通に『オカルト作品』として観ると、ちょっと盛り上がりに欠ける内容ですし、ホラーとして怖いかと言われると悩ましい部分もありますし、やや冗長さを感じる作品かも…


 ただ、微妙ながらも個人的にはかなり好きな部分もありますし、馬鹿映画やネタ映画としては一見の価値がある作品だと思いますので、そういう方面に興味がある人はチェックしておいても損は無い作品かもしれませんよ。

 

映画感想:「バトル・オブ・ザ・キラーズ」(35点/サスペンス)

■■■「バトル・オブ・ザ・キラーズ」■■■
(35点/サスペンス)


 狂ったように犯罪を繰り返す連続殺人強盗犯のジョニーとクライドは、ある日、犯罪組織のボスであるアラナが所有する巨大カジノの莫大な裏金が隠された金庫の存在を知る。


 裏金の強奪を目論む彼らは、かつての仲間である巨漢の殺し屋の『ブッチャー』や爆発物の専門家の『ベイカー』、薬物の売人でガンマニアの『キャンドルスティック』といった面々に声をかけ、金庫への襲撃計画を立てる。


 しかし、時を同じくしてジョニーたちの帰還を知った元保安官のロックは、彼らに娘を殺された復讐のために行動を開始。


 またジョニーらの襲撃計画を察知したアラナは、通常の警備を強化すると共に、伝説的な殺人カルトの教祖である『バクワス』の霊を召喚して金庫を守らせようと画策するが…

 


 無計画で無慈悲な強盗殺人鬼のカップルが、凶悪な犯罪組織のカジノの裏金の金庫の襲撃を企ててバトルを繰り広げる…という、アクション風味のクライムサスペンス映画。


 主人公の名前やら原題(ジョニー&クライド)からして、俺たちに明日はない」のオマージュ作品かと思いきや、それほど元ネタを意識している訳でも無いという、なんというか微妙な出来のクライムサスペンス作品です。


 本作の最大の特徴としては、とにかく『主要登場人物の全員がサイコパスだという事。


 連続強盗殺人犯の主人公たちは言わずもがな、主人公の仲間の殺し屋たちも、犯罪組織のボスやその部下も、主人公たちに復讐しようとする元保安官も、もれなく全員がサイコパスで頭のおかしい連中という徹底ぶり。


 あまりにも全員がキ●ガイなので、誰が酷い目に会おうが殺されようが全く心が痛まずに作品を楽しめるのは、ある意味で本作の最大の利点と言えるかも?(ちなみにサイコパスどもがどれだけ暴れまわっても警察とかは一切出動しないので、好きなように暴れ放題です。)


 とまあここまで聞くと、サイコパス強盗の主人公たちや巨漢の殺人鬼、爆破のプロ、犯罪組織のヒットマンやらガードマンたちの激しいバトルが繰り広げられる面白い作品なのかと思うのですが…


 まあ、コレがビックリするほどストーリーがツマらないのが困りもの。


 『中学生が脚本を書いたのかよ?』とツッコミを入れたくなるような安易な脚本に、『僕の考えた最強の殺し屋たち』みたいな中二病的なキャラの集団がビックリするほど中身のないドラマを進行していくのですが、これがもうあまりに空虚な内容に軽くめまいを覚えるレベル。


 そうは言っても、アクション映画ですし脚本が『分かりやすい』のは悪い事では無いのですが、あまりにキャラクターに中身が無くて登場人物の誰一人にすら人間らしい個性が感じられないのは辛いところ。


 ただ、キャラの個性が希薄でも『最強の殺し屋たちがバトルを繰り広げる』という展開だけでも楽しめそうなものなのですが、困ったことに殺し屋たちが戦い始めるまでの前振りが妙に長くてテンポもあまり良くないうえに、肝心のバトルも意外と地味でアクションシーンも少なくて盛り上がりに欠ける内容なのは流石に厳しいです。(爆破のエキスパートとか何もしないうちに勝手に死ぬし…)


 さらに、いわゆるキル・ビル」みたいな超人殺し屋バトル的なノリなのかと期待していたら、犯罪組織のボスは不死身の『殺人カルトの教祖の霊』を召喚して金庫の警備をさせてみたりと、唐突にオカルト設定が出てきてもう何が何やら意味が分かりません。


 ラストのオチも矢鱈とアッサリしてて盛り上がりに欠けますし、割と本気でいま一つどこを楽しんだら良いのか釈然としない映画でしたよ…


 まあサイコパス展覧会』みたいな登場人物のキャラクターは意外とと面白かったので、その部分だけはちょっと評価できるかも?

 


 総評としましては、正直なところ『なんじゃコリャ?』って感じの『微妙な出来のアクション系クライムサスペンス映画』ですね。


 「バトル・オブ・ザ・キラーズ」というタイトルに釣られて、『殺し屋たちの激しいバトル』に期待しているようであれば、肩透かしを食らわされる可能性があるのでちょっと注意が必要かも?(というか、このタイトルから他にどういうノリを期待しろと言うのか…)


 まあ微妙な出来ながらも壊滅的にツマんないってほど酷くは無いですし、サイコパスの展覧会』的な内容に興味があるようであれば、暇つぶし程度にチェックしてみても良い作品かもしれませんよ。

 

映画感想:「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」(60点/サスペンス:一部のファンの方には強くオススメ)

■■■「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」■■■
(60点/サスペンス:一部のファンの方には強くオススメ)


 近未来、人類は人工的な環境へ適応するように進化した結果、あらゆる感染症に感染せず、痛みや苦しみを感じない肉体を手に入れていた。


 そんな世界で、『加速進化症候群』という肉体に次々と新たな腫瘍や臓器が発生する体質を持つ芸術家のソール・テンサーは、自らの体に発生した新たな臓器にタトゥーを施し、それを元外科医であるパートナーのカプリースが摘出するという場面を『臓器摘出ショー』として公開。


 彼のショーは多くのファンの間で人気を博していたが、政府当局は『新たな臓器』が根付く事によって人類が別の生物へと進化する事を規制するため、彼を監視対象としていた。


 そんなある日、とある男性から『母親に殺された少年の遺体』を解剖する場面をショーとして公開して欲しいという奇妙な依頼を受けたソールは、その少年が『プラスチックを食べ物として消化できる』という特殊な消化器官を備えていた事を知るが…

 


 全ての人間が『痛み』を感じることが無くなり、外科手術や人体からの臓器摘出がショービジネスと化した未来世界で、とある『少年の遺体』を巡って起こる奇妙な犯罪の経緯を描いた、SF風味のサスペンススリラー映画。


 独特の世界観の映画を撮ることで有名なデヴィッド・クローネンバーグ監督の新作にあたる作品なのですが、本作は『いよいよ凡人には理解できないような世界まで到達してしまったな…』という印象が強く感じられるような内容の作品です。


 変人的な趣味の映画監督とかを良く『鬼才』と呼んだりしますが、この監督以上に『鬼才』という呼び方がシックリくる人を思いつかないレベルで、ビデオドローム」や「イグジステンズ」の珍妙でエロティックな世界観を更に一歩先に突き詰めたような『特殊な性癖の変態的映画』と言えば、この監督のファンの人にはどういうテイストの映画か分かりやすい感じかも?


 お話の設定として、『人類があらゆる「痛み」を感じなくなった世界で、外科手術がショービジネスとして公開されるようになっている』という設定の時点で十分にブッ飛んでいるのですが、外科手術がセックスの代替手段となっていたりするといった世界観も、いかにもクローネンバーグ監督らしいフェティッシュと変態性を感じさせてくれます。


 イグジステンズ」にも出てきた『矢鱈と有機的なメカ』によって構成された珍妙なデザインの安楽椅子やら解剖ベッドやらのセンスも、なかなかのキモさとエロティックさで、まさにクローネンバーグワールド全開という感じで、ずっと見てると『脳が変な物質で侵食されて変な世界から戻れなくなるんじゃないか』と心配になるレベルに仕上がっています。(でも、あの『矢鱈とカクカク動く椅子』は、どう考えても使いづらいだろ。(笑))


 ただ、ひたすらブッ飛んでいる設定という訳でも無く、人類の肉体的な変化に伴う『進化と変容』を描いた『有機的な肉々しいサイバーパンクSF』的なテイストとかもキチンと感じられて、いままでの監督の作品を観てきた人であれば、方向性やら世界観やらがシッカリと分かるようになっているのは悪くない印象。


 また荒唐無稽すぎるな世界観なのですが、いちおうはキチンと『未来の犯罪を描いたクライムサスペンス映画』として成立しており、普通にサスペンスとしても楽しめる内容になっているのは、単なる趣味の映画じゃなくてギリギリのところで娯楽作品として楽しめるように踏みとどまるバランス感覚の良さを感じさせてくれます。


 しかし、非常に個性的でファンにとっては楽しい作品なのですが、とにかく世界観が独特過ぎて『理解するのが大変すぎる』のは困りもの。


 特に序盤は、あまりに訳の分からない世界観やら時代背景を理解するために『お話についていくだけで精一杯』になってしまい、脳がストーリーの理解を拒みそうになってしまいましたよ…


 クローネンバーグ監督の今までの作品を色々と観ている人であれば、なんとなくテイストや方向性が理解しやすいかと思いますが、観たことがない人にとってはちょっとハードルの高い作品かもしれません。


 あと、『人間の身体を切り開いたり切り刻んだりするシーン』が矢鱈と出て来るので、そういうのが苦手な人には辛い作品かなぁ…

 


 総評としましては、独特過ぎる世界観と異様なテイスト満載の『キモち悪くてキモちいいB級サスペンススリラー映画』って感じですね。


 個人的には割と好きな作品ではあるのですが、良くも悪くもアクが強すぎる内容のため、あまり気軽にオススメできる作品ではないのが厳しいところ。


 ビデオドローム」、「戦慄の絆」、「イグジステンズ辺りの作品が好きだった人には、そういった作品群の総決算的な内容の映画だと言えるので、割とオススメ出来るかなぁ?


 逆にそういったタイトルを聞いたことも無いような人には、世界観がぶっ飛び過ぎててハードルが高すぎる作品だと思うので、クローネンバーグ監督の映画でももうちょっとマイルドな作品を履修してからの方が良いかもしれませんよ。

 

映画感想:「サンクスギビング」(70点/スプラッタ:オススメ)

■■■「サンクスギビング」■■■
(70点/スプラッタ:オススメ)


 感謝祭(サンクスギビング)発祥の地であるマサチューセッツ州プリマスでは、今年の感謝祭に向けての準備で街全体が盛り上がりつつあったが、1年前の感謝祭でのディスカウントスーパーでのセールで、『狂乱した客たちの乱闘』により複数名の死亡事故が発生した事もあり、どこかピリピリとした空気が漂っていた。


 そんな矢先に、街のダイナーで働く女性が何者かによって殺害されて、その死体が晒されるという不気味な事件が発生。
 更に続いてかつてのスーパーの警備員が殺害され、街の創立者である『ジョン・カーヴァー』を名乗る謎の人物の手によって、『感謝祭の食卓に並ぶ来客』に見立てられた死体の写真としてSNSに晒されることとなる。


 被害者の共通点から、警察は『去年の感謝祭の事故に関わった人物』が犯人に狙われているのではないかと予測するが、そんな矢先に『昨年の事故の引き金』となった高校生グループのジェシカたちは、殺人鬼と思われるジョン・カーヴァーを名乗る人物からタグ付けされた事から、自分たちが次のターゲットとして狙われているのではないかと恐怖するが…

 


 感謝祭(サンクスギビング)を目前に控えたアメリカの地方都市で、仮面をつけた正体不明の連続殺人鬼によって凶行が繰り広げられる…という、ゴア要素強めの青春スラッシャーホラー映画。


 「ホステル」とか「グリーンインフェルノとかゴア系ホラー作品でお馴染みの、イーライ・ロス監督による新作スラッシャーホラー映画で、劇場で公開された当初からなかなか評判が良かった本作なのですが、確かにコレは評判に違わず非常に良くできた作品ですね。


 青春スラッシャーホラー映画と言えば、かつては「スクリーム」やら「ラストサマー」といった人気作を多く出しながらも、このところはヒット作に恵まれていない印象があったのですが、これは久々のヒット作というか、イーライ・ロス製の青春スラッシャーホラー映画の新シリーズ』としてシリーズ化を期待してしまうぐらいに、非常に良くできた新作という印象です。


 お話としては、『感謝祭の準備に湧くアメリカの地方都市で「街の創設者の仮面」を付けた謎の殺人鬼によって連続殺人が発生。殺人鬼の目的が「昨年の感謝祭での死亡事故」への復讐てある事が判明し、その事故のきっかけを作った主人公たちの高校生のグループが命を狙われる事となり…』みたいな感じの展開。


 構図としては『謎の連続殺人鬼』VS『高校生の仲良しグループ』といった割とありがちな構図ではあるのですが、そこは流石はイーライ・ロス監督らしく一筋縄ではいかない構成になっており、殺人鬼の登場する前から『感謝祭のセール会場で狂乱した客が殺し合いの乱闘』をはじめてみたりと、お話の導入部分から悪趣味な見せ場が全開のフルスロットル状態で楽しませてくれます。


 イーライ・ロス監督の映画というと、なんとなく『話が動き出すまでの若者のバカ騒ぎパートが無駄に長い』みたいな印象があるのですが、本作では殺人事件が起こる前から見せ場が準備されてて人死にが出まくってくれますし、話が動き出した後も殺人鬼が景気よく犠牲者を殺しまくってくれるので、非常にテンポ良くまったく退屈している暇が無い作りになっているのは良いところ。


 殺人鬼の殺害方法に関しても、殺害シーン毎に『様々なシチュエーションや趣向』が凝らされていますし、残虐描写もかなり強めなのでスプラッタ系の作品が好きな人にもオススメできる内容。
 殺人鬼が『感謝祭』に見立てて、キチンと『テーマを持った殺害方法』を準備している辺りも、イーライ・ロス監督らしい悪趣味さとこだわりが感じられて面白いです。


 また単にゴア描写強めのハイテンションなスラッシャーホラーというだけではなく、「スクリーム」シリーズ等のようにキチンと『サスペンス要素』にも力を入れて作られているのは良いところ。


 殺人鬼の正体を突き止める際のミスリードの仕込み方も上手いですし、中盤からちょっと『意外な展開』に突入していき、先の流れが全く読めなくなるような構成なのも良くできています。


 あと、主人公たちのキャラの掘り下げも割とシッカリしていて良い感じなのですが、序盤の展開で描かれる主人公たちの姿があまりにも『腹の立つアホな若者』なせいで、主人公たちにあまり感情移入できないのは、ちょっと困りものかも?(むしろ、『サッサと殺されろよ』と思いながら気楽に楽しめるという話も…(笑))


 オチの落としどころなんかも上手いですし、続編があってもおかしく無さそうな作りでしたので、是非ともシリーズ化して『青春スラッシャーホラー映画の新潮流』を作り出して欲しいものですよ。

 


 総評としましては、『非常に良くできたスプラッタ系青春スラッシャーホラー映画』って感じですね。


 ジャンル系作品としては、数年に1本ぐらいしか出ないレベルの良作だと思いますので、スプラッタ映画好きやらスラッシャーホラー好きな人であれば、間違いなく観ておいて損は無い一本ではないかと…


 ただ、イーライ・ロス監督の作品らしくグロ要素も強めなうえに悪趣味な内容ですので、「スクリーム」や「ラストサマー」と違って『グロ描写とかに抵抗がある人にはオススメし辛い作品』なので、その辺は要注意かもしれませんよ。

 

映画感想:「ホビッツベイ」(50点/モンスター)

■■■「ホビッツベイ」■■■
(50点/モンスター)


 1978年、カリフォルニア州オークランド
 獣医師を目指すジュールズは、夫のベンと幼い娘のレイアとともにペットショップを営んでいた。


 そんなある日、数カ月前に亡くなったベンの母親の遺産を整理していた弁護士から、かつて両親が暮らしていた住居が土地がオレゴン州のホビッツベイという海辺の町に遺産として残されている事を知らされる。


 住居を確認するために家族三人でその場所を訪れた彼らは、そこで素晴らしい景観のビーチと廃墟同然となったコテージを発見。


 風光明媚な立地から、何故この場所が40年近く放置されていたのかと訝しがる彼らだったが、そんな矢先に彼らは地下の貯水タンクから新種と思われる正体不明の両生類の死骸を発見し…

 


 オレゴン州沿岸の田舎町の放置されたコテージを訪れた一家が、正体不明の巨大な両生類の襲撃を受ける…という、モンスターパニック映画。


 アメリカで昨年あたりに作られた『巨大両生類』を題材としたモンスター映画のようなのですが、いま一つ話題にならなかったのも納得というか、なんというか『地味で盛り上がりに欠ける映画』というのが正直な感想の作品です。


 お話としては、『とあるペットショップを営む夫婦が、両親が遺産として残した田舎のコテージの存在を知り遺産整理のために確認に訪れるんだけど、その場所で正体不明の巨大両生類の襲撃を受けて、両親が「なぜこの場所を放棄したのか…」の真実を知る事となる』みたいな感じの展開。


 『風光明媚な田舎の海岸にポツンと建つコテージ』といったロケーションや、『不気味な雰囲気を感じさせる地下の貯水槽』といった雰囲気づくりは割と良く出来ていますし、『何故、両親がこの場所を放棄せざるを得なかったのか』といった部分の謎解きパートと、徐々に明らかになっていく真実という流れなんかは悪くない印象。


 …なのですが、雰囲気の盛り上げ方は確かに悪くないものの、雰囲気づくり以外の部分がモンスター映画としてどうにも微妙な作品なんですよね。


 まず何が微妙って、とにかく『モンスターが画面に出てこない』という事。


 最近のモンスター映画ってCGをメインで使うせいもあってか、割とモンスターが画面に堂々と露出する作品が多いのですが、本作は『80年代のホラー映画かよ』とツッコミたくなるぐらいにモンスターが画面に映りません。


 とにかく物凄く『出し惜しみ感』が強くて、マトモに登場するのも割と終盤になってからですし、登場人物が基本的に家族の3人(あとちょい役で2人)だけなので、襲撃シーンや活躍シーンそのものが少なすぎてどうにも見せ場が少ないです。


 また出現するのも夜の森の中とか地下の洞窟みたいな場所ばかりで、基本的に姿がよく見えないので無駄にストレスが溜まります。


 怪物の水中からの襲撃シーンとかは割と緊張感があって良いのですが、それも『昔のモンスター映画の予算削減しつつ緊張感を出す手法』みたいな映像表現で、どうにも観ていてイライラしてしまいました。


 映像のクオリティとかを見る限りそこまで低予算っぽい雰囲気でも無かったので、もしかしたら『80年代のB級モンスターホラー映画』へのオマージュでも意識して作ったんでしょうか?(でも、『そこはオマージュしなくても良いところだろ』ってのが正直なところ…)


 ちなみにモンスターのデザインに関しては、『巨大両生類』が題材となっている映画では割と定番の『廃棄物13号』(パトレイバー)っぽいデザイン。


 デザインとしては悪くは無いのですが、せっかく巨大両生類を題材にしてる映画なんだから、もうちょっと既存の古代の両生類をモチーフにするとか本作ならではの個性が欲しかったかなぁ?(まあ、それだけ『廃棄物13号』のデザインが秀逸だという事なのかもしれませんが…)


 あと細かい部分ですが、色んな意味で『設定があんまり活かされていない』のも気になるところ。


 舞台が『70年代アメリカ』なのですが、特に70年代である必然性が感じられないですし、『奥さんが生物学の知識がある』みたいな設定も最後までほとんど活かされないまま…


 先述のとおり、モンスターが『両生類』である特徴も特に活かされていないですし、『だからなんやねん?』と言いたくなるような肩透かしの展開と設定の連続なのも地味にストレスが…


 ラストのオチも投げっ放しで盛り上がりに欠けますし、どうにも物足りなさの残る映画でしたよ。

 


 総評としましては、ちょっといま一つな部分が目についてしまう『微妙な出来のB級モンスター映画』って感じですね。


 雰囲気づくりやらストーリーテリングの良さやら悪くない部分もあるのですが、モンスター映画としてみると物足りなさを感じる部分の方が目についてしまい、『もうちょっとどうにかならんかったかなぁ…』というのが正直な感想です。


 そこまで強く推すような要素も無いものの、そこまで壊滅的にツマんない訳でもなくて、物足りないながらも『普通に見れるレベル』の作品ではあるので、予告とかで気になっているようであればチェックしてみても良い一本かもしれませんよ…

 

映画感想:「サムシング・イン・ザ・ダート」(50点/サスペンス)

■■■「サムシング・イン・ザ・ダート」■■■
(50点/サスペンス)


 ロサンゼルス近郊の古いアパートへ越してきたリーヴァイは、引っ越し早々に廊下で奇妙な『水晶の器』のようなものを拾う。


 中庭で隣人のジョンと出会った彼は、会話するうちに意気投合してリーヴァイの自室を訪れる事となるが、前の住人の忘れ物だろうと思い保管していた水晶の器が『妖しい光を放ちながら宙に浮かぶ』という奇妙な現象を目撃する。


 二人は事態に驚愕しながらも、なんとかしてこの現象を利用して一山当てる事が出来ないかと画策。


 謎の現象を調査しつつ撮影する形でドキュメンタリービデオを作成し、それを売り込もうとドキュメンタリーの制作を開始し、この現象に関連すると思われる様々な『奇妙な一致』を発見していくが…

 


 安普請のアパートの一室で『宙に浮かぶ水晶の欠片』という奇妙な現象を目撃した2人の中年男性が、一攫千金を狙ってその現象の謎を追うドキュメンタリー映画を作成する…という、SF風味のサスペンス映画。


 『自宅の側で超次元的な現象が発生して、その謎を調査する』という設定から、なんとなくクトゥルフ神話の「宇宙からの色」のようはコズミックホラー的な話かと思いきや、特にホラー的な要素は無くてSF風味のサスペンスドラマといったテイストの作品ですね。 (でも『超次元的な不可解な現象』という意味では、ちょっとだけコズミックホラー的なテイストも無くはないかも?)


 お話としては『安アパートの一室で「宙に浮く水晶の欠片」という奇妙な現象を目撃したくたびれた中年男性の2人が、人生の一発逆転を狙って現象の調査を開始し、その様子をドキュメンタリービデオとして撮影する』という、いわゆるモキュメンタリーテイストのストーリー。


 SFテイストといってもSF要素はアクマで『風味付け』程度で、メインの要素は『人生に疲れてくたびれた中年男性二人の、依存関係のような友情のような奇妙な関係性』を描いた感じの内容で、人間ドラマの要素の方が強めな印象。


 主人公のうちの一人が『元数学教師』という設定で、『宙に浮く水晶の欠片に秘められた幾何学的な特徴が原因で、何らかの重力異常を起こしているのではないか?』といった感じで謎の現象を調査していくのですが、調査が進むうちに『彼らの住む古いアパートの設計に隠された秘密』やら、『アパート建設当時のLAの都市計画に秘められた謎』やらが判明していく…という流れは謎解きテイストとして面白くて、「ムー」(オカルト雑誌)とかで良くある超常現象とか陰謀論系の話が好きであれば、なかなかに楽しめる印象。


 しかし前述のとおり、基本的には『二人の中年男性の人間ドラマ』の方がメインで、奇妙な現象の解明のための協力関係や依存関係が続いていくうちに、友情にも似た『二人の関係性』が微妙に変化していく様子が丁寧に描かれているといった感じ。


 ただ、この『オッサン二人の人間ドラマ』に割かれている尺がかなり長めで、『奇妙な現象』に対する謎解きがなかなか進まないうえに、2時間弱と映画全体の尺も長いためとにかく観ていてダレてくるのが辛いです。


 特に終盤は辺りは、あまりのダルさに早送りしようかと本気でちょっと悩むレベルでしたよ…


 また、SF要素は味付けで『人間ドラマ』がメインという構成って辺りからなんとなく予想は付くとは思うのですが、『奇妙な現象』に関する謎解きは『なんか分かったような分からないようなオチ』というありがちなパターンなので、そっち方面に期待している場合は肩透かしを食らわされるかも?


 オチに関しては『ちょっと意外性のある展開』で思ったよりも面白かったので、その部分に関しては悪くない感じかなぁ…


 ただ個人的には、この設定ならもうちょっと『トンデモ系の展開』でも良かった気はしますよ。

 


 総評としましては、低予算で作られた『どうにもダルい作りのオッサンの人間ドラマベースのSFサスペンス映画』って感じですね。


 SFっぽいアイデアは悪くないんだけど盛り上がりに欠ける内容ですので、アクマで二人の『主義や生き方の違うオッサン二人の関係性』を描いた人間ドラマがメインで、SF的な部分はオマージュ的なもの程度と捉えておいた方が良い作品でしょう。


 正直あまり推す要素はありませんが、人間ドラマとしてはそこまでツマんない訳でも無いので、『うらぶれた中年男性たちの友情』的なものに興味がある場合はチェックしてみても良い一本かもしれませんよ…