■■■「シャーロック・ホームズ vs ヴァンパイア」■■■
(60点/ミステリー)
イギリスのホワイトチャペル修道院で、修道士が礼拝中に何者かに殺害されるという事件が発生。
被害者の首筋には鋭く先の尖った凶器で突かれたような2つの傷跡があり、殺害現場には不気味な血文字で書かれたメッセージが残されていた事から、世間では『吸血鬼の仕業ではないか』と囁かれるようになる。
心霊やオカルトを一切信用しないシャーロック・ホームズは、この噂を一笑に付すが、そんな彼の元に修道院から『事件の謎を解き明かして欲しい』との調査依頼の手紙が届く。
彼は友人のワトソンと共に修道院へと赴き、吸血鬼の正体を暴くべく事件の調査を開始するが…
タイトルだけ聞くとどんなイロモノ映画だ?と思いますが、その実はシャーロック・ホームズのシリーズの外伝っぽい設定の、ごく普通のミステリー映画です。
なんでも、このストーリーは原作者のコナン・ドイルがシャーロック・ホームズのシリーズ用にアイデアを考えてたんだけど、未完のままに出版されなかった作品を映像化したものだそうです。
一応、英国で放映されたシャーロック・ホームズのTV映画のシリーズの一本で、同シリーズとして「バスガヴィル家の犬」とか色々とドラマ化されているようで、本数を重ねているだけあって流石に見せ方やら演出やらは非常に手馴れた物で、コレが正式なシャーロック・ホームズのシリーズの一本だと言われたとしても、全くもって違和感の無いような内容なのは、なかなかに凄い所でしょう。
よっぱどのシャーロキアンのスタッフが作ったんだろうなぁ…と感じる程に、随所にホームズらしさが散りばめられた内容にファンならずとも納得出来るレベルだと思われます。
ストーリーの方も、いかにもホームズらしく論理的かつ非常に分かり易い謎解きの構成となっており、ごく普通に鑑賞しながら謎解きを楽しめるような作りになっている所は、非常に良い所。
ただし、シャーロック・ホームズのシリーズって、基本的に割と分かり易いストレートな謎解きになって居るものが多く、本作もトリックの斬新さとかはあまり無いので、少し観察力の鋭い人なら簡単に犯人の予想が付いてしまいそうな辺りは、ちょっと好みが分かれるところかもしれません。
また、視聴者の及び知らない所で勝手に調査した内容を、いきなり謎解きの際に説明したりするという、いかにもホームズらしいといえばホームズらしい展開も若干あったりもします。(笑)
演出もストーリーも、全体的にファンも納得できるような非常に良く出来た映画なのですが、もし問題点を挙げるとしたら、良くも悪くも余りにもシャーロック・ホームズシリーズ然とし過ぎていて、シャーロック・ホームズを好きでもなんでも無い人が観たとしたら、単なる地味な展開で余り捻りの無いミステリー映画としか観れないかもしれない所でしょうか?
映像もいかにもTV映画っぽくって、あまり派手な印象は受けませんし、むしろNHKとかでそのまま放映されてても何の違和感も無いような内容ですので…
総評としましては、シャーロック・ホームズのシリーズが好きならば、オリジナルといいつつも完全新作としてごく普通に楽しめるレベルの作品だと思いますので、結構オススメの一本と言えます。
ただし、逆に今までホームズなんか観た事も読んだ事も無いというような人が観たら、『ふーん、こんなもんか?』って程度で終わってしまいそうな話(つか、ホームズのシリーズは基本的にそんな話)に感じてしまうかも?
まあ、小気味良くコンパクトにまとめられたミステリー映画ではあるので、ミステリー好きなら観ておいても良いかな?といった所でしょう。
逆にタイトルのインパクトから、ホラー的な要素やバカ映画やネタ映画的な要素を求めている人は、この映画は観ないで良いでしょう…ごく普通のミステリーですよ~。