■■■「ロード・オブ・モンスターズ」■■■
(55点/モンスター)
海洋資源の開発を行うベンシック社の無人探査艇が、南太平洋のケルマディック海溝の深海で通信途絶する事態が発生。
ベンシック社の社長のフォードは海洋調査監視員のサラらと共に、原因を確認するために潜水艇で現地へと赴く事となる。
その場所で、マグマをエネルギー源とする見た事も無いほどの恐ろしく巨大な、ヒトデ型の『怪獣』に遭遇。
怪獣が『エサとなる火山エネルギー』を求めて沿岸部へ向かっている事を知った彼らは軍へと救援を要請するが、軍の攻撃は怪獣に対して全く歯が立たずに返り討ちにされてしまう。
怪獣が地元の伝承で『火から生まれ海より出でし者』と呼ばれる存在だと知った彼らは、怪獣への対応策を調べるためにサラの恩師で地質神話学者のレナに助言を求めるが、怪獣を倒すためには怪獣キラーとして知られる『生きた山』と呼ばれる別の怪獣を目覚めさせる事が必要だと判明し…
巨大怪獣の出現の現場に遭遇した海洋資源の調査会社の社長が、人々を守り怪獣を倒すために奔走するという、モンスターパニック映画。
どこかで見たような映画のパクリ作品でお馴染みのASYLUMによる『二番煎じ作品』の新作で、タイトルのとおりに「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」をパクった風味の作品ですね。
ただ、ASYLUMは同じ『二番煎じ作品』でも、出来の良い作品と悪い作品の差が激しいメーカーですが、本作は割と『良いASYLUM』に属する作品という印象。
お話としては、『海洋調査を行う調査会社の社長が怪獣出現の現場に遭遇し、怪獣が「火山を食う」ために沿岸部を目指している事を知った事から、人々を守るためになんとかして怪獣を食い止めようとする』みたいな展開なのですが…
とにかくお話の展開が物凄く早くて、異常なぐらいにテンポが良いのは観ていて気持ちが良いですね。
『怪獣の出現』から『正体の調査』、『軍との交戦』、『怪物を倒すための作戦』~といった具合の展開が矢継ぎ早に繰り出されて、ダレる暇もなくトントン拍子にお話が進んでいくので、とにかく観ていて退屈しません。
主人公たちがバカな行動を取らずに、シッカリと怪獣への『対応策』を考えながら行動していくという、謎解き的な展開も無駄が無くて観ていて気持ちが良いです。(その代わり、軍隊は典型的な『無能軍隊』だけど…)
また低予算ながらも、それぞれのシーンが見せ場を意識した作りとなっており、盛り上げようと頑張っているのが感じ取れるのも良い感じですね。
怪獣もゴジラシリーズといった日本の『怪獣映画』を意識した感じになっており、アメリカ映画にありがちな『単なる巨大化した生物』ではなくて、人類では太刀打ち出来ない圧倒的パワーの存在として描かれているのは好感触。
ただ前述のように、コンセプトやら方向性としては良い部分も多いのですが、所詮は低予算映画なのでダメな部分も非常に多いのは困りもの。
一番のダメな部分は、怪獣の出現シーンにあんまり迫力が無いところで、全体的にCGとかがショボいのに加えて、軍との交戦シーンにせよ怪獣同士の対決シーンにせよ尺が非常に短くて『予算が足りなかったんだな』というのが如実に感じ取れてしまいます。(ぶっちゃけ、怪獣の登場する『見せ場』は『予告編で使われているシーンが全て』だと思っておいた方が良いレベルです。)
『見せ場となる場面』の描写するのを省略するために、主人公たちの説明的なセリフが異常に多くて、主人公たちの顔のアップのシーンばかりが矢鱈と多いのには、ちょっと苦笑してしまうレベル。
怪獣の市街地襲撃といったスペクタクル的なシーンも全く無いですし、主人公は社長といっても、某スタークインダストリーズの社長のような圧倒的な科学力や戦力を持っている訳でも無いので、怪獣への対応策も全体的に地味でどうにも絵面的に盛り上がりません。
ラストの展開も矢鱈と唐突でアッサリしすぎで、主人公的な扱いの『怪獣キラー』の怪獣とか『出てきた瞬間に出番が終了』ですし、『色々とやりたい事はあったんだろうなぁ…』というのが感じられて、なんとも勿体なくて切ない気分になる作品でしたよ。
総評としましては、悪くない部分もあるのですがショボい部分がどうにも目に付く『低予算B級怪獣映画』って感じの作品です。
お話自体は面白いですし、もうちょっとちゃんと予算があればもっと出来が良い作品になったと思うので、本作がそこそこヒットして『予算を増額された次回作』が作られる事を祈りたいところですよ。
物足りなさやショボさは目に付くものの、作品としてはそこそこ楽しめるレベルではあると思うので、B級モンスター映画とかが好きで気になっているのであれば観ておいても損は無い一本だと思いますよ。