■■■「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」■■■
(55点/モンスター)
(55点/モンスター)
カナダの山中の森林地帯で遂にビッグフットが発見されるが、そのビッグフットは『直径80キロ圏内の哺乳類をすべて死滅させてしまう』という恐るべき殺人ウイルスのキャリアだった。
感染が広がると人類存亡の危機となりうるため、事態を重く見たカナダとアメリカの政府は、パニックを避けて事態を終息させるためにビッグフットを極秘裏に抹殺することを計画。
ウイルスへの免疫を持つ数少ない候補者の中から、追跡スキルを備えたベテランの老齢ハンターに仕事を依頼するが、彼はかつて軍の特殊部隊に所属しヒトラーを暗殺したという『公式記録にはない任務』を達成した驚くべき人物だった…
恐るべき殺人ウイルスのキャリアーであるビッグフットを、かつてヒトラーを暗殺した元特殊部隊のハンターが狩りに向かう…という、サスペンス風味のモンスターホラー映画。
「ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男」という、なんとも強烈なインパクトを備えたタイトルの作品ですが、タイトルのインパクトの割に実際の中身の方は『かつて特殊な任務を達成し、新たに特殊な任務を受けることとなった老齢ハンターの半生と日常』みたいな感じで、人間ドラマ的なテイストの強い作品ですね。
お話としては、現役を退いて隠棲しているハンターの静かな日常を中心に物語が描かれていく感じで、過去のヒトラー暗殺任務に加わったエピソードや、戦時下での恋愛ドラマ的な要素を回想シーンとして合間に挟みつつ、主人公が『ビッグフット抹殺』という極秘任務に従事するようになる経緯を描いていく…というような展開。
お話そのものは人間ドラマとしては割と良く出来ており、主人公が『ヒトラー暗殺』や『ビッグフット抹殺』という驚くべき任務を請け負った割には、周囲の人々とまるで変わらない驚くほど平凡な日常を送っているというギャップが面白いです。
人間ドラマが中心となっているだけあって、主人公のキャラがシッカリと掘り下げられており、魅力的に描かれているのも良い感じ。
このタイトルを見ると、大概の人は『ヒトラー暗殺』や『ビッグフット抹殺』という二つのエピソードを中心に、どんな波乱万丈で荒唐無稽な物語が描かれるのかと期待してしまうと思うのですが、『ヒトラー暗殺』の部分もかなりアッサリとしていますし、『ビッグフット抹殺』に関しては、ハンティングに出発するのが90分程度の尺の映画でお話が1時間以上経過してからという塩梅。
ヒトラー暗殺もビッグフットとの対決もハイライトシーンをまとめただけのようなアッサリっぷりで、その他の部分は老人の過去の『恋人とのやりとり』やら『家族のドラマ』が中心にお話が展開していきます。
いわゆる「この世界の片隅に」のように、『どんな大事件や大変な事があったとしても、人はその時々を日常として精一杯を一生懸命に暮らしていく』というようなテーマ性が描かれているのでしょうが…
戦争やら世界情勢を背景にしたリアリティのある事件ならさておき、『ビッグフット抹殺』という非日常をテーマにしているんだから、もうちょっと非日常部分を盛り上げるような内容でも良かったんじゃないかなぁ?
あとヒトラー暗殺はともかく、ビッグフット周りに関してはあまりにも設定がガバガバで、人間ドラマ部分のリアリティに対して釣り合いがとれてない印象があったのも気になるところ。(そもそも一匹しかいないビッグフットが、ウイルスのキャリアだとどうやって特定したのか…)
ともあれ、個人的にはどうにも期待していた内容に対して物足りなさを感じてしまうような作品でしたよ…
総評としましては、そこそこ良く出来た『モンスターホラーをベースとしてとある老ハンターの半生を描いた人間ドラマ』といった感じの作品ですね。
ドラマとしてはツマんなくはないのですが、インパクトのあるタイトルに釣られて派手な内容を期待していると、猛烈に肩透かしを食らうので注意が必要です。
ただお話そのものや雰囲気づくりは悪くはないですので、気になるようであればチェックしておいても損はない一本ではあると思いますよ。