■■■「ワールドエンド・サーガ」■■■
(65点/モンスター:オススメ)
(65点/モンスター:オススメ)
近未来、世界は人間をゾンビ化させる原因不明のウイルスによって文明が崩壊。
ワイマールとイエナという二つの町のみがコミュニティとして生き残ったが、ワイマールはアクマでソンビを抹殺する事にこだわり、イエナはゾンビを治療する研究を続けて存続し続けていた。
ワイマールに在住し、過去にゾンビの襲撃によって妹を失ったトラウマを持つ少女のビビは、ワイマールのゾンビを抹殺する事に執着して固い規律で縛られた閉塞的な環境に耐えられなくなり、イエナへと逃げるために無人運転の列車に乗っての脱走を計画。
その列車の車内で同じようにワイマールから脱出してイエナに向かおうとするエバという少女と出会う。
しかし、自動運転の列車がトラブルによって草原の真ん中で立ち往生してしまったうえにゾンビの襲撃を受けた彼女たちは、列車を離れて徒歩でイエナに向かう事となるが、エバにはビビには話していない恐るべき秘密があったのだった…
ゾンビウイルスによって文明が崩壊した世界で、二人の少女が固い戒律に縛られた町から脱出して自由な町を目指して旅をする…という、ドイツ製のロードムービー風のモンスターホラー映画。
ドイツ製のゾンビ映画というとグロ系の作品という印象がありますが、本作はグロ要素は殆どなくていかにも欧州作品らしい雰囲気映画的なノリの作品ですね。
お話としては『ゾンビを殺すことにこだわり固い規律で縛られた町に住む一人の少女が、ストレスに耐えかねて自由な町へと脱走を試みるが、その列車の中で同じように脱走を試みるもう一人の少女と出会う』みたいな感じの展開。
世界中に『2つの町のみが生き残っている状態』という設定とか、初っ端からツッコミどころが満載な設定なのですが、ぶっちゃけ『ゾンビ映画』としてゾンビ要素を楽しむべき作品ではありません。
アクマでゾンビ要素は味付け程度で、『抑圧された世界』からの解放を願う一人の少女の『内宇宙的な世界観』を描いたロードムービー的な内容で、それに加えて二人の少女の出会う「ガール・ミーツ・ガール」的なノリを描いた、いわゆる少女の内宇宙的世界を描いた『セカイ系』の雰囲気映画的な作品という感じですね。
ただゾンビ映画の評価はとしてはさておくとして、この内容が『雰囲気映画』としては非常に良く出来ている印象。
『抑圧された町』と『自由な町』という二つの象徴的な町の設定やら、気の弱い少女と気の強い少女という二人の少女が『反目しあいつつも徐々に打ち解けあっていく』という展開も、主人公の『内面世界』を描いた作品として非常に分かりやすいです。
他にも少女の心理を描いたメタファー的な要素が、あちこちに山ほど散りばめられながら非常に繊細なタッチで描かれており、映像表現も非常に美しいため『映像や作品に込められたメッセージ』をなんとなく感じ取るだけでもすんなりと楽しめる作りになっているのは良い感じ。
更に加えて、美しい世界へのカウンターとしての『ゾンビ要素』のアンバランスさが、なかなか良い味を出しています。
ただ雰囲気映画としては良いのですが、ゾンビ映画として観るとツッコミどころが満載なのは困りもの。
ゾンビのバックボーンやら世界観やらも不自然ですし、そもそも作中にゾンビの出番があんまり無くて、アクマで少女たちの『障害』というの舞台装置の一部という描かれ方しかしていないため、ゾンビを期待して観ると非常に物足りないと思われます。
ラストのオチも、雰囲気映画としては非常に分かりやすく『ストンと腹に落ちるタイプの終わり方』なのですが、ゾンビ映画として観るとすると盛大な投げっぱなしでしかないので評価の別れるところでしょう…
個人的には、非常にキレイなオチって感じで好きなんですけどね。
ゾンビ映画を期待して観ると盛大な肩透かしになる可能性がありますが、雰囲気映画的なテイストの作品が好きであればなかなか楽しめる内容になっていると思います。
(あと百合要素もちょっとあるので、そっち系の作品が好きな人にも少しオススメできるかも?)
あと、世の中の非常に難解なものが多い『雰囲気映画』の中では、物凄くテーマ性とか主題とかが分かりやすい作品なので、『雰囲気映画』が苦手という人にも結構オススメですよ。
(世の雰囲気映画も、本作ぐらいストレートで分かりやすい内容なら楽で良いのに…(笑))