NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ナイチンゲール」(60点/サスペンス)

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■■■「ナイチンゲール」■■■
(60点/サスペンス)


 19世紀、オーストラリアのタスマニア地方。
 盗みを働いたことで流刑囚となったアイルランド人のクレアは、その美しい容姿と歌声から、流刑地へと送られることを免除する代わりに、一帯を支配する英国軍の将校であるホーキンスの給仕として囲われていた。


 しかし、刑期が終了しても彼女が解放されないことに不満を抱いたクレアの夫のエイデンは、ホーキンスに不満を申し立てに向かうが、激高したホーキンスはクレアを夫の目の前で仲間たちとレイプしたうえに、夫と子供を殺害してしまう。


 本人も暴行を受け、翌日に意識を取り戻したクレアは、ホーキンスたちが島の北部のローセンストンという街に向かったことを知り、彼らに復讐するために先住民のビリーをガイドに雇い追跡を開始するが…

 


 開拓史時代のオーストラリアで、英国軍人の蛮行によって夫と子供を殺害された女性が復讐のために立ち向かう…という、サスペンススリラー映画。


 設定だけ聞くと、なんとなくレイプによって尊厳を踏みにじられた女性が悪党に立ち向かう『レイプ・リベンジもの』といった印象を受けますが、実際の中身の方はそこまでリベンジものという雰囲気ではなくて、どちらかというと開拓史時代のオーストラリアを舞台とした歴史ものといったテイストの強い作品ですね。


 ただ歴史ものといっても、描かれるのは『オーストラリア開拓時代の闇の歴史』といった感じですが…


 先住民のアボリジニたちが『人食い人種』とさげすまれて、男は殺害され女は捕らえられてレイプされるといった、日常的にさも当然のように行われるえげつない行為の様子がリアルに描かれていて、なかなかに衝撃的な内容。


 他にも、流刑者や奴隷たちが大した理由もなく殺害されたり等と、当時は当たり前だった人を人とも思わないような『格差』による残酷な行為が描かれたり、英国人と被支配側の人種やアボリジニたちの間の『深い確執』が描かれたりと、歴史ドラマや人間ドラマとしてのテイストの方が強い印象。


 『アメリカ開拓時代』を舞台としたこういった作品は割とありますが、『オーストラリア開拓時代』を舞台とした作品はあまり多くないので、なかなか興味深くて面白い内容という感じです。


 キャラクターとしても、主人公の仇役となる英国軍人たちの『英国人以外は人間とも思っていないような不遜で残虐な態度』も良いキャラ付けになっていますし、復讐のために無心に仇を追跡する主人公と、道案内役として雇われただけだったアボリジニの青年が、英国軍人に立ち向かうために相互理解して協力しあっていくという流れも面白いですし、『人種』とか『格差』とか改めて色々と考えさせられる作品という印象。


 リベンジものとしては『特に訓練も受けていない単なる女給の主人公が、どうやって軍人たちに立ち向かっていくんだろう?』と思いきや、道中で先住民とトラブルを起こしたり仲間内で内ゲバを起こしたりと予想外の展開が多くて、意外と無理のない話の流れでなかなか楽しませてくれます。


 ただ、歴史的背景をベースとした『歴史ドラマ』や『女性の自立』を描いた作品としては面白いのですが、リベンジものとして観るとラストとかアッサリしすぎでやや拍子抜け感があるのは残念なところ。


 エンタテイメントとして観るなら、終盤はもうちょっとカタルシスがある展開でも良かったかなぁ?


 また結構尺が長い映画なうえに、結構エグくて精神的に来るものがある内容なので、元気がある時に観ないとちょっと疲れてしまいそうなのは、注意が必要かも…

 


 総評としましては、なかなか興味深い内容の『オーストラリア開拓時代の闇の歴史を描いたサスペンスドラマ』って感じの作品ですね。


 あまり表立って語られないような『オーストラリア開拓史時代の歴史の裏側の物語』とかに興味がある場合は、チェックしてみても良いかもしれません。


 逆にレイプ・リベンジもの作品として期待していると、ちょっと肩透かしを食らわされるかもしれませんので、そっち方面に期待している人はややイメージと違う作品になってしまうかも…