■■■「キラーソファ」■■■
(50点/オカルト)
『変わった男性から付きまとわれやすい』という奇妙な特徴を持ったダンサーのフランチェスカは、ある日、自分のかつての友人で彼女のストーカーだったフレデリコという男性が、何らかの事件に巻き込まれて行方不明となっている事を警察の事情聴取で知る。
そんな矢先に、新しい一人がけのソファを入手した彼女は、その座り心地にすっかり夢中になるが、彼女の家に遊びに来ていた恋人のTJが両足に重傷を負うという事件が発生。
TJは『ソファが何かに取り憑かれている』という奇妙なメッセージを残して亡くなってしまう。
実はそのソファーにはブードゥー教に傾倒したフレデリコの霊が取り憑いており、彼女に近づくものを次々と殺害する『殺人ソファ』と化していたのだ…
とある女性に執着するストーカー殺人鬼の霊がソファに取り憑き『殺人ソファ』となって女性に近づく人間を襲う…という、モンスター映画風味のオカルトホラー映画。
今までも『殺人洗濯機』やら『殺人冷蔵庫』やら、無機物が人間を襲う『殺人〇〇』系の映画は色々とありましたが、今回はそのラインナップに『ソファ』が追加されたようです。
殺人無機物というと、大概は『殺人鬼の霊』やら『悪魔』やらが無機物に取り憑くのが定番ですが、本作もご多聞に漏れず『ストーカー殺人鬼が恋人に近づくためにブードゥー魔術でソファに自分の魂を移した』みたいな感じの設定。
なんとなく設定だけ聞くと、ソファ版「チャイルドプレイ」みたいな感じですね。
まあ、それにしても『なんでソファなんだ…』というツッコミどころはありますが…
(やや「人間椅子」のオマージュっぽい描写もあるので、その辺を意識したのかも? といってもニュージーランドの監督が乱歩を知ってるかは知らんけど…)
ちなみに本作はニュージーランド製の作品で、新進のホラー映画監督が作っているらしいのですが、初っ端からこんなエキセントリックな作品を作ってていいのかと…(笑)
本作の最大のウリは、やはり『殺人ソファ』のインパクトでしょう。
つぶらな瞳にしか見えないボタンに、ゆるキャラの顔っぽい背もたれという外見で、フットレストの部分を足代わりにしてトコトコと歩き回ったり、ドアからひょっこりと顔(背もたれ)を出してこちらを見つめる姿とかはファンシー以外の何者でもありません。
そんな外見なのに人間を容赦なく撲殺したり、中身は意外とグロかったりするというギャップはなかなか強烈で、色々な意味でインパクト抜群で笑わせてくれます。
ただ、殺人ソファのキャラクターのインパクトは強烈なのですが、本作が『ホラー映画として面白いか』と言われると微妙なところなのは困りもの。
何が微妙かって、肝心の『殺人ソファ』の活躍するシーンが意外と少ないんですよね。
ソファ自体の出てくるシーンは多いのですが、殆どのシーンが『佇んで主人公を見ているだけ』みたいな感じで、あんまり積極的に動き回ってくれません。
殺人ソファが活躍せずにどんなストーリーが展開されているかというと、主人公の過去(というか前世)に実は『オカルト的な秘密』みたいなのがあって、この『主人公の出生の秘密』の部分やら『殺人鬼がどんな魔術を使って殺人ソファに生まれ変わったのか?』といった、オカルトの謎解き部分に多くの尺が取られている感じ。
しかもこの設定が妙にややこしくて難解なため、尺を多く取ってる割にはお話が分かり辛くてグテグテ気味の部分が多くなってしまっているんですよね…
『前世を絡めたストーリー』そのものはオカルトサスペンスとして割と良くできているとは思うのですが、色々と『凝った設定』とか『謎解き要素』を盛り込み過ぎたせいで逆に『殺人ソファ』のキャラが薄くなってしまっているわ、出番も減ってしまっているわで何か本末転倒な印象。
個人的にはもうちょっとシンプルな内容で、もっと『殺人ソファ』のキャラクターを活かして暴れ回らせて貰いたかったですよ…
(オカルトサスペンスの要素は、その設定を活かして別作品をもう一本撮ればよかったと思う。)
総評としましては、お馬鹿な設定のインパクトは抜群ながらも『どうにも地味な印象のぬぐえないオカルトサスペンス映画』という感じですね。
設定の奇抜さの割には映画の内容はそこまでインパクトが無いので、ネタ映画として弱くなってしまっているのは残念なところ。
『殺人ソファ』のという設定が気になるのであれば、とりあえずチェックしてみても良いとは思いますが、『オススメするにはちょっと弱いかなぁ?』というのが正直なところですよ…