■■■「デッド・ドント・ダイ」■■■
(45点/モンスター)
極地の掘削工事の影響で地軸がズレ、ペットや家畜が異常な行動を取るようになり天変地異の予兆がまことしやかにささやかれる近未来。
警官が3人しか居ないアメリカの平和な町のセンターヴィルで、ダイナーで2人の女性が野生生物に内蔵を食い荒らされたような姿で死体となって発見されるという事件が発生。
警察署長のクリフは、巡査のロニー、ミンディらと共に事件の調査を開始するが、町では『ソンビの仕業ではないか』という噂が広まりつつあった…
アメリカの片田舎の町に世界的な天変地異の影響でゾンビが出現し、警官たちがなんとかして事態を収束させようとする…というゾンビものモンスターパニック映画。
ビル・マーレイやアダム・ドライバーが主演という無駄に豪華な出演陣の布陣で、コメディ寄りの内容なのかと思いきや言うほどコメディ寄りでもない、なんというか独特のノリのゾンビ映画です。
エラく独特のテイストのある作品だなと思いきや、なんでも「ストレンジャー・ザン・パラダイス」やらの個性的なカルト系作品でおなじみのジム・ジャームッシュ監督の作品だということで何となく納得。
作品を全体通して不思議な空気感が漂う内容で、ゾンビ映画のクセに全くといって良いほど緊迫感がなく、全体的にまったりとしたゆるい空気が漂っているのですが、ゆるくてダルいという感じではなく独特の良い味を出しているのが特徴です。
本格的にゾンビが登場するまでの尺も結構長めで、ゾンビ映画として観ると退屈な内容ではあるのですが、主人公たちを含めた町の住人たちのキャラの立て方が上手くて、観ていて退屈しない内容なのも良い感じ。
超低予算っぽいゾンビ映画なのに矢鱈とキャストが豪華で、加えて特撮もショボくて血も殆ど出ない(ゾンビが斬られると『黒い煙』みたいなエフェクトが出る)という辺りも確信犯的で、ゾンビパニックそのものよりも独特のノリと世界観を表現することに力を注いでいるような印象の作品という感じです。
ただ世界観やテイストは良い感じなのですが、先述のとおり本作が『ゾンビ映画として面白いか?』と言われると微妙なところなんですよね。
まずゾンビが終盤まで殆ど登場しないですし、ゾンビと戦うシーンのゴア表現もキレイすぎてどうにも迫力不足。
独特の空気感のせいで緊張感も恐怖感も全くありませんし、観ていてどうにもダレてしまいます。
パロディ要素も、分かりやすいギャグやらパロディは殆どなくて、他の映画のオマージュっぽいネタやらキャストに絡んだようなネタが多めで、唐突なメタフィクションネタもちょっと自分には理解不能。
カメオ出演を含めたキャストの豪華さやら、『分かる人には分かる』系のパロディがあちこちに散りばめられているらしいのですが、逆に分からなければ『退屈なだけの映画』という感じになってしまっており、あまりそういうネタに詳しくない自分的にはそこまで楽しめない作品でしたよ…
総評としましては、個性的なテイストは面白いものの、普通にゾンビ映画として観るならば『地味で盛り上がりに欠けるゾンビ映画』という感じですね。
ジャームッシュ監督の作品のテイストやらマニア受けするノリやらが好きな人であれば割とオススメできる内容だと思うので、そういうジャンルが好きであればチェックしておいても損はないでしょう。
独特の空気感やらは一見の価値はあると思いますので、そういう方向性が気になるようであればチェックしてみても良いかもしれません。