■■■「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」■■■
(55点/サスペンス)
趣味のバンド仲間であるジーク、アール、ディックの3人は、いつものようにバンドの練習と称してガレージに集まってバカ騒ぎをしていたところ、思いがけぬ事故でディックに重傷を負わせたうえに、救急病院の前に放置して死なせてしまう。
ディックの死体を発見した警察は、死体に暴行を受けた跡やレイプされたような痕跡があったことから、『静かな田舎町で起こった凶悪な殺人事件』とみなして事件の捜査を開始。
真相を知るジーク、アールは、なんとかして事件を隠蔽しようと奔走するが、やがて警察の捜査やアールたちのヘマによって事件の真相が徐々に明らかになっていき…
バンド仲間を事故で死なせてしまったダメ男たちが、なんとかして事故を隠蔽しようと画策する…という、コメディ風味のサスペンス映画。
「スイス・アーミー・マン」の監督が撮っている新作サスペンスという事で、あの映画も随分と変なノリの映画でしたが本作もかなり独特のノリの珍妙な作品です。
お話としては『事故で友人を死なせてしまった男たちが事件を隠蔽しようとするも、ヘッポコすぎて色々とボロが出てしまい徐々に真相が明らかになっていく…』みたいな展開で、いわゆるブラックユーモア系のコメディ作品という感じ。
本編でも『友人が死んでしまった理由』は中盤辺りまで隠されており、お話が進むに従って徐々に謎が解明されていくという謎解き展開なのですが、この死因が存外に酷くて『そりゃ隠蔽したくもなるわ』(ディック(チンコ)・ロングってそういう意味か…)って感じの内容なのがバカバカしくてある意味で笑えます。(というか、むしろ笑えない?)
ただ、一応はサスペンス的な構成にはなっているものの、サスペンス的な要素は弱め。
どちらかというと家族ドラマや人間ドラマ的な部分が中心で、くだらなさすぎる理由で人生を棒に振ることになってしまった、主人公の哀愁を感じるダメっぷりがなかなか良い味を出している感じ。
人間の『性癖』(というか性的嗜好)というタブーっぽい部分をブラックなネタとして扱うノリとか、どうしようもない主人公のダメ人間っぷりとか、どう捉えたらよいのか分からない悲しげなオチとかから、監督のセンスとか人生観とかが見えるようで良い意味でも悪い意味でも独特のテイストを感じる内容ですねぇ。
この独特のブラックユーモアとかセンスが合えばなかなか楽しめる内容だとは思いますが、個人的にはちょっと笑いのツボからズレてる感じで、悪くはないんですが『どういう感想を抱いたら良いのか良く分からない作品』でしたよ…
総評としましては、良くも悪くも『何か微妙な気持ちにさせられる人間ドラマ風味のサスペンス映画』って感じの作品ですね。
面白いと言えば面白いのですが、ノリが独特すぎて他の人にオススメできるかと言われると、ちょっと悩ましいところ。
個性的なブラックユーモア系の作品が好きな人は、気になるようであればチェックしてみても良いかもしれませんよ。