NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「とっととくたばれ」(70点/サスペンス:オススメ)

f:id:uei_nanigashi:20210726010326j:plain

 

■■■「とっととくたばれ」■■■
(70点/サスペンス:オススメ)


 ある日、マトヴェィは恋人のオーリャから『幼い頃から自分をレイプし続けている父親を殺して欲しい』という物騒な相談を受ける。


 マトヴェイは恋人を救うために父親であるアンドレイの家を訪問、彼を殺害しようと試みるが、筋金入りのタフな刑事である彼を殺害する事が出来ずに、逆に彼の家に捕らえられてしまう。


 アンドレイはマトヴェイから、どんな理由で彼が自分を殺そうとしたのか聞き出そうとするが、やがてアンドレイに隠された恐るべき秘密が明らかになっていき…

 


 恋人から依頼されて恋人の父親を殺害しようとした若者が、父親と命がけの乱闘をするうちに思いがけぬトラブルへと発展していく…といった感じの、ロシア製のブラックユーモア系のバイオレンススリラー映画。


 昨年のシッチェス映画祭に出展された作品だそうですが、いかにもシッチェス映画祭っぽいノリの個性的で面白いスリラー映画ですね。


 ノリとしては『シャレオツでバイオレンスなサスペンススリラー映画』といった感じなのですが、とにかく映像や演出のセンスが良い作品という印象。


 ポップでキッチュな感じの演出やBGMに合わせて、過剰なまに血みどろの『主人公と(彼女の)父親との命がけのドツキあい』が繰り広げられる様子が、非常にテンポ良く面白く描かれており、とにかく『楽しく見れるバイオレンス映画』という感じに仕上がっています。


 ちょうど、ひと昔前の『ノリノリだった頃のタランティーノ作品』を更にポップにしたようなノリとセンスで、軽快でテンポの良い演出に過剰なゴア表現やバイオレンス描写といった個人的にはドストライクの組み合わせて、『暴走系のバイオレンス映画』が好きな人であれば、かなりハマる事のできる内容ではないかという印象。


 ストーリーも、最初はホントに『若者と父親がドツきあってるだけ』みたいな展開なので、単純に『イキオイだけで作られたワンシチュエーション作品』なのかと思いきや、意外とシッカリとお話が練られているのも良いところ。


 『何故、彼女は父親の殺害を依頼したのか?』とか『刑事である父親に隠された秘密とは』みたいなところが徐々に明らかになっていくのですが、『謎が解明されていくにしたかって逆に先が読めなくっていく』という構成はなかなか面白いです。


 主人公を含めた主要キャラの立て方も上手く、それぞれの事情をシッカリと掘り下げて人間ドラマ的にも面白い内容になっており、それぞれの主要キャラが各々に事情や思惑を抱えてはいるのですが、全員が結構な『クソな性格』でブラックユーモアとして楽しめる内容になっているのも良い感じです。


 ほぼ『アパートの一室』を中心に繰り広げられる話なのでスケールは小さくて低予算な感じですし、ブラックな内容で割と救いの無い話なんですが、オチの落としどころも上手いですし、ホントに「とっととくたばれ」というタイトルが相応しいような楽しいストーリーで、タイトル・内容共にセンスの良さを感じさせられる作品でしたよ。

 


 総評としましては、なかなか良く出来た『ブラックユーモア系のバイオレンススリラー映画』といった感じの作品です。


 タランティーノやらロドリゲス監督のような、ブラックでノリの良いバイオレンス映画が好きな人であれば、割とハマれるタイプの映画だと思いますので、そういう作品が好きであれば普通にオススメです。


 ただ、バイオレンス描写やらゴア描写が思った以上に強めで、血とか痛そうなのがダメな人にはちょっと厳しい内容ですので、そういうのが苦手な人は要注意ですよ。


 個人的には、本作の監督であるキリル・ソコロフという名前は覚えておいて『次回作にも期待しよう』と感じるレベルの一本でしたよ。