NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「恐怖ノ黒電波」(55点/サスペンス)

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■■■「恐怖ノ黒電波」■■■
(55点/サスペンス)


 ディストピアと化した近未来のトルコ。

 アパートの管理会社の社員であるメフメットは、高層アパートの屋上に政府のプロパガンダ放送を受信するための共同アンテナを設置する事となる。


 しかし設置作業を行ったエンジニアが、ビルの屋上から転落死するという奇妙な事故が発生。


 また『壁から奇妙な黒い液体が漏れている』という苦情を受け調査に向かったところ、屋上のアンテナから奇妙なささやき声のような音が聞こえ、更に謎の黒い液体が染み出しているのを発見する。


 そしてそれ以降、アパートでは相次いで奇妙な現象が発生するようになっていき…

 


 政府の発する謎の洗脳電波によって人々が恐怖に晒される…という、ディストピアもののSFサスペンススリラー映画。


 「恐怖の黒〇〇」シリーズの最新作に当たる作品ですが、シリーズといっても邦題で勝手にシリーズっぽいタイトルを付けてるだけなので、当然ながら作品的な繋がりのようなものは全くありませんが、この「黒〇〇」シリーズは何気に質の高いSF系ホラーを連続でリリースしてくれるので、なかなかの優良シリーズという印象ですね。


 本作に関しても、なかなか個性的で面白い作品となっています。


 お話としては、『とあるアパートの管理人が、政府の指定で「プロパガンダ放送を受信するためのアンテナ」を屋上に建てるんだけど、それ以降にアパートで奇妙な現象が起こるようになっていき…』といった感じのストーリー。


 一応の主人公は『アパートの管理人』なんだけど、そこまで主人公然としてる感じじゃなくて、いくつかの登場人物のストーリーがパラレルで進んでいくという、ちょっと群像劇っぽい構成のお話です。


 ストーリー的には、政府の国営放送のアンテナを建てたことで『政府の陰謀』的なものが展開していき、洗脳電波の影響でアパートの各家庭で奇妙な現象が起こるようになっていく…みたいな流れなのですが、この現象が電波が元なだけに内容の方も色々とデンパ的。


 ちょっとだけビデオドロームとかを髣髴(ほうふつ)とさせるような、現実とも幻覚ともつかないような世界が展開されて、デンパ的な雰囲気映画としてはなかなか良い味を出しています。


 洗脳電波らしきものを受信すると、何故かアンテナから『謎の黒い液体』が染み出してきて、液体に触れた人間が洗脳されていく…みたいな設定も不気味で良い味を出していますが、アンテナから液体が出てくるのは『どういう仕組みなんだよ』というのと、そもそも『最初から水道に薬品を混ぜれば良くない?』って部分にツッコミを入れたくなったのは自分だけ?


 政府に逆らう人間を排除して、国民を全て無個性化させようとするといった管理社会の恐怖とかが『顔の無い住人』のオマージュとして描かれているのも、なかなか不気味で悪くない印象。


 ただ、不気味な雰囲気映画としては良く出来ているのですが、ストーリーが全体的に割とグテグテで『最終的にどこを着地点として目指したいのは釈然としない』のに加えて、約2時間と尺が長めでお話のテンポがあまり良くないせいもあって、ちょっとダレる印象があるのは難点かなぁ?


 作品として目指したい方向性は何となく分かる感じではあったのですが、もうちょっとメリハリのある内容ならもっと良かったような気がしますよ

 


 総評としましては、『そこそこ良い味を出してるディストピアSF風のサスペンス映画』って感じの作品ですね。


 未来世紀ブラジル」とか「ビデオドローム」みたいな、デンパ系のディストピアSFが好きであれば、割と楽しめる内容ではないかと思います。


 急いで見るほどかと言われると悩ましいところですが、そういうジャンルが好きで気になっているようであれば、とりあえずチェックしてみても損は無い感じの一本かもしれませんよ。