■■■「ジャッリカットゥ 牛の怒り」■■■
(50点/サスペンス)
南インド・ケーララ州のジャングルの奥地にある小さな村で、肉屋のアントニが水牛を屠殺しようとしたところ、危険を感じた水牛が暴れだして逃走してしまう。
逃げ出した水牛は村の中を暴走。
村人たちがなんとかして捕獲しようとするもことごとく失敗し、村の屋台やタピオカ畑を踏み荒らして大暴れを開始。
騒ぎを聞きつけた隣村のならず者やら警察も集まってきて、近隣を巻き込んだ大騒動へと発展していくのだった…
インドのジャングルの中の小さな村が、屠殺場から逃げ出した水牛のせいで予想外のパニックへと巻き込まれていく…という、感じの生物パニックもの風味のサスペンススリラー映画。
タイトルだけ見ると、なんとなく『暴れ牛』を題材とした生物パニック映画っぽいのですが、実際の中身の方は小さな村で発生したパニックと狂乱状態を中心に起こる大混乱を描いた『群像劇』的なサスペンス映画って感じの作品ですね。
一応は『暴れ牛』はお話の中心には居るもののそこまで扱いは大きくはなくて、混乱に乗じて勝手に狂乱状態になって自滅していく『人間の愚かさ』というか『男たちの愚かさ』を描いた寓話的なお話という印象。
ノリ的には、ちょっとスタイリッシュな雰囲気映画的なテイストが強めで、特に最初のノイズのリズムに合わせてサブリミナル的に映像が差し込まれるシーンは、フランスのサスペンス映画である「デリカテッセン」っぽくて面白いです。
その他のシーンでも映像と音が印象的に使われているシーンが多く、牧歌的(を通り越して野生的)な雰囲気のインドの田舎町の様子にMV的な映像を合わせた表現は、なかなかに個性的でインパクトはありますね。
ただ雰囲気やら独特の映像センスは面白いものの、ストーリーに関してはちょっと微妙な印象。
多くの人間がパニックに巻き込まれていく『群像劇』的なストーリーになっているのですが、登場人物が多い割にはキャラの個性の描き分けが弱く、特に自分的には『インドの田舎のオッサンたち』の顔の見分けが付け難くて、途中でちょっと話が良く分からなくなってしまいました。
また、お話の中心となる『暴れ牛』の出番もあまり多くなくて、特に序盤は出し惜しみ的に姿があまり出てこないため、どうにも影が薄い感じになってしまっているのは残念なところ。
全体的にお話の展開が遅めで盛り上がるシーンも少ないため、『暴れ牛』にはもっと派手に暴れてまわって、パニックの中心に居る事を表すインパクトを残して欲しかったです。
でもラストの展開の、『愚かさ』のメタファーとも言えるような無駄に派手なノリは、個人的には嫌いじゃなかったです。
(『人間は愚か』って話かと思いきや、もっと原始的な愚かさだった。(笑))
総評としましては、『なかなか個性的な部分でクセの強いインド製の群衆劇風味のパニック映画』って感じの作品ですね。
全然オシャレじゃない『汚い「デリカテッセン」』みたいな雰囲気映画という印象で、強く推すかと言われると微妙ですが独特のテイストが刺さる人には刺さる作品かも?
いつもの『派手なインド映画』らしくない独特なノリのインド映画としては面白い作品かもしれませんので、興味のある方はチェックしてみても良いのではないでしょうか?