■■■「クライモリ(2021年版)」■■■
(55点/サスペンス)
就職を控えた若者のジェンは、友人たち5人と共に自然に包まれたバージニア州の小さな町レンウッドへとバカンスに訪れる。
アパラチア山脈の自然歩道へと向かい大自然を満喫する彼らだったが、仲間の一人の提案でアメリカ建国時の遺跡を探そうとハイキングコースを外れたところ、道に迷ってしまい森の奥深くで迷子になってしまう。
更にはその場所で、何者かの仕掛けたトラップにかかった彼らは、謎の集団に捕らえられて監禁されてしまう事となる。
それから6週間後、消息を絶ったジェンを探すために父親のスコットはレンウッドへと訪れるが、その場所で驚くべき光景を目にするのだった…
アパラチアの山中にハイキングに訪れた若者たちが、謎の集団によって拉致され命を狙われる…という、サスペンススリラー映画。
2003年に作られた、『アパラチア山中で道に迷った女性が深夜の森の中で正体不明の怪人に襲われる』というストーリーの「クライモリ」のリメイクに当たる作品…なのですが、正直に言って『全く別の作品』と行っても良いレベルで違う内容のお話となっています。
ちょっとネタバレになってしまうのですが、両作の大きな違いについて触れると、まずオリジナルである「クライモリ」は『森に迷い込んだ主人公が正体不明のミュータントの怪人である「マウンテンマン」によって主人公が命を狙われる』という、テンポの良いスラッシャーホラー映画だったのに対して、リメイク版である本作は『山中にバカンスに訪れた若者たちが独自の宗教を持つ謎のコミュニティ「新国家(ファンデーション)」によって拉致される』という、サスペンススリラー的な作品になっているという点。
ストーリーも全く別物レベルで共通点がないですし、もともと「13日の金曜日」のフォロワー的な『スラッシャー映画』だったのが、『カルトホラー』的なノリへと作品のジャンルそのものが変わってしまっているので、『これ、リメイクにする必要とか全くなかったんじゃない?』というのが正直なファーストインプレッションです。
ただオリジナルと全く別の内容だからといって、本作が全くダメな作品かというとそうでもなく、割と普通に『丁寧に作られたカルト系のサスペンススリラー』という感じに仕上がっているのは悪くない印象。
山中で独自の宗教や法律を持ち密かに暮らす人々である「新国家(ファンデーション)」の不気味さも悪くないですし、謎のコミュニティとの間で思いがけない形でトラブルに巻き込まれていく主人公たちの様子も、サスペンスとして上手く描かれています。
コミュニティの独自の刑罰による処刑シーンやブービートラップによる殺害シーンといったような見せ場もそこそこありますし、色々と工夫を凝らして全体的に退屈にならないように作られているのも好感触。
主人公たちも、この手の作品にありがちな『低能な若者たち』みたいなキャラではなく、割とシッカリとした自己を持ったキャラとして描かれ、主人公の成長みたいな部分もシッカリと描かれているのもなかなか良く出来ています。
終盤の展開も先が読めなくてなかなか面白いですし、印象的なラストシーンは好みは分かれそうですが、個人的には結構好きな感じ。
ただ全体的に尺が長めで、元々がテンポの良いスラッシャーホラーだったのに比べると、ややテンポの悪い部分が感じられたのと、残虐描写のある作品としては見せ場となる部分がちょっと乏しかったかなぁ…というのは気になったところかも?
総評としましては、オリジナルの新作として観るのであれば、『まあまあ良く出来たカルトホラー風味のサスペンススリラー映画』という感じの作品ですね。
逆に「クライモリ」の現代リメイクのつもりで観た場合は『え、もしかして間違えて別の作品を借りちゃった?』と疑問を抱きたくなるレベルで全く別のお話ですので、ちょっと注意が必要かも?
でもまあ、カルトもののサスペンスとしては普通に楽しめるレベルの内容ですので、設定とかが気になるようであればチェックしておいても損は無い一本だと思いますよ。