NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」(55点/オカルト)

■■■「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」■■■
(55点/オカルト)


 1918年のハンガリー
 戦場で瀕死の重傷を負い生死の境をさまよいながらも帰還したトーマスは、遺体と一緒に遺族を撮影しポートレートを作る『遺体写真家』として生計を立てて暮らしていた。


 そんなある日、アナという少女から仕事の依頼を受けた彼は、彼女の暮らすという山間の寒村へと訪れるが、その場所は戦災とスペイン風邪によって多くの死者を出し、未だにその死体が放置されたままになっているという凄惨な場所だった。


 村の遺族たちの依頼を受け遺体のポートレートの撮影を開始した彼だったが、撮影した写真にも存在しないはずの人影が写ったり、奇妙な物音や不気味な影を目撃したりと次々と奇妙な現象が発生。


 アナも自分と同じように過去に臨死体験をした事がある事から『霊の姿が見える』と聞かされたトーマスは、霊たちが自分とアナに何かを伝えようとしているのではないかと考え、霊の目的を探るために調査を開始するが…

 


 第一次世界大戦直後のハンガリーの寒村で、遺体写真家の男性と少女を謎の霊現象が襲う…という、オカルトサスペンス映画。


 『死んだばかりの遺体を遺族と一緒に撮影し記念のポートレートを作るという「遺体写真家」の若者が、山間の寒村に続発する心霊現象の謎を追う』という感じの、サスペンス風味のオカルトホラーです。


 なんでも、亡くなった方の遺体を着飾らせて『遺体のボートレート』を撮影するというのは19世紀ごろの欧州で流行った風習らしいのですが、現代ではあまり考えられない奇異な風習である『遺体写真家』を題材として主人公に据えるという構成は、『独自の世界観』や『ゴシックホラー的なテイスト』が感じられてなかなか面白いですね。


 特に主人公が村人たちの依頼を受けて、遺体のポートレートを次々と撮影していくという序盤の展開は、雰囲気ホラーっぽい独特の空気感があって良い感じ。


 ただ序盤は結構ゴシックホラー的なテイストなのですが、中盤以降は『村に出現する霊たちの目的を突き止める』のがメインになっていき、割と普通のオカルトサスペンス的な展開になっていく印象。


 とまあ、ここまで聞くとごく普通の『ゴシックテイストのあるオカルトサスペンス映画』っぽいのですが、本作の特徴はとにかく『幽霊たちが異常なまでに狂暴』だという事。


 お話の中盤あたりから、霊たちの住民への本格的な『攻撃』が始まるのですが、これが幽霊のクセに能力を物理攻撃力に全振りみたいな状態で、住民を引きずり回すわ吹っ飛ばすわと矢鱈とバイオレンス。


 終盤では何十人も居る村人たちを次々と投げ飛ばしたり、しまいには建物まで崩壊させてみたりと、もはやモンスターパニック映画のようなムチャクチャなノリで予想外に楽しませてくれます。


 そんな狂暴な幽霊軍団に対して、単なる『遺体写真家』の主人公がどうやって対抗するのかというと…特に有効な対抗手段を持ってる訳でもないので、お話が全体的にちょっとグテグテ気味なのは困ったところ。


 主人公の『遺体写真家』という特異な職業の設定も作中でそこまで効果的に使われている感じでも無いですし、そういう部分も含めてどうにも設定が活かしきれていない感があります。


 ラストも結局は『幽霊たちが何をしたかったのか』も釈然としないままですし、オチも結構な『投げっぱなしっぽいオチ』なので、どうにも物足りなさが残ってしまう映画でしたよ。


 というか派手な方向に振るのであれば、良い方向でも悪い方向でも良いので『もうちょっとスッキリと分かりやすいオチ』にして欲しかったなぁ…

 


 総評としましては、『独特のテイストが意外と楽しめるオカルトサスペンス映画』という感じの作品ですね。


 全体として見ると割と不満点もありますが、世界観や雰囲気、ビジュアルも含めるとそこそこ楽しめる要素のある映画という印象。


 予告やら設定やらを見て刺さりそうな要素があるようであれば、とりあえずチェックしてみても良い一本かもしれませんよ。