■■■「ティル・デス」■■■
(55点/サスペンス)
妻の不倫により冷めきった破局寸前の夫婦であるエマとマークは、11年目の結婚記念日を夫の準備した人里離れた湖畔の別荘で過ごす事となる。
そこで『結婚生活をやり直したい』というマークの告白を受けたエマは夫の態度に感動して心を許すが、その翌朝に目を覚ますと自分が夫と手錠で繋がれている事に気づく。
混乱する彼女の目の前でマークは拳銃自殺を遂げ、夫の死体と繋がれたままになった彼女は、マークの残したメッセージから夫が自分への復讐のためにこの計画を準備した事を知る。
彼女は夫の死体を引きずりながらも雪に閉ざされた湖畔の別荘からの脱出を図ろうとするが、携帯電話が壊されたうえに自動車からは燃料が抜かれている事を知り…
夫の死体と共に雪に閉ざされた別荘に軟禁される事になった女性が、なんとかして脱出を図ろうとする…という、サスペンススリラー映画。
『雪に閉ざされた別荘で、夫の死体と繋がれて脱出不可能になった妻』という設定だけ聞くと、なんとなくワンシチュエーション系のソリッドサスペンス映画のような印象を受けますが、実際の中身の方は割と普通のクライムサスペンス映画という感じの内容の作品です。
お話としては『結婚記念日に雪山の別荘で自殺した夫の死体と繋がれた女性がなんとかして脱出を図ろうとするんだけど、夫によって仕組まれた第2の罠によって不審な人影が彼女の元に迫るのだった…』みたいな感じの展開。
『夫の死体と繋がれたまま脱出を図る』という序盤の設定は非常に個性的で、先の展開が読めない感じの内容で非常に面白いのですが…
設定からてっきり、S・キング原作の「ジェラルドのゲーム」(人里離れた別荘で手錠を使ったSMプレイの最中に男性が心臓発作で死亡し、死体と一緒にベッドに拘束されたままになる)みたいな感じの尖った設定のシチュエーションスリラーなのかと思いきや、そういう『特殊な設定』なのは割と序盤のみ…
ちょっとネタバレになってしまうのですが、中盤からは『夫の残した財産を狙う強盗』みたいなのが現れて、ごく普通のクライムサスペンス映画になってしまうという微妙に肩透かしな感じの作りなんですよね。
まあ普通のクライムサスペンスとは言っても、クライムサスペンス部分の出来が悪いわけではなくて、そこそこ楽しめる内容に仕上がっているのは良いところ。
サスペンスとしての緊張感の煽り方やら危機感の演出も上手いですし、間の取り方なんかも上手くて冗長さが無いため観ていて退屈しない作りにはなっています。
中盤あたりまでにちょっとグテグテ感はあるものの、後半の展開は非常にスピーディでテンポも良くて面白いですし、『浮気した妻に復讐したいがために、そこまで念入りにお膳だてするのかよ?』って感じの夫の執念のようなものも怖くて、意外と楽しめる内容にはなっています。
むしろ『序盤を尖った展開にしすぎたせいで、後半が普通過ぎて物足りなくなってしまった』感があるのは、ちょっと残念な感じですね。
導入部分をここまで尖った設定にするなら、後半ももうひと捻りあるブラックな感じのノリの方が良かった気がしましたよ…
総評としましては、『悪くは無いんだけど、ちょっと物足りなさの残るサスペンススリラー』って感じの作品ですね。
『夫の死体に繋がれる妻』という特殊なシチュエーションに魅力を感じて鑑賞すると、やや肩透かしを喰らわされてしまう可能性があるので要注意という印象。
まあ物足りない部分はありつつもサスペンスとしては普通に楽しめる内容ですので、気になるのであればチェックしておいても損は無い一本ではないかと思いますよ。