NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ハッチング-孵化-」(60点/ファンタジー:結構オススメ)

■■■「ハッチング-孵化-」■■■
(60点/ファンタジー:結構オススメ)


 フィンランドの森に囲まれた閑静な郊外の住宅地に住む12歳の少女ティンヤは、『完璧で幸せな家族』の動画配信を行う母親を喜ばせるために、体操の大会出場を目指して強いストレスを抱えながらも努力を続ける毎日を過ごしていた。


 そんなある夜、ティンヤは森の中で奇妙な卵を発見。
 親を亡くした子供のものだと考えた彼女は、自宅に持ち帰ってベッドで卵を温め事となるが、卵は彼女のストレスに呼応するかのようにみるみる大きくなってゆき、やがて卵の殻を割って『それ』が孵化する事となる。


 卵から産まれた『それ』に『アッリ』と名付けて育てる事にした彼女だったが、アッリは彼女の隠されたストレスや欲望に呼応するかのように、次々と恐ろしいトラブルを引き起こしていき…

 


 ストレスを抱えて暮らす思春期の少女が森の中で奇妙な『卵』を拾ったところ、卵から誕生した『何者か』が彼女のストレスに呼応するかのように様々なトラブルを引き起こしていく…という感じの、北欧製のファンタジーホラー映画。


 北欧製の作品らしく割と『雰囲気映画的』なテイストの強い内容なのですが、単純に雰囲気重視という訳でも無くて、そういう要素を差し引いてもサスペンスホラーとしても良く出来たなかなか怖い作品となっています。


 北欧製のらしく美しい絵作りの作品で独特の映像センスは美しいのですが、絵の美しさに反して内容の方はかなり『ブラックなテイストの強いダークファンタジーという感じの内容。


 母親の理想の『幸せな理想の家族』という承認欲求を満たすために、家族一丸となって『幸せな理想の家族』を演じる『仮面家族』という家庭環境の設定が既に滅茶苦茶にブラックですし、そんな中でストレスを抱えた少女が『拾ってきた卵』を育てたところ、卵から『何者か』が誕生してしまうという設定が既に面白いです。


 お話の流れとしては、『何者か』は果たして実在するのかもしくは彼女の妄想が生み出した存在なのか…的な感じで、サスペンススリラー的に進んでいくのですが、この『何者か』が恐ろしく不気味なんだけど同時に少女の生み出した存在らしい儚げなテイストもかもし出してて良い味を出しています。


 ダークな要素を抜きにしてもサスペンスとしての盛り上げ方もなかなかに秀逸で、怖いシーンはキチンと怖いですし、北欧映画にありがちな妙にスローテンポな部分も無くて見せ場も多めでサクサクと観れる作りなのも好印象。


 自分の事しか考えない身勝手な母親を始めとした、『仮面家族』である主人公の家庭のキャラも良く立っていますし、主人公の唯一の理解者になるのが『母親の浮気相手』という設定もブラックで面白いです。


 終盤の展開も予想外で良い感じですし、色々と含みのある感じのラストの『ハッピーエンド?』って感じのオチも個人的には非常に好みで、予想以上に楽しめた作品でしたよ。


 ちなみに、ここからは少しネタバレになってしまうのですが…

 


 北欧が舞台ですし『チェンジリング(取りかえ子)』の伝承辺りがベースとなっているのかな…という印象は受けたのですが、こういう切り口での描き方(そしてあのオチ)は予想外だったので、ファンタジー的な切り口でも非常に面白かったです。

 


 総評としましては、個性的で独特のテイストながらも『なかなか良く出来たファンタジーホラー映画』って感じの作品ですね。


 北欧映画ですし映像もストーリーもアクが強いのでちょっと人を選ぶ部分がある内容だと思いますが、雰囲気映画ってほど雰囲気に振られている訳でもないので、この手の作品としては割と見やすい部類では無いかと…


 強く推すかと言われると悩ましい所ですが、設定やらが気になるようであれば、とりあえずチェックしておいても損は無い一本だと思います。
 個人的にはなかなかオススメの作品ですよ。