■■■「LAMB/ラム」■■■
(55点/ファンタジー)
人里離れた山間の一軒家に住む羊飼いの夫婦が、ある日、羊の出産の世話をしていたところ、羊から『頭は羊だが身体は人間のような得体のしれない何か』が誕生する。
その生き物に驚きつつも、過去に子供を亡くしていた夫妻はそれに『アダ』と名前を付けて、自分たちの子供として育てる事を決意。
夫妻は、アダを過去に亡くした子供の生まれ変わりであるかのように愛情を注いで育てるが、やがてアダは彼らの生活を恐るべき破滅へと導いていくのだった…
羊から生まれた人間でも羊でもない『何か』を育てる事になった夫婦が、それによって恐るべきトラブルへと巻き込まれてしまう…という、オカルト風味のサスペンススリラー映画。
劇場での上映当時の予告とかが公開された際に、なかなかに異様な雰囲気だったため気になりつつも未鑑賞だったのですが、この度1月からAmazonプライムで配信開始されたという事ですので新年早々に鑑賞してみましたよ。
映画の内容は、割と予告からの予想通りというか『雰囲気映画』系のサスペンス映画という感じの作品ですね。
もっとオカルトっぽい怖い作品かと思っていたのですが、ノリとしてはオカルトというよりもダークファンタジーのテイストが強い内容で、童話に良くあるタイプの『異種族の子供を育てる話』だったり『異種族婚姻譚』的な作品がベースとなっている印象。
雰囲気映画としてのテイストはなかなかに良い感じで、美しい自然に囲まれた『牧歌的だけど寂しい感じの山間の一軒家』は映像も美しくてロケーションとしても良い感じですし、作中で常に付きまとう『何か良くない事が起こりそうな予感』も不気味で良い味を出しています。
ただ序盤は結構怖そうな雰囲気で進むのですが、中盤辺りからは主人公たちの家族の他に『旦那の弟』が登場したりして、ホラーテイストはなりを潜めて『家族ドラマ』とか『人間ドラマ』が中心になっていく印象。
まあ人間ドラマとしての掘り下げは良く出来ていて、退屈させないように工夫はされているのですが、『主人公(奥さん)と旦那の弟の浮気の話』とかに尺を取られても『そんなんどうでもいいわ、羊人間の方がよほど気になるんや!!』という気分になってしまう部分もあって、ちょっと微妙な印象。
ちなみに羊から生まれてきた『羊人間』は、予告でも殆ど画面に映らずに、作中の序盤ではかなり出し惜しみをされるので『もしかして最後(もしくはラストギリギリ)まで出し惜しみしたまま終わるのか?』と思っていると、中盤辺りからは割と普通に画面に登場するようになるので、予告でモヤモヤしてた人は安心しても大丈夫です。(笑)
(『羊人間』のデザインは割とシュールで不気味な感じなのですが、ずっと観ているとだんだん可愛く思えてくるから不思議。)
なお、お話そのものは基本的には『雰囲気映画』という部分を考慮すると、狙ったとおりの『雰囲気』は良く出せていますし、人間ドラマ部分が意外とシッカリしているので、割と普通に楽しめる内容になっているのは好印象。
ただ、いかんせん『雰囲気映画』だけあってお話の展開が遅くて、特に中盤辺りは話が前に進まなくてちょっと冗長さを感じてしまうのは残念なところ。
また、先述のとおり思った以上にホラー的な要素は薄くて、全体的には『ファンタジーテイストの強い家族ドラマ』みたいな内容ですので、予告での『怖そうな印象』に期待してた場合は肩透かしを喰らわされてしまうかも?
あとラストの展開がなかなかに唐突過ぎて、『えっ、なんじゃそりゃ?』みたいな終わり方なので、その辺も評価の割れる部分かも…
総評としましては、全体的な雰囲気やテイストは悪くない『割と観れるレベルの雰囲気要素強めのダークファンタジー映画』みたいな感じですね。
強く推すほどではないものの、独特な世界観やテイストは面白い作品ですので、予告を観て気になっているのであれば観ておいても良いかもしれません。
とりあえずAmazonプライムに入っている人であれば、特に追加料金も無しで鑑賞が可能ですので、加入していてその手のジャンルが好きであればチェックしておいても損は無い一本だと思いますよ。