NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「デュアル」(50点/サスペンス)

■■■「デュアル」■■■
(50点/サスペンス)


 ある日、不治の病で余命わずかと宣告されたサラは、遺族や恋人の心のケアのために自分のクローンを残す『リプレイスメント(継承者)』という制度を紹介される。


 制度を利用して自分のクローンを残す事となった彼女だったが、クローンと一緒に『引継ぎ期間』を過ごしていたところ、奇跡的に自分の病気が治癒したという事実を告げられる。


 法的に自分とクローンの2人が存在する事は認められていないため、クローンの処分を行う必要が生じたサラだったが、サラのクローンは自分の生存権を主張。


 制度に基づいて、決闘場でどちらかが命を落とすまで決闘するという『決闘裁判』で決着をつける事を迫られる事となってしまうのだった…

 


 不治の病で自分のクローンを残す事となった女性が、病気が完治したせいで生存権を賭けて自分のクローンと決闘する事となる…という、サスペンススリラー映画。


 雰囲気からして、てっきりクローンを題材としたシリアスな感じのサスペンススリラー映画かと思っていたのですが、実際にはかなりハチャメチャな内容のブラックコメディみたいな感じのお話です。


 なにがハチャメチャって、とにかく基本設定が矢鱈と無茶苦茶な印象。


 主人公が原因不明の不治の病と診断されて数ヶ月後に完治するのも意味不明ですし、クローンがわずか数時間で作られて記憶まで継承されているという超技術も謎過ぎます。(そんな簡単に記憶を継承したクローンが作れるなら、機密情報を盗んだり生体認証を突破したり悪用したらやりたい放題じゃないかと…)


 百歩譲って『クローン技術のみ異常に発達した世界』が舞台なのだとしても、『クローンとオリジナルが同時に存在する事となったので、決闘で殺し合いをさせましょう』とはならんでしょう、いったいどんなハチャメチャな国の法律だよ…としか言いようがありません。
 (『クローンに人権を与える』という先進的な人権制度が認められてるのに、2人になったら『決闘で殺し合いをさせる』という、中世みたいな制度なのは流石に意味不明すぎます。)


 とまあ設定がツッコミどころ満載なのはさておくとして、そういう部分を割り切って観るとしたら、まあまあ個性的で面白い設定のお話ですね。


 『二人の自分が決闘する』という設定からして、てっきり『自己の同一性が云々』とか『自分を殺す事への罪悪感が云々』みたいな、サイコサスペンス的なノリになるのかと思いきや…


 『主人公よりもクローンの方が性格が良くて、病気が寛解して健康になった主人公がうとましがられる』とか、なかなか予想外の展開で楽しませてくれます。


 決闘をする事になった主人公の方も『クローンを倒すために戦闘訓練を始めて戦闘マシーンになっていく』という展開もかなりトンデモな感じですし、実際の内容はマジメそうな設定に偽装した『ブラックな内容のハイブロウなコメディ映画』という印象。


 ただ、バカバカしい設定や予想外の展開は面白いのですが、全体的に盛り上がる要素が少なくて作品のテンポが悪いのは気になるところ。


 『主人公とクローンの決闘』を題材とするなら、もうちょっと派手なバトル展開とか見せ場があっても良かった気はします。


 また妙に好戦的な主人公はともかく、クローン側のキャラクターがいま一つ良く見えないのが難点で、『何を描きたいのか判然としないみたいなシーン』が妙に多いんですよね。(終盤の『トラウマを抱えた双子の少女』と出会うシーンとか何か意味があったのか?)


 ネタバレになってしまうのですが、特に意味が良く分からなかったのがオチに関する部分で…


****** ここからネタバレ ******
****** ここからネタバレ ******
****** ここからネタバレ ******


 最終的に『クローンがオリジナルを騙し討ちにした』という感じなのでしょうが、騙し討ちにした後に『オリジナルになりすます』事の意味が分かりません。


 クローン側の人権も認められているんだから、オリジナルを騙し討ちにした後に『オリジナルは行方不明でクローンが不戦勝』という扱いにすれば何の問題も無かったのでは?(家族や恋人もクローンが生き残る事に賛成してたし…)


 それとも自分が何か勘違いしているのか、もしくは見逃している重要な設定(オリジナルになりすまさないとならない理由)があるのでしょうか?


****** ここからネタバレ ******
****** ここからネタバレ ******
****** ここからネタバレ ******


 といった具合で、なんか釈然としない部分の残るスッキリしない映画でしたよ…

 


 総評としましては、それなりに観れるレベルの『独特な設定のサスペンススリラー映画』って感じですね。


 『クローンとオリジナルの対決』という設定に加えて、クローンに嫉妬して殺る気満々になる主人公とか、ちょっと予想外で面白い設定の内容ですので、そういうブラックなノリのコメディ的な展開が好きであれば、意外と楽しめる作品かも?


 ハチャメチャでアバウトな部分が多すぎるため、あまりオススメは出来ないですが、独特のノリやら世界観やらが気になるようであればチェックしておいても損は無い一本かもしれませんよ。