■■■「PANDORA パンドラ エネミー・イン・ウォーター」■■■
(35点/モンスター)
土星の衛星パンドラに生命体の調査に向かった調査隊が、メーデーの発信を最後に音信不通となってしまうという事件が発生。
宇宙局は免疫学者のジェニファーを中心とした救助チームを編成し、10時間後に消滅するワームホールを通って救助へと向かわせる事となる。
救助隊は医療船をパンドラへと降下させて船員の捜索を開始するが、そこで自由に姿を変える『意志を持った水』のような謎の生命体に遭遇。
その生命体は人間の身体の中に侵入して寄生し、その人間を乗っ取ってしまうという恐るべき存在だった…
土星の衛星に生命体の調査に向かった調査隊が、正体不明の寄生型の液体生命体に襲われる…という、SF風味のモンスターパニック映画。
B級映画ファンの間ではお馴染みのアサイラムによる新作で、いわゆる「ボディスナッチャー」とか「遊星からの物体X」とかの『乗っ取り系エイリアン』を題材にしたSFホラーですね。
アサイラムと言えば『便乗映画』とか『パクリ映画』でお馴染みの製作会社ですが、今回は発売時期やらタイトル的にも「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の便乗作品という感じでしょうか?(確かに「アバター」の舞台となっている惑星の名前は『パンドラ』ですし…)
まあタイトルはともかく、内容は「アバター」と全く関連性が無いですし、『土星の衛星に生命体が居るかも?』というのはSF界隈ではよくネタにされるアイデアですし、ハチャメチャすぎない設定とかを含めて意外とマジメに作られたSF作品という印象です。
登場するエイリアンは『自在に動く水』みたいな感じの生物で、スライムというか「アビス」にで出来た宇宙人のインターフェイスというか、いわゆる水のような不定形のモンスターという感じ。
モンスターは当然ながらCGで作られているのですが、特撮はそこそこ頑張っている印象で、モンスターがフルCGの割には人間との絡みもキチンとあるのは悪くない印象。
この手のスライム状の『不定形のモンスター』が低予算映画でも普通に動かせるようになったんだなぁ…って辺りは、やはり時代の進歩を感じさせられますね。
他にも、宇宙船や降下艇のデザインが割と凝ってたり、宇宙服が『低予算の小道具(LEDのテープとか)』を流用してカッコよく見えるように工夫されてたりとか、細かい部分が意外と良く出来ているのは好印象。(まあ宇宙船とかは他の映画からの流用かもしれませんが…)
ただ細かい部分は良い感じなのですが、肝心のストーリーの部分があまり面白くないのは困りもの。
『乗っ取り型エイリアン』という事でサスペンス要素が中心になるのですが、最初から寄生されているメンツが殆ど判明しているせいで『誰が寄生されてるか』とかの駆け引き的な要素は殆ど無くて、途中で微妙な仲間の裏切り要素みたいなのがあるものの宇宙人とあまり関係の無い『なんのこっちゃ』というような唐突な展開で、どうにも盛り上がりません。(一応、寄生生物を『感染症』的な観点から扱うサスペンスっぽい作りにはなってる。)
お話も、基本的に『メチャクチャ狭い降下艇の内部』で進んでいくため、とにかく地味で盛り上がりに欠ける印象。
ホントに『四畳半ぐらいしか無さそうな宇宙船の室内』でお話が展開していくため、『いやこれセット狭すぎて撮影大変だろ、もうちょっと広いセットを作ってやれよ』という何だか悲しい気持ちになってしまいました。
ファーストコンタクトしたばかりの宇宙人が『ロクな対話も無しに、いきなり人類を滅亡させようとするとする』というワイルドすぎる展開も無理がありすぎですし、ストーリーに関しては『もうちょっとどうにかならんかったか?』というのが正直なところ。
でもまあストーリー以外の部分は意外と良く出来ているので、別の意味でどうにも残念に感じる作品でしたよ。
総評としましては、いま一つ盛り上がりに欠ける『微妙な出来のSFモンスター映画』って感じですね。
美術デザインとか悪くない部分もあるのですが、肝心のお話が残念すぎる内容なのでそのためだけに観るのは厳しいかな?
アサイラムだけど内容的にはお得意の『パクリ作品』でもないのでネタ映画としても弱いですし、余程特別な理由でも無ければ普通にスルーしてしまっても問題のない一本では無いかと…