■■■「FPS」■■■
(50点/オカルト)
異常なまでに過干渉な母親から逃れるために引っ越しを決意した元女性自衛官の佐藤スズは、不動産屋である川上の案内で都内の賃貸マンションの物件の内見をする事となる。
物件は素晴らしく申し分のないものだったが、異様に安い家賃に不審に感じた彼女は川上の事情を確認したところ、事故物件では無いものの『前の住人が家賃を滞納したうえに行方不明となった』という『訳アリ物件』である事を知らされる。
不気味に感じつつも部屋を見回っていたところどこからか奇妙なささやき声を聞いた彼女は、声に導かれるように浴室に近づいたところ、いつの間にか『真っ黒い奇妙な液体』の溜まっていた不気味な浴槽に引きずり込まれて意識を失ってしまう。
廃墟のような場所で目を覚ました彼女は、混乱しつつも病院のような巨大な建物の内部を探索してまわるが、その場所で怯え切った男性と遭遇。
彼がマンションから行方不明になった前の住人である山本タカオだと聞かされた彼女は、この場所がとある怪物に支配され、永遠に襲われ続けて永遠に殺され続けるが実際には死ぬことも出来ない『無間地獄のような場所』である事を知らされるが…
とある女性が『前の住人が行方不明になった』という曰くつきの賃貸マンションの内見に訪れたところ、奇妙な異世界のような場所に引きずりこまれてしまう…という、オカルトホラー映画。
「きさらぎ駅」や「リゾートバイト」といった都市伝説やネットロアを題材とした映画を斬新な切り口で描いた作品を撮った事で、邦画ホラーファンの間では割と名前が知られるようになった永江二朗監督による新作ですね。
今までの作品も、割と『ゲーム的な演出』を用いる事の多かった監督さんですが、今回は、最初から最後までゲームのような『主人公の主観視点』で撮影した映像を使うという個性的なコンセプトの作品となっており、タイトルもそのまんまゲームのジャンルである『FPS(First Person Shoooter:主観視点シューティング)』をモジったものとなっています。
お話としては『とある女性が「住人が次々と行方不明になる」という曰くつきマンションに内見に来たところ、奇妙な声に導かれて怪物の徘徊する異空間のような場所へと引きずり込まれてしまい、なんとかしてその場所からの脱出を目指す』というようなストーリー。
『怪物の徘徊する異空間からの脱出』という、ゲームの「バックルーム」のようないかにも『ゲーム的な設定』に加えて、映像が主人公の『主観視点』のみで構成されているという事もあって、コンセプトどおりにいかにも『ゲーム的』な作品という印象。
映像は実際にGoPROのような『ヘッドマウントタイプのカメラ』で撮影されたもののようですが、物陰に身を隠したり、廊下の先を覗き込んだりといったカメラアングルが、いかにも3Dの主観視点ゲームっぽくて楽しいです。
また、怪物は『ドアを締めると入ってこれない』という独自のルールがあったりと、そういった設定自体も色々とゲーム的。
ただ、そこまで『ゲームっぽい設定』にこだわっている割には、お話の進行がそこまでゲームっぽく無くて、お話が『サクサクと進み過ぎる』印象があるのは残念なところ。
映画の尺が60分と短いせいもあるのかもしれませんが、もっと『手がかりを探す』みたいなプロセスや『脱出に必要なアイテムを手に入れる』みたいなプロセスをシッカリと描いて、もっと『ゲームっぽさ』を出して欲しかったです。
でも、主人公が元自衛官という設定のお蔭か、主観視点の格闘シーンが『矢鱈とガチな感じ』なのはちょっと面白かったかも?
あと、終盤の『ちょっと意外な展開』はなかなか面白かったのですが、全体的にアッサリしすぎで薄味な印象があったので、キャラや設定も含めてもうちょっと『濃い内容の作品』が観たかったかなぁ?
今までの永江監督の作品は、無駄に『濃い』作品が多かったので、ちょっと物足りない印象でしたよ…
ちなみに本作は『ゲーム的なテイスト』を押し出して来たような印象ですが、逆にあまり元ネタとなるような都市伝説は思いつかないので、今回はそういった要素はあまり意識してないのかな?(一応は「バックルーム」が元ネタなのかな?)
次回は、出来ればもっと徹底的に『ホラーゲーム的な演出』にこだわった作品を観てみたいところですよ…
総評としましては、独特の演出が目を惹く『そこそこ普通にサクっと楽しめる主観視点ホラー映画』って感じですね。
主観視点の割には画面酔いとかも殆ど感じないですし、コンセプトとしての面白さに興味があれば、チェックしてみても損はない作品でしょう。
ただ、尺が60分と短いうえに全体的にアッサリしたテイストで、ちょっと物足りなさを感じる部分もあったので、急いで観るので無ければレンタル料金とかが安くなるか、どこかのサブスクサービスに入るのを待っても良いかもしれませんよ…