ゲーム感想:「灼眼のシャナ」(PS2)
【総評:6点(10段階評価)】
この世の歩いては行けない隣にある世界「紅世(ぐぜ)」。
その「紅世」からこの世界に現れて、『存在の力』を食らう『徒(ともがら)』達を倒し、世界の均衡を守る使命を帯びた『討滅者(フレイムヘイズ)』の少女と、ひょんな事からその闘いに巻き込まれる事となった一人の少年の戦いを描いた、高橋弥七郎氏原作の学園ジュブナイル風のライトノベルである「灼眼のシャナ」のゲーム化作品です。
…というか、つい先日までアニメが放映されていたので、同名タイトルのアニメのゲーム化作品といった方が分かり易いかな?
ゲームの内容は、原作の主人公でもある坂井悠二の視点を中心に展開される、割とオーソドックスなタイプのアドベンチャーゲーム。
ゲームの最中に突然現れる「コマンド入力」を制限時間内に行う事でストーリーが分岐したり、各章にRPG風の戦闘パートが用意されていたりと、流れに緩急を持たせる事で飽きさせないように工夫がされている点は悪くは無いですが、特別に目新しい程でもありません。
つか、「コマンド入力」は同社の「フタコイオルタナティブ」でもあったのと全く同様のシステムなので、ゲームの企画をした人間が一緒だったりするのかも?
しかも、このコマンド入力に失敗してもストーリーの大筋が変化する事は無く、戦闘パートで戦う相手が変わるといった程度なので、ぶっちゃけた話をすればコマンド入力を全て失敗しても、ゲーム内容にはあまり影響はありません。
RPG風の戦闘パートは、じゃんけん風の駆け引きに距離の概念をプラスしたようなシステム。
システムそのものは割と凝った作りだとは思うのですが、この戦闘パートのルールがマニュアルを読んでも少々分かり辛く、最初の2~3回は何をやったら良いのやらサッパリ分からなかったので、戦闘のチュートリアルぐらいは欲しかった所です。
また一度戦闘に慣れてしまうと、敵の思考ルーチンがそこまで複雑じゃないので殆ど負ける事が無くなってしまうため、飽きるのもちょっと早いかも?
ストーリーは、海水浴に行ったり温泉に行ったりといった感じで、本編には無いタイプのいわゆるファンサービス的な内容。
ファンサービスであるが故にファンならばそれなりに楽しめるとは思いますが、本編の事を全く知らない人がプレイしたら意味が分からないと思うので、アクマでファン向けのソフトといった所でしょう。
まあ、アクマでオマケ的なお話ではありながらも、本編のストーリーや世界観に影響を与えないようにしつつ、ファンサービスを盛り込んだシナリオは、なかなか上手いんじゃないでしょうか?
またアドベンチャーパートの選択しだいでは、原作ではマジメ人間っぽい性格の主人公に、アホとしか思えないような行動を取らせる事が出来るのは何か楽しいです。
(その度に「うるさいうるさいうるさい!!」という、シャナのお約束のツッコミが入るのも、なかなかツボを押さえていますな。)
個人的には、ヒロインの好感度に影響する選択肢に『母さんに相談してから…』とか『母さんに来て貰おう』とかって感じで、イチイチ母親が登場するのがちょっとウケました。
…っていうか、お前はマザコンかよ。(笑)
(※ ちなみに母親を攻略するルートはありません………多分)
ただゲームの内容の方はともかく、最大の不満点はとにかく全体のボリュームが少ない事。
ヒロインによる分岐が2パターン存在するものの、ストーリーは殆ど一本道で1周が5~6時間もあればクリア出来てしまうため、メッセージスキップすれば7~8時間でフルコンプ可能ってのは、いくらなんでも短すぎです。
クリア後のオマケ要素も、ギャラリーとか以外は戦闘パートが自由に遊べるようになるってだけでどうにも物足りないですし、ハッキリ言ってちょっと不満が残ります。
また、グラフィックのレベルも余り高いとは言えず、キャラゲー
(と言うかギャルゲー)としては正直言って微妙な所。
特に男キャラのグラフィックが矢鱈とぞんざいで、田中とかただのオッサンみたいになってるし、シュドナイとか、ダンタリオンとかも『もうちょっとどうにかしてやれよ』って感じだし…
どうせ、いとうのいぢ氏に原画をたのまないなら、中途半端に似せようとするよりも、いっそアニメ版に準拠した絵にすれば良かったのに…とか思うのですが、その辺は大人の事情って奴なんでしょうか?
総評としましては、ファンアイテムとしてはまあ許せるかな?といったレベルのゲームだとは思うのですが、いかんせんコストパフォーマンスが辛いです。
その気になったら、買って来たその日の内に速攻でフルコンプ出来るような内容ですし、コレで2,000~3,000円といった価格ならば良いのでしょうが、ちょっと定価で購入するにはボリューム不足かも…
コレクター的に手元に置いておきたいと感じる程のソフトでもないですし、気になる人でも『中古で安くなったら購入』といった程度で良いのでは無いでしょうか?
TVアニメの放映も終わった直後だし、発売日的には悪くないタイミングだとは思うのですがねぇ。
ちなみに個人的に本作で一番印象に残ったのは…
『灼熱の赤が燃える~この髪この瞳~♪』
という、釘宮理恵のヘボナイス(←誉め言葉)なオープニング主題歌。
いや最近の声優は歌が上手い人も多いですが、声優のキャラソングは、『これぐらいのレベルの方がしっくり来る』とかって感じるのは私だけですかね?(笑)