■■■「サウンド・オブ・サンダー」■■■
(SFパニック/55点)
2055年の未来世界。時間旅行の技術を発明した人類は、その技術を元に6500万年前へと時間を遡り『恐竜狩り』を行うというツアーが大富豪の間で流行していた。
歴史を変えてしまわない為に厳しい監視の下で行われていたツアーだったが、ふとした事故によって一人の人間が過去から『3gの何か』を過去から持ち帰ってしまった事が元で、過去が改変されてしまう…
そして、改変された過去の影響によって地球環境の生態系に生じた変化は、タイム・ウェイブ(進化の波)となって未来世界へと押し寄せ、世界は不気味な怪物が跋扈する恐るべき世界へと姿を変えてしまうのだった。
果たして人類は歴史の改変を食い止め、世界を元の『あるべき姿』に戻す事が出来るのだろうか?
SF&ファンタジー小説の巨匠であるレイ・ブラッドベリによるタイムトラベルを扱った短編である「雷のような音」をベースとしたSFパニック映画。
本作の原作は、いわゆるタイムパラドックスを元ネタとしたSFで、過去で誤ってある生き物を殺してしまった事により、その影響の積み重ねによって『未来の世界が全く別の姿になってしまう』…というアイデアを元に描かれています。
『過去で生き物を殺したら歴史が変わってしまう』というのなら、それこそ恐竜狩りなんかしたらマズいだろう…と思う訳ですが、そこは『もともと、その時間にその場所で死ぬ予定だった恐竜を殺す』事で、『歴史を変えない様にしつつ恐竜狩りを楽しむ』という上手い設定が考えられています。
ちなみに原作の小説は相当に短いお話で、『過去に恐竜狩りに行った男性が、未来に帰ってきてみたら世界が全く別の世界になっていました』という所でお話が終わっており、本編で言うと冒頭の40分程度の内容となるので、原作と言いつつも7~8割がたはオリジナルのお話と言ってしまって良いかも?
逆に言うと、『3割はSF』なんだけど『7割はSF風味のモンスターパニック映画』になっちゃってるので、原作ファンからすれば微妙な所かもしれませんが、あまり深くに考えなくても楽しめる作品になっているとも言えるでしょう。
さて、「エンド・オブ・デイズ」のピーター・ハイアムズ監督やらシド・ミードの未来世界デザインやらで、結構鳴り物入りで宣伝されていた本作なんですが…
結構良く作られているシーンもありながらも、シーンによっては何故かやたらとCGがチャチだったり合成モロバレだったりで、やたらとB級映画臭いシーンもあったりします。
『何でこんな事に?』と思いきや、何でもこの映画撮影の途中で映画のプロダクションが倒産する…等と言った紆余曲折があって作られた映画だそうで、妙にシーンごとに完成度にバラつきがあるのも納得です。
ストーリーに関しても、ブラッドベリの原作が書かれた頃には斬新だったにせよ、今となってはむしろありきたりなネタといった感じでもありますし、ハッキリ言って『鳴り物入りの宣伝文句』を信じて期待して観ると、ちょっとガッカリするかも?
ただ、逆に変に期待をせずに『B級のSF生物パニック映画』として観た場合は、それなりに楽しめる内容で…
歴史の変化によって『有り得ない姿に進化した不気味な怪物の大群』が跋扈する未来世界やら、『タイム・ウェイブ(進化の波)』という分かり易い形で歴史の変異を描いた見せ方なんかは、普通に映像的にも観ていて面白いです。
総評としましては、まあイロイロとツッコミどころ満載な内容ではありますが、B級映画と割り切って鑑賞するならば、割と普通に楽しめる1本と言えるでしょう。
大作として期待して観るよりも、むしろキワモノの『B級SF映画』とか『生物パニック映画』が好きな人ならば結構オススメかな?
あと設定の方も、特に『原作には無いオリジナルの部分』にツッコミどころが満載ですので、ツッコミ大好きな『バカ映画』好きの人でも楽しめるかもしれませんよ。(笑)
(特に『6500万年前に戻って歴史の変化を食い止めなくても、タイムトラベルの直前に戻って出発を止めれば良いんじゃ?』とか思ったのは私だけ?)