■■■「D.D.T.」■■■
(生物パニック/55点)
USDA(アメリカ農務省)の調査官であるマディは、国防省の要請により農務省の研究所内で極秘の生物の遺伝子操作実験が行われている事を知る。
それは、ヨーロッパのイナゴとアメリカのイナゴを掛け合わせて作られた、強力な農薬であるD.D.T.に対して耐性を持ち、通常のイナゴの4倍のスピードで繁殖すると言う変異種だった。
この実験が国家に対する脅威となり得ると判断したマディは、即座に実験を中止しイナゴを焼却処分とし、研究の責任者であるダン教授の解雇を決定する。
しかし焼却処分の際に、研究の成果が失われる事を恐れた国防省の人間が密かに数匹のイナゴの持ち出そうとするが、事故によりイナゴ達は逃走してしまう。
そして1ヵ月後。
恐るべき勢いで繁殖した変異イナゴは恐るべき大群となり合衆国の空を覆いつくし、このイナゴの群れによって米国は未曾有の危機に晒される事となるのだった…
凶暴化したイナゴの大群による『恐怖』…というか『脅威』を描いた生物パニック映画。
最初にタイトルを聞いた時に一瞬『D.D.T.って何だよ?』とか思ったのですが、日本でも戦後しばらく使われていたけど人体への影響から使用禁止となった強力な殺虫剤の事ですな。
ちなみにこの「D.D.T.」、本編で名前こそ出てくるけどストーリーには殆ど関係なく、別に殺虫剤の影響で生物が凶暴化した…とかって話ではありません。
お話の方は、何と言うか絵に書いたようなテンプレートどおりの生物パニック映画で、突如出現したイナゴの大群の脅威と、それに対策する為に主人公達が東奔西走してイナゴと対決していく…といった感じのお話なのですが…
テンプレートどおりの作りながらも、作品全体のテンポも良く謎解きプロセスも面白くて、ごく普通にパニック映画として楽しめる作りになっています。
特に『イナゴの進行ルートを予想しながら対策を講じていく』という展開や、『イナゴを殲滅するための作戦が国家を挙げた一大プロジェクトへと発展していく』という展開は非常に熱く、『ゴジラVS防衛軍』みたいな怪獣映画風の対決のノリで観ててごく普通に面白い映画に仕上がっているのは上手いところ。
ただ、『生物パニック映画』といってもホラー映画としての訴求力はあまり強くなく、特にイナゴはもともと『作物を食い荒らす物』であって、基本的には『人間を取って食う』訳では無い(エサが無かったら口に入るものは何でも食べるけど)ので、いくら大群が攻めてきてもそこまで差し迫った危機感は無くて、イマイチ緊張感に乏しいのは辛い所。
本作は生物パニックとは言いながらも、イナゴの大群という『自然災害』を描いた映画といった趣きが強くて、構成的には大昔にあった「スウォーム」という殺人ミツバチの大群を描いた映画に雰囲気が似てるかも?
全体的に低予算ながらも非常に良く出来ている作品だと感じたのですが、ちょっと惜しいと思ったのは、予算の都合からかラストの『対決』シーンにスケール感が乏しく、イマイチ『国家を挙げた一大プロジェクト』という感が乏しい事。
展開が非常に熱いノリなだけに、ハッタリでも良いので『何万人もの軍隊が国を挙げて対策に当たる』みたいな巨大なスケール感を感じさせるシーンが欲しかったです。
総評としましては、生物パニック映画や自然災害もののパニック映画が好きな人にはごく普通に進められるレベルの良作のB級映画だと思います。
特に主人公達が対策本部を設けて脅威と対決していく…という『対決もの』っぽいノリが好きな人ならば、間違いなく楽しめる一本でしょう。
逆にホラー映画っぽい側面は非常に弱く、恐さはあまり感じられない(虫がいっぱい出てくるので虫が嫌いな人には、ある意味で『恐い』かもしれませんが)ような内容なので、ホラー的な要素を期待している人はスルーした方が良いかも?
個人的には、近年に無い久々に観るタイプの生物パニック映画だったので、なかなか楽しむ事が出来た一本でしたよ。