NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「愛しのジェニファー/ダリオ・アルジェント」<マスターズ・オブ・ホラー>(75点/フリークスホラー:オススメ)

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■■■「愛しのジェニファー/ダリオ・アルジェント」<マスターズ・オブ・ホラー>■■■
(75点/フリークスホラー:オススメ)

 刑事のフランクは、ある日の張り込みの最中に偶然に一人の中年男性がブロンドの少女を肉切り包丁で惨殺しようとしている現場に出くわす。
 フランクは男を止めようと説得するが、男は説得に応じず少女を殺そうとしたため、やむなく射殺してしまう。

 彼のお陰で少女は無事に保護されるが、少女は酷いフリークス(畸形)である上に精神に障害があるため口もきけず、ジェニファーと言う名前以外は身よりも全く分からないため、精神病患者の保護施設へと収監される事となってしまう。

 少女の事を哀れに思ったフランクは、彼女の住む場所が見つかるまで、彼女を一旦わが家へと引き取る事とするが…


 ぎょわぁぁぁ!! なんじゃコリャーー!!
 いや、久々にエラい物を見せられた気がしますよ!!

 世界的に有名なホラー監督が競演する「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズよりダリオ・アルジェント監督による、畸形の少女を題材としたフリークス物ホラー。

 ダリオ・アルジェントといえば、ホラーファンの人には今さら説明の必要も無いぐらいの、サスペリアフェノミナという美しさとグロの混在するフェティッシュ作品で有名なホラーの鬼才ですが、最近はホラー自体をあまり撮っておらずファンとしては寂しい限りだったため、久々のホラーの新作と言う事で期待してたのですが…

 いやはや、久々の『アルジェント節全開!!』といった感じの、予想以上にとんでもない作品を撮ってくれました。

 アルジェント監督といえば、美少女に容赦の無いサディスティックな仕打ちを行う『美少女』と『グロ』というのが持ち味ですが…
 本作のジェニファーは、『体は超ナイスバディ』なのに『顔は醜く不気味なフリークス(畸形)』という、アルジェント作品のテーマを一人で体現しているかのような存在。
 しかも、このジェニファーがフリークスのクセに、妙にセクシーでどこか可愛いのですよ…

 そして、このジェニファーによって人生を狂わされていく主人公の姿がどことなく滑稽で…

 主人公とジェニファーを取り巻く関係の、『醜い』んだけど『美少女』『怖い』んだけど『エロティック』という、なんとも相反するような要素が混在しあい妖しくフェティッシュな魅力全開に描かれている所は、まさに変態趣味フルスロットル(←誉め言葉)といった感じで、流石はアルジェント!!と唸らされてしまいましたよ。

 お話の方も、全く救いの無さそうな『もう恐いので勘弁して下さい』って感じのストーリーながら、ついつい先が気になって、思わずお話に惹き込まれてしまいますし…
 アルジェントの映画ではお馴染みの、「ゴブリン」のクラウディア・シモネッティによる幻想的な中にもスピード感と迫力のある音楽もファンには嬉しい所。

 若干の不満点を上げれば美術やデザインに関しては、やはりサスペリアフェノミナの頃に感じられたような幻想的な感覚は無く、割と最近に撮られた作品に観られるような『現実的なリアリティのある映像』に終始してしまっているのは、ちょっと残念な所。

 監督の趣味が変わってしまったのか、はたまた表現の手法が変わってしまったのか…
 まあ映像機器の進化から、今時の鮮明な映像で『原色バリバリのライティング』とかってのは変に見えるでしょうし、逆にあの頃は少ない予算の中で映像を美しく魅せる為の工夫だったのかもしれませんが、やはり昔からのファンとしては、もっとあの頃のようなフェティッシュな絵作りも見せて欲しいなぁ…と思いますね。

 総評としましては、久々に『往年からのアルジェントのファンでも納得出来る作品』と言えるレベルの映画だと思います。

 かなりの悪趣味っぷりから、結構観る人を選ぶ作品だとは思いますが、とりあえず現状で観た「マスターズ・オブ・ホラー」の作品群の中では、個人的に一番のオススメ作品ですので、アルジェントのファンならずともホラーファンなら是非とも観ておいて欲しい所でしょう。