■■■「ダンス・オブ・ザ・デッド/トビー・フーパー」<マスターズ・オブ・ホラー>■■■
(40点/ゾンビ映画(?))
近未来、第三次世界大戦の影響により核によるテロが横行し数百万人を超える死者を出し、NYやロスを含む7大都市は廃墟と化して文明が瓦解し荒廃しきったアメリカ合衆国。
戦争により夫を亡くしたケイトは、17歳になる娘のペギーと共に喫茶店を経営し切り盛りしていた。
人間の血が商品として売買されるようなモラルの荒廃した世界でケイトは娘に厳格な教育を施し、娘を決して不良の溜まり場等に近づけないように厳しい教育を施していた。
しかしそんなある日、彼女達が経営する喫茶店に4人の不良グループが来店。
不良グループにありながら、紳士的な振る舞いを行うジャックという青年に惹かれたペギーは、母親の言いつけを破って、ジャックに誘われるままに深夜のドライブへと繰り出していく。
深夜のハイウエイを猛スピードで駆け抜けながらドラッグを初体験しハイになった彼女は、ジャック達と共に過激でアンダーグラウンドなショーを行う『破滅の館』と言うナイトクラブへと案内されるが…
そこで「ルーピーダンス」と呼ばれる死者のダンスを観た彼女は、信じられないような驚くべき真実を目にするのだった。
世界的に有名なホラー監督が競演する「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズよりトビー・フーパー監督による荒廃した近未来社会をモチーフとしたゾンビ映画。
トビー・フーパー監督と言うと、泣く子も黙る史上最恐ホラー「悪魔のいけにえ」の監督としてあまりにも有名ですが、他にも「スポンティニアス・コンバッション/人体自然発火」とか「レプリティア」といった佳作ホラーやら、「ファンハウス/惨劇の館」とか「スペースバンパイア」といった微妙な感じの作品もチラホラ…。
ハッキリ言ってしまうと、本作はむしろ『微妙』な方かなぁ?
この監督の作品って、特徴として『非常にパワフル』なのと同時に『説明不足で分かり難い』と言った事が上げられて、その結果として『パワフルさがストーリーの不明瞭さを圧倒した時』に傑作ホラーになる事が多い訳ですが、本作では残念ながら『説明不足』の方が上回ってしまっているんですよね。
本作はストーリー的に『謎を後半に引っ張る』ような演出を取ってるのですが、ただでさえ説明不足で難解(ストーリーが難解なのじゃなくてアクマで説明不足で難解)なフーパー監督の作品でソレをやられるとホントに意味が分からなくて、前半の40分ぐらいはストーリーがサッパリ理解できずに困ってしまいます。(60分しか尺が無いのに…)
タイトルになってる「死者のダンス」も『え、そんなもん?』って感じで肩透かしですし、そもそもゾンビ映画っぽいタイトルになっている物の、ハッキリ言って本作をゾンビ映画と言ってしまって良い物か?も難しい所。
『現代アメリカのモラルの崩壊』やら『テロリズムの脅威』に対する風刺やらといった描きたい事は分からなくは無いですし、ラストのブラックなオチは悪くは無いのですが、そこまで辿り着くのが長すぎで正直言ってダレます。
まあ、クラブ『破滅の館』のオーナー役のロバート・イングランドの怪演はなかなかの見ものですが、それだけではちょっと見所が少なすぎるかなぁ…
本作はオリジナル作品という訳ではなく、元々がリチャード・マシスンの短編小説が原作となってるらしいので、ちょっと原作に引きずられ過ぎちゃったのかも?
総評としましては、フーパー監督の作品としてはどうにもパワー不足の感が否めない、正直言って『難解なだけで微妙な作品』です。
この監督はイキオイのある時はホントに凄いので結構期待してたのですが、期待してただけにガッカリ感も強いかも?
むしろ『殺人鬼やらモンスターやらにひたすら追っかけまわされるような作品』を撮ったら世界一の監督なので、そっち方面で勝負して欲しかったなぁ…