■■■「変態男」■■■
(65点/サスペンス:オススメ)
ベルギーの田舎町で家具店を経営するジョージは、高速道路をドライブ中にとあるカップルと諍いを起こし、喧嘩の末に男性の方を殺害してしまう。
殺人事件の発覚を恐れたジョージは所有する山小屋の庭に男性の死体を埋め、家族には秘密で女性を山小屋へと監禁する。
しかしある日、女性が山小屋から逃走を図った事から、彼は偏執的なまでに事件の発覚を恐れる余りに『その女性を車のトランクに入れて持ち運ぶ』という、なんとも奇妙な生活を送るようになるのだった…
一人の『生活に疲れた中年男』の悲哀と転落を描いた、ベルギー製のサスペンスドラマ。
「変態村」に続く、ユーロサスペンスの『変態シリーズ』(どんなシリーズだよ…)第2弾として発売されたタイトルという事で、どんな変態っぷりが描かれてるのかと思いきや…
いやいやどうして、「変態村」に比べると全然普通で『変態』っぽく無いです。
確かに、意外な方向性を秘めて『ちょっと風変わりな作品』ながらも、なかなかに良質なサスペンスドラマでしたよ。
…っていうかこの映画、少なくとも「変態男」なんてタイトルを付ける程に変態チックな話じゃ無いですよ。
主人公は、確かにちょっと偏執狂的な部分はありますが変態って程じゃないですしね。
(まあ、本編の流れと殆ど関係ない所に、若干名の『変態』が出てきますけど。(笑))
ちなみに、本作は可能ならば『内容を全く知らずに観た方がより楽しめる』タイプの映画だと思いますので、本作を是非観たいという方はこの先を読まずに鑑賞する事をオススメします。
<以下、大きなネタバレは無いですが、純粋にこの作品を楽しみたい人は読まない方が良いでしょう。>
お話としては、『とある中年男性が、ふとした弾みから一人の女性を監禁しながら生活を送らなければならなくなる』といった感じの、シチュエーションスリラーっぽい展開なのですが…
ストーリーの序盤は映画を観てる人間にも状況が分からない部分が多く、なんとも緊迫したシーンが続くため、『緊張感溢れる恐ろしいサスペンスドラマ』かと思いきや…
主人公の性格や、その周辺のキャラクターの関係がしっかり描かれる中盤以降からは、あたかも『なんとも物悲しい悲哀に満ちた人間ドラマ』や『ややアブノーマルな恋愛ドラマ』といった感じのテイストも感じさせるような、なんとも変化球的な展開となり、意外な方向性で視聴者を楽しませてくれます。
スローテンポで派手さも無く、はっきり言ってあまりサスペンスらしくない作品ながらも、ストーリーを追う内に『主人公やヒロインに対する認識が変わって行く』事で、同じようなシーンを観ても物語の見え方が全く変わってきてしまうという、ある意味でミステリーよりも『不思議な感覚』を味わえるというのは、サスペンスとしては非常に面白い切り口だと感じました。
ただオチに関しては、ある意味『賛否両論ありそうだなぁ』と感じる部分もあり…
ここからは超ネタバレになるので、以下に隠し文字で記載しますが…
******以下ネタバレ開始 ******
******読む場合は、文字を反転表示して下さい。******
個人的には、本作はハッピーエンドよりもバッドエンドにした方が相応しかったんじゃないか?と思います。
確かに中盤から、主人公とヒロインの間に奇妙な信頼関係が生まれている雰囲気はありましたが、こんな唐突なハッピーエンドを準備されても、何か『キツネにつままれたような気分』ですよ…
まあ、ある意味でブラックユーモアに溢れる『人を食ったようなオチ』こそが、この監督の狙いなのかもしれませんが…
でも、どうせ映像特典でオチを2種類用意するなら、物悲しい結末の『バッドエンド版』も用意しておいて欲しかったですね。
******ネタバレ終了 ******
******ネタバレ終了 ******
総評としましては、無茶苦茶イロモノっぽい邦題の割には、内容的には割としっかりと作られた良質なサスペンス映画です。
確かにサスペンスとしては結構変化球ですが、なかなかに意外な方向性と魅力を秘めた作品だと思うので、『変なタイトルから内容が気になってる人』や『サスペンスが好きな人』なら、ごく普通に観ておいて損は無い映画と言えるでしょう。
「変態村」みたいに滲み出るような『変態』らしさやキモさは無いですが、映画の内容としては結構オススメの一本ですよ。