■■■「ブラック・ダリア」■■■
(60点/サスペンス)
元ボクサーの二人の警官バッキーとリー。
警察の資金集めの為のボクシングの親善試合をきっかけに意気投合し、共に特捜課へと勤務する事となった2人は、敏腕刑事として数々の難事件を解決していた。
しかしそんなある日、ロサンゼルスのダウンタウンの空き地で、腰の部分で胴体を分断されて内臓を抜き取られた若い女性の遺体が発見される。
遺体の主は「ブラックダリア」の愛称を持つ女優の卵で、バッキーとリーの2人はこの怪事件を解決する為に調査を開始するが、やがて事件の捜査線上から浮かび上がるハリウッドの裏事情に2人は翻弄されていくのだった…
1940年代に北米で実際に起こったという、迷宮入りの猟奇殺人事件に着想を得たベストセラー小説を原作とした、ブライアン・デ・パルマ監督によるサスペンス映画。
最初に『非常にストーリーが難解で複雑な話』という事は聞いていたので、どんなややこしい話かと思いながら観たのですが…
いや、確かにコレは難解です。
と言っても、ストーリーそのものはそこまで複雑ではなく割とスッキリしてるんですが、とにかく『人間関係がやたらと複雑』で、お話を追うよりもそちらの理解の方がよっぽど難しくて、人間関係がイマイチ理解出来ないせいで『ストーリーが分かり難い』というよりも『訳が分からないままに話が進んでいく』…という感じですね。
何でも、ストーリーは非常に原作に忠実に作られているそうですが、2時間枠にこのストーリーとキャラクターの人間関係を無理矢理収めてしまったのは流石に詰め込みすぎの感が拭えません。
いっそTVシリーズにでもして、もうちょっと時間をかけて人間関係を描くなり、本編で重要で無い部分を思い切ってバッサリと切り捨てて短くまとめるなりの処置が必要だったんじゃないかと思います。
全体的に40年代を意識しフィルムノワールっぽい映像の作りになっているせいもあって、いつもの長廻しを多用して過剰に緊張感をあおるような『デ・パルマ演出』があまり感じられなかったのは残念な所。
序盤のボクシングの試合のシーンや、銃撃戦の手前の俯瞰カメラで建物の向こうを写すシーンとかのように、シーンによっては『いかにもデ・パルマ監督』って感じのシーンもあるのですが…
とにかく映像が全体的におとなし目で、登場人物の人間関係や心理描写のシーンに重きが割かれてる事もあって、最初は一瞬『あれ、この映画ってディヴィット・リンチの映画だっけ?』とか思ってしまいましたよ…
やはり、デ・パルマ監督はこういう『小難しい感じの設定の映画』よりも、いかにもイロモノっぽい殺人事件を過剰な演出で盛り上げまくるという、『ケレン味の効いたB級っぽい作品』の方が向いてると思う…ってのは、流石に言いすぎでしょうか?
総評としましては、話そのものはツマんない訳では無かったんですが、全体的に『もうちょっとどうにかならなかったのか?』ってのが正直な所です。
話題になっていたので期待して観た割には、ちょっと肩透かしな感じかなぁ?
「殺しのドレス」や「ミッドナイト・クロス」みたいなノリを期待する、古くからのデ・パルマ監督のファンにとっては、どうにも物足りない感じの映画になってしまっているのが、ちょっと微妙な感じですねぇ…
別に原作に忠実なのも良いんですが、個人的にはもうちょっと『デ・パルマ監督らしさ』が欲しかったと感じたのは、私だけですかね?