■■■「遺体安置室~死霊のめざめ~」■■■
(50点/モンスター)
父親を失い、母親だけで家計を支えていかねば成らなくなったドイル一家は、仕事が貰えて且つ屋敷がタダで借りられるという好条件から、カリフォルニアの片田舎の街で墓地の管理人、兼、葬儀屋を開業する事となる。
最初は古びた葬儀屋の不気味な概観や墓地に難色を示しつつも、なんとか田舎での生活にも馴染んできた家族たちだったが…
ある日、彼らの以前にこの葬儀屋に住んでいたというファウラー一家が、畸形の息子のボビーによって皆殺しにされて、息子は未だに地下の霊廟のどこかに身を隠して生き延びているという不気味なウワサを聞かされる。
最初は単なるウワサと取り合わなかった彼らだが、やがて彼らの管理する墓地に深夜に訪れた不良たちが、そのまま行方不明になるという怪事件が発生し…
「悪魔のいけにえ」で有名なホラー映画界の第一人者であるトビー・フーパー監督による、ゾンビ風味のテイストが漂うモンスターホラー映画。
と言うわけで、久々にトビー・フーパー翁による新作ホラー映画です。
80年代の往年のホラーブームを支えたホラー監督たちが、次々と作品を撮らなくなっていく昨今で、昔ほどのパワーは無くなったとは言え『生涯現役』とばかりに新作を録り続けてくれるフーパー監督はホラーファンにとっては心強い限り。
本作も傑作とまでは行かないもののソツの無い作りで、とりあえずは安心して観れるレベルの作品に仕上がっています。
一応、ジャンル的にはタイトルからしてゾンビ映画という雰囲気ですが、厳密な意味でのゾンビ映画とは微妙に違って、ソンビ風味のモンスター映画といった感じの作品です。
本作でとりあえず感心したのは、序盤のゴシックホラーかと思うような不気味な雰囲気の盛り上げ方の秀逸な点で、最初に主人公たちが引っ越してくる屋敷がこれ以上無いぐらいまでに不気味で陰鬱に描かれており…
『こんな家、たとえ一家離散の危機に瀕してても絶対に棲みたくないよ!!』
と思ってしまうぐらいの異様な空気をかもし出している点。
…で、『序盤からこんなに不気味なのに、どんな怖い展開になるんだろう?』と思って観てたら、中盤からは、ごく普通の青春スラッシャーホラーっぽいテイストのある作品になってしまって少々肩透かし。
本編の方は、雰囲気作りやプロットの描き方は流石に上手いのですが、物語の序盤が『事件が起こりそうで、なかなか起こらない』という展開が続くため、ちょっとだけ冗長な印象を受けます。
まあ事件がひとたび起こった後は、いつものフーパー監督らしい『ジェットコースタームービー的な展開』で、怒涛のように話が進んでいくので退屈はしませんし、フーパー監督お得意の『ミイラ化した死体が満載の部屋』とかも相変わらず登場して、ファンならニヤリとさせてくれます。
唐突すぎる『えっ、コレで終わり!?』的な結末も、いかにもフーパー監督らしくて、ツッコミどころも少なく無いながらも、B級映画としては普通に『そこそこ楽しめる作品』には仕上がっていると思いました。
ただ、個人的に最も不満だった点を上げるとすれば、メインとなるモンスターである『ボビー・ファウラー』青年は色んな意味で結構良い味を出していたキャラだと思ったのですが、このキャラが本編に『余りにも出番が少ない』のは惜しかった…
せっかく良いキャラなんだし、彼の活躍シーンが多くなれば『もっと話に深みが出ていた』気もするので、もうちょっと出番があっても良かったのでは?
総評としましては、氏の監督作品としては特にコレという程の特徴のある作品でも無いですが、全体的に『非常にソツ無くまとまったB級ホラー映画』といった感じの作品です。
まあ特徴が無いという事は悪く言えば『可も不可も無い作品』と言う事ですので、トビー・フーパーの新作という事で過剰な期待を寄せてると、ちょっと肩透かしを食らうかも?
強くオススメというほどでは無いですが『手堅くB級ホラーを楽しみたい人』ならば、とりあえず観ておいても損は無い一本だと言えるでしょう。