NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「男が女を殺すとき/ジョー・ダンテ」<13 thirteen ~マスターズ・オブ・ホラー2~>(65点/SFホラー)

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■■■「男が女を殺すとき/ジョー・ダンテ」<13 thirteen ~マスターズ・オブ・ホラー2~>■■■
(65点/SFホラー)

 アメリカ南部の街で、1000人を超える人間が殺害されるという凶悪事件が発生。
 事件の共通性は被害者は全員が女性で加害者はごく普通の男性たちだと言う事。

 加害者の男性は口を揃えて『神の声が聞こえた』と述べるため、最初は狂信的なカルトの犯罪かと思われたが、やがて、この『謎の女性殺害事件』はアメリカ南部のあらゆる街や世界中の各地でも発生している事が判明する。

 政府の調査チームは、何らかの原因によって惹き起こされたホルモンの異常が『男性の性衝動を攻撃性に転化させている為』ではないかと推測し、この正体不明の感染症を食い止めようとするが…


 世界的に有名なホラー監督が競演する「マスターズ・オブ・ホラー」の2期シリーズである「マスターズ・オブ・ホラー2」より、ジョー・ダンテ監督によるSF風味のホラー映画です。

 ジョー・ダンテ監督というと、一般的にはグレムリン、ホラーファン的にはハウリングやら「ピラニア」やらの監督として有名な方ですが、今回は『正体不明の感染症によって男性がすべからく女性を殺そうとするようになる…』という謎の現象を描いた、ちょっとSF風味なホラー映画という感じの作品です。

 前シリーズの「マスターズ・オブ・ホラー」では「ゾンビの帰郷」という政治批判やブラックユーモアの効いた作品で楽しませてくれましたが、本作も『家庭内暴力』とかの暗喩を含んだブラックなネタは随所に見られるものの、前作に比べると非常に大人しい普通のホラー映画っぽい作品になってますね。

 まあ、前作が余りにも『飛び道具的な一発ネタ』だった訳ですが…

 しかし、比較的普通の作品になったとは言え、腐ってもジョー・ダンテ!!
 作品全体の完成度もさておき、やはり目の付け所が面白いですね。

 ごく普通の男性たちが本人に何の自覚も無いままに『ある日突然、当たり前のように女性を殺すようになる』という設定で、まるで『朝起きて顔を洗う』という日常の瑣末事をこなすかのように『淡々と女性を殺害する』という、全く狂気を感じさせない恐怖がたまりません。

 設定の面白さに加えて、作品の構成も非常にスピーディで退屈させませんし、所々に含まれるブラックユーモア(ゲイの男性は症状を発症しないとか)もなかなか笑わせてくれます。

 ただ、元々もっと尺の長い映画向けのアイデアとして考えていたものなのか…お話全体がやたらと駆け足で、全体的にブツ切り感があり『ダイジェスト版』でも見せられているような気になるのは少々残念な所。

 ヒロイン(主人公)と旦那との関係とかも、もっと尺が取れれば深みのある面白い内容になっただろうし、ラストもちょっと投げっぱなし風なオチですし…

 コレは出来る事なら、ちゃんとした90~120分の長尺版で観てみたかった作品だなぁ。


 総評としましては、流石に巨匠と呼ばれる監督の作品だけあって全体的に完成度が高く素直に非常に面白いと感じられる作品です。

 唯一の不満点は、先述したとおりに『尺の長さ』にまつわるものなので、そこはどうにかならなかったもんか…というか、むしろ『完全版』でも撮り直して欲しい所ですなぁ。

 尻切れトンボなオチを許容できる人なら普通に楽しめる作品だと思いますので、ビデオ化された際には十分にオススメ出来るタイトルだと言えるでしょう。

 新シリーズの中では、間違いなく『当たり』の一本ですね。