■■■「グッバイ・ベイビー/ジョン・カーペンター」<13 thirteen ~マスターズ・オブ・ホラー2~>■■■
(60点/モンスターホラー)
中絶専門の婦人科医院に勤める医師のオシェイは、車での通勤途中に森の中の道路でアンジェリークという少女と事故を起こしそうになる。
少女の身体を心配した彼は彼女を病院まで搬送し、病院で検査を行うが彼女は妊娠している事が判明。
しかし少女は、「この子供は得体の知れない『何か』の子供だから中絶したい」と謎の申し出を行う。
オシェイは少女の申し出に戸惑うが、やがて少女の父親で過激な中絶反対運動の活動家として知られるのドゥエインらが病院に訪れ、武装した彼らは『娘のお腹にいる子供は神の子だから殺してはならない』という奇妙な要求を突きつけてくるのだった…
世界的に有名なホラー監督が競演する「マスターズ・オブ・ホラー」の2期シリーズである「マスターズ・オブ・ホラー2」より、ジョン・カーペンター監督によるモンスターホラー映画です。
ジョン・カーペンター監督というとB級ホラーの第一人者とも言われるぐらいにB級ホラーが得意な監督で、ホラーファンではその名を知らない人はあまり居ないと思いますが有名どころでは「ハロウィン」やら「遊星からの物体X」とかを撮った監督さんですね。
前シリーズでは、シリーズ中で1~2を競う完成度の「世界の終わり」という非常にテーマ性の強い作品を撮ったのですが、今回はどっちかっていうとエンターテイメント向けである意味『いつものカーペンターらしい作品』になったイメージですね。
ただこの傾向はカーペンター監督に限った話ではなく、「マスターズ・オブ・ホラー」のシリーズを続投している監督は、1回目はテーマ性の強い作品、2回目はエンターテイメント向けの作品といった感じで撮っているパターンが多いようです。
本作は、序盤は娘を取り返そうとする父親や妊娠中絶の話が出てきたりとちょっと地味な印象で、『普通のサスペンスホラーっぽい展開なのかな?』と思いきや…
中盤から、かなりトンデモない展開に突入して『いったいどうやって収拾をつけるんだ?』とか思ってたら、終盤の展開とかはあまりにも凄すぎて逆に笑いましたよ。
いやはや、こういう無茶苦茶な展開を力技でねじ伏せてしまえる辺りが、流石はベテラン監督だなと感心しました。
作品のノリ的には、カーペンター監督の中期(B級ホラー連発)していた頃のノリといった感じの内容で、氏のファンなら「パラダイム」とかのノリを想像したら割とシックリ来るかも?
氏が『イキオイだけで作品を撮ってた頃』に撮られた作品の簡易版って感じの作品ですね。
他にも「物体X」的な合成怪物が登場したりと、古くからのカーペンター監督のファンならニヤリとするような部分もあったりするのですが…
まあ本シリーズを観てる人なら、その手の仕込まれた『ネタ』を理解できる人も多いと思うので、こういう楽屋オチ的なネタもアリかな?
いやはや、ホラーファン的には色んな意味で『楽しめる映画』には成ってると思います。
残念な点は他の作品でもあった話になりますが、全体的に尺が足りなかったのか説明不足の感はあって『少々強引に話を詰め込んだかな?』と思える部分がある所。
ただ本作の場合は、90分のフルの尺じゃなくても『あと10分ぐらいの尺があればもっとしっかり話が描けた』と思うので、ホントに『もうちょっと…』って感じなんですよね。
総評としましては、内容としては『面白い作品』というよりも『楽しい作品』と言えるような映画です。
前シリーズの「世界の終わり」に比べると特筆すべき程のインパクトはありませんが、あまり深いことを考えずに単純に『ホラーを楽しむだけ』ならば十分に楽しめる作品だと思うので、カーペンター監督のB級ノリが好きな人なら、間違いなく観ておいて損は無いでしょう。
あと、結構なネタバレになるので隠し文字にて記載しますが…
***ネタバレ開始***
本作って、やたらとゴツいモンスターが登場する割には『モンスターが人を殺すシーン』は全く描かれて無いんですよね。
そう考えると『ホントにモンスターによる被害者は出たの?』とも思える訳で、ラストでモンスターが子供を殺されてアッサリと引き返すのも、逆に妙に物悲しいものを感じさせる内容で何か納得。
となるとあのオチは、非常に『シニカルな笑い』がこみ上げてくる内容になると踏んだ訳ですが…皆さまは、どう感じられたでしょうか?
***ネタバレ終了***
そんな感じで、ラストのオチとかも含めて非常にカーペンター監督らしい、なんとも人を食ったような作品でしたよ。