■■■「烏 -KARASU-」■■■
(55点/生物パニック)
アメリカの片田舎の町で保安官を勤めるウェインは、土曜日の早朝に町外れの牧場で牧場主のラルフが変死しているとの通報を受け、現場に駆けつける。
ラルフの死因を調査する彼は、クライドというバスの運転手が自動車の修理中にカラスの大群に襲われたという話を聞き、最初は半信半疑だったものの、やがて町の各所で同様の事件が発生している事を知る。
彼は住民に自宅から外へと出ないように警告を発するが、やがてカラスの大群は町の中心部へと来襲し…
タイトルまんまですが突如として凶暴化したカラスの大群が人間を襲うという、生物パニックホラー映画。
タイトルやパッケージやらが、あまりにアルフレッド・ヒッチコックの「鳥」を意識しすぎていて何ですが、実際に本編にもあちこちで「鳥」のオマージュと受け取れるようなシーンがある事もあるので、これはまあ『許される範囲』かな?
内容は読んで字の通りといった感じのお話で、割とオーソドックス…というか非常にオーソドックスな『生物パニック映画の文脈』に沿ったコテコテの展開です。
ただまあコテコテはコテコテなのですが、コレが割と『良く出来たコテコテ』と言った感じのお話で、序盤~中盤にかけてのサスペンス部分の盛り上げ方とかが上手くて、先の展開が気になって普通に楽しめます。
また、カラスの大群はCGと実写とアニマトロニクス(人形)を使い分けているのですが、この使い分けが非常に上手くて、パッと見では全部が実写に見えてしまうような妙なリアリティがあるのは非常に良い所。
ただカラスのCGとかはキレイなのに、逆に『襲われた人間の死体の損壊表現』とかがショボくて、そっち方面でのリアリティに欠けるのは残念な所ですね。
(カラスに襲われた人間が、たいした怪我もしてないのにバタバタと死んでいくにのは、ちょっと不自然すぎです。)
もしかしてCGに金をかけすぎて、そちらに廻す予算が無かったのかな…?
あと惜しむらくは、低予算映画ゆえの宿命か『登場人物がやたらと少なくて物語のスケールが非常に小さい』ため、どうにも終盤の展開が盛り上がりに欠けるのは残念な所でした。
もっと終盤にかけて『ハッタリを効かせたスペクタクルシーン』でもあれば、非常に秀作になったと思うのですが…
オチも、どうにも今一つスッキリしないオチなのも勿体無い。
どうせスッキリしない展開にするなら、それこそヒッチコックの「鳥」にオマージュを捧げたような結末にすれば良かったのに…
総評としましては、オーソドックスながら『悪い出来では無い』という『良い意味で普通の生物パニック映画』といった感じの作品です。
強くオススメする程では無いですが、まあ正統派の生物パニック映画が好きな人ならば、とりあえず観ておいても損は無い一本と言えるでしょう。
過剰な期待をしなければ、そこそこ楽しめる作品だと思います。