NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「パルス」(55点/心霊オカルト)

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■■■「パルス」■■■
(55点/心霊オカルト)

 女子大生のマティは、ある日、数日前から行方不明となっている元恋人のジョシュ奇妙な留守電を受け取る。

 マティは不安を感じて彼の家を訪問するが、ジョシュは精気を失ったような奇妙な状態で、彼女の目の前で唐突に自殺を遂げる。

 自殺の原因の一部が自分あるのでは無いかと自分を責めるマティに、彼女の友人達は彼女を慰めようとするが、そんな最中、死んだ筈のジョシュから『助けて』という謎のインスタントメッセージが届く。

 彼らはジョシュのPCがウィルスに感染して勝手にメッセージを送っているのではないかと考え、彼のPCをシャットダウンする為に部屋を訪れるが、既にその場からPCは撤去されており、代わりに驚くべきものを目撃する事となるのだった…


 黒沢清監督によるJホラー作品である「回路」のハリウッドリメイクにあたる、オカルトホラー映画。

 黒沢清監督というと、ホラーファンの間では「回路」や「CURE」でお馴染みの『独特で雰囲気のある演出手法』で知られる監督さんなのですが、同時に『ストーリーが難解(というか説明不足)で訳が分からない』という事でも有名な監督さんです。

 で、本作のオリジナル作品である「回路」『演出は良いんだけどストーリーがさっぱり訳ワカメ』という感じの映画だったのですが、本作は何でもリメイク用に「スクリーム」シリーズで有名なウェス・クレイヴン監督が脚本を書き直したとかで、オリジナルに比べると随分と分かりやすい内容になっております。
 (まあ、それでも多少の意味不明な部分は残ってますが…)

 ただ、ストーリーが分かりやすくなったからといって、元々の話が『そこまで面白いか?』と言われると割と微妙な所なので、『脚本が修正された事で傑作になったか?』と言われると、さほどでも無かったりしますが…。

 お話の内容的には、物凄く端折って説明するなら『ネット経由で感染する貞子』みたいな感じのお話ですね。

 元々は黒沢監督が『ストリーミング配信のカクカクした動画』や『回線速度の遅いPCで画像を表示した際のボンヤリとした画像』を観た時に感じる、『何が表示されるか分からない得体の知れない不安感』に着想を得て作られた作品だそうで、その辺はリメイク版の本作でも上手く再現されていると思います。

 ただやはり、黒沢監督の作品の持つ独特の『虚無感』や『空虚な感じ』は流石に再現が仕切れておらず、その辺の表現が妙にアメコミチックになっててちょっと違和感を感じました。

 というか、海外版の「The RING」での『呪いのビデオ』とかを観た際にも感じたのですが、海外の監督って日本の映画の『古びたフィルムっぽい演出』を再現する時に、妙にアニメっぽい手法を使うのは何故なんでしょうか?
 アメリカじゃ『ノスタルジー感の中に漂う恐怖』を現す際に、そういう表現の方が一般的な手法なのかな?

 まあそれはさておいて本編の話ですが、一応お話全体の完成度は悪く無いのですが、全体的にコレといった見せ場が無い為に、ちょっと冗長で『ダラダラとした印象』を受けたのは勿体無い部分ですね。

 ラストはちょっと派手で分かりやすい展開になっては居ましたが、せっかく脚本を書き直すんなら、もうちょっと要所要所に盛り上がるシーンを入れても良かったかも?

 原作の『独特の演出手法』という持ち味を失ってしまっているので、単なる『地味なB級ホラー映画』になってしまっている点が勿体無く感じましたよ。


 総評としましては、全体としては地味な内容ながらも純粋に『オカルト映画』として観ても、それなりに楽しめるレベルの作品ではあると言えるでしょう。

 一応、オカルトホラーが好きな人になら、まあまあオススメ出来る一本だとは思いますが…
 むしろオリジナル版の「回路」を観て納得行かなかった人が『ああ、こういう解釈の仕方もアリかもね』というのを楽しむ作品として観るのが一番のオススメかな?

 オリジナルの『何だか良く分からない終わり方』に比べると、大分スッキリとした気分になれますよって。