■■■「正体不明 THEM(ゼム)」■■■
(65点/サスペンス)
2002年のルーマニア、ブカレストでフランス人クラスの教師を勤めるクレモンティーヌは、作家である夫のリュカと共に寂れた森の中の一軒家で暮らしていた。
そんなある日、深夜に屋外から奇妙な物音を聞いた彼女たちは、不審に思い屋外の様子を確認しに向かうが、何者かが彼女の車に乗って勝手に走り去って行ってしまう。
車の盗難と不審者の侵入を警察に通報した彼女だったが、その直後に屋敷は謎の停電に見舞われ、やがて彼女たちは『正体不明の不審者の集団』によって、自分達が屋敷の外を包囲されてしまっている事に気づくのだった…
『正体不明の集団』に襲撃された若い夫婦が味わう恐怖を描く、フランス製のサスペンス映画。
タイトルだけ観ると『かなりアレな感じ』の印象を受けますが、なかなかどうして結構面白い掘り出し物的な作品です。
一応は最近流行の『実話をベースとした作品』となっており、実話ベース作品のノリを意識したソリッドシュチュエーションスリラーっぽい前振りは、ちょっとだけ冗長ながらも『不気味さを盛り上げる演出』としてはかなり上手いと思います。
お話自体は巧妙なプロットとかがある訳でも無いのですが、正体不明の得体の知れない集団(THEM)に執拗に付け狙われる夫婦の、理不尽な恐怖と焦りの表現が上手くて、中盤以降のスピーディーな展開は観ていて全く退屈しません。
犯人の正体が、ある程度つまびらかになった時点で『これはダレるかな?』と心配していたのですが、ラストまでハイテンションのまま突っ走ってしまう演出の上手さはなかなかのもの。
ただ『実話ベース』という事で、オチの展開はある程度は読めてしまう(コレは『実話ベース』作品の最大の弱点だと思う)のですが、まあこのオチなら割と納得かな?
出来れば、もう少し社会的テーマとか『分かりやすい作品テーマ』が盛り込まれていれば、もっと評価が高くなった作品だと思うので、その辺は惜しい所ですね。
総評としましては、作品ならではの『特筆するような個性』は無いものの、非常に安定した作りのシチュエーションスリラーの良作だと思います。
普通にサスペンス映画が好きな人ならば、とりあえず観ておいても損は無い作品なのは間違いないでしょう。
近年は、ネームバリューばっかりでツマんないサスペンスも多いですが、こういう『無名ながらも良作の作品』を観ると、映画好きとしてはちょっと安心できますね。
話題性はあまり無さそうな作品ですが、B級サスペンス映画が好きならば是非と言った感じの一本でしょう。