■■■「アンドロメダ・ストレイン」■■■
(70点/SFサスペンス:オススメ)
ユタ州のビートモントという田舎町にNASAの「プロジェクト・スクープ」という計画で使用されていた人工衛星が落下。
その翌朝に町に『謎の伝染病』発生して、住民が2人を残して全員が死亡するという異常事態が発生する。
合衆国は、緊急事態としてバイオ・テロ対策であるワイルド・ファイア計画を発動。
軍によって召集されたストーン博士らの対策メンバーは、細菌への完全防備を固めて現場へと向かうが、彼らが目撃したのは『全身の血液が砂のようになって死亡する』という異常な状態の死体だった…
マイケル・クライトン原作で、1971年にロバート・ワイズ監督によって製作された「アンドロメダ…」のリメイクに当たる、未知の細菌の脅威を描いたSFサスペンス映画。
と言っても、「アンドロメダ…」は90分の作品だったのに対して、本作は90分の前・後編ものとなっており180分も尺があるので、リメイクと言うよりも原作の「アンドロメダ病原体」の再映画化と言った方が正しいかもしれません。
私も原作は読んだ事が無いのですが、旧作の映画版とはストーリー自体がかなり違う内容になってたので、コチラの方が原作に忠実な内容になっているのでは無いでしょうか?
お話としましては、人工衛星によって回収された謎の病原体『アンドロメダ』によって人類の生存が脅威にさらされるといった感じのお話なのですが、病原体の正体を突き止める『生物パニック』的な局面や、政治的な駆け引きが描かれる『サスペンス』的な局面が同時進行で描かれ、更に人間関係の描写なども割と掘り下げられて描かれているので、180分という尺で長さが全く気にならないぐらいに濃密な内容になっています。
原作者のマイケル・クライトンというと、ネタとして持ってくる『アイデアの斬新さ』と『人間ドラマの描き込み』がウリの作家さんだと思うのですが、普段の映画化作品では尺の都合からこの『人間ドラマ』の部分がカットされがちなのですが、今回は長尺を使うことで、その辺りの部分も比較的しっかりと描かれており、原作の良さが上手く活かされているのではないでしょうか?
ただまあ、それだけの尺を使っても、主人公周りや重要キャラのキャラクターの描き込みに少々浅い部分が感じられ、ラストの展開とかでちょっと物足りない印象を感じたのも事実。
っていうか、ラストシーンの『謎の図形』の意味が今ひとつ良く分からなかったのは、私だけですかね?
あと、謎解き部分に生物学的な用語が割とバンバンと登場する割には、あまりソレに関してのフォローが無いので、その手の知識が全く無い場合は謎解きプロセスにちょっと分かり辛い部分があるかも?
(まあ、もともとがSF小説なので、専門的な用語が多いのは仕方ないって言えば仕方ないんですが…)
でも、個人的に「アンドロメダ」が高性能すぎて『それは都合良すぎるだろ?』と感じる部分があったのは、ちょっと気になった部分かな?
また、クライマックスが『病原体を除去するだけ』なので、ビジュアル的にちょっと盛り上がりに欠けるのも難点かも…
総評としましては、生物パニック映画としてもサスペンス映画としても高水準でまとまった、全体的に『非常に良く出来たSFサスペンス映画』だと思います。
細菌感染ものの生物パニック映画とかが好きな人ならば、かなり楽しめる内容だと思いますので、その手のジャンルが好きな人になら文句なしでオススメできる一本だと言えるでしょう。
90分の前・後編と非常にボリュームがある内容なので、観るのに覚悟が必要ですが、十分にその価値はある内容だと思いますので、気になっている人は観ておいて損は無いでしょう。
この手のジャンルもののなかでは、近年まれにみるレベルの完成度の作品だと思うのですが、この映画って海外じゃ『TV映画用に作られた作品』なんですよね?
うーむ、ハリウッドの金がかかってる作品は、やっぱレベルが高いですなぁ…。