■■■「1408号室」■■■
(65点/オカルト)
売れないオカルト作家のマイク・エンズリンは、各地の『幽霊が出る』というウワサのある心霊スポットを巡り、その場所のレポートを本にして出版して生計を立てていた。
しかし、行く先々の心霊スポットは眉唾物ばかりで、実際に幽霊に遭遇した事は無く、実際には彼自身は幽霊の存在すら信じていない状況だった。
そんなある日、彼の元に『ニューヨークのドルフィンホテルの1408号室に泊まるな』という奇妙なメッセージが書かれた一通の葉書が届き、興味を持って調査してみたところ、その場所は『宿泊した56人の客全員が1時間以内に死亡した』という驚くべき逸話の残る場所だった。
彼は1408号室の真相を探る為に、その場所へと宿泊する事を決意するが…
スティーブン・キング原作の同名の短編小説を題材とした、幽霊屋敷もののオカルトサスペンス映画。
元々の原作は非常に短い作品で『こんなのを映画化して面白いのか?』って感じのお話なんですが、タイトルの「1408号室」以外にも他のキング作品をオマージュとして映画の中に取り込む事で、オリジナルの映画作品としてキチンと中身のある作品へと仕上げています。
キングのファンであれば、それだけでもニヤりと出来る部分が多いと思うので、コレはなかなかに上手い構成だと思いました。
ただ、『スティーヴン・キング原作映画史上NO.1のヒット!』とかって売り文句が付けられていますが、個人的には『そこまで凄い作品かなぁ?』ってのも正直なところ…
確かに映像表現や特撮に見るべき部分はありますが、単純に怖さで言うなら「ミスト」とかの方が上ですし、映像表現や演出で言うなら「シャイニング」の方がインパクトはあります。
序盤の死体を見せるシーンの『恐怖表現』も今ひとつですし、娘の死に関する『人間ドラマ』の部分も描き込みが薄くて、いま一つ感情移入し切れない印象を受けたので、全体的にちょっと中途半端な印象かなぁ…と。
怖いシーンではもうちょっと残酷な描写をハッキリと描いて、ドラマのパートはもうちょっと主人公の過去に踏み込んで描いた方が、もっと迫力のある内容になったのではないかと思いました。
でも、全体の尺に対する恐怖演出とドラマ部分のバランスの良さや、お話がテンポ良く進む飽きさせない作り等、なかなかに見るべき部分も多いですし、なによりもオリジナル要素を加えながらも『キングらしさ』を上手く映画に取り込んでいる部分に関しては、非常に評価出来ると思います。
キング原作というと『上っ面だけなぞって失敗した駄作』が多いのですが、コレは『キングの色んな作品をキチンと読んでないと出来ないレベル』の仕上がりだと思うので、その部分に関しては素直に感心させられましたよ。
オチの付け方とかに関しても、非常に映画らしくて良い意味で『分かりやすいオチ』で、なかなか上手い終わらせ方だと思いました。
総評としましては、ごく普通に『なかなか良く出来たオカルトサスペンス映画』だと思います。
割と万人向けの内容だと思いますし、キングのファンなら『なお深く楽しめる』という作りだと思いますので、本作が気になっている人ならば『観ておいても損は無いタイトル』だと言えるでしょう。
ただ、宣伝とかの『大げさなあおり文句』に過剰な期待をしてしまうと、ちょっと肩透かしを食らってしまうかもしれないので、その点は要注意かな?
どっちかって言うと佳作レベルの作品ですので、過剰な期待をしなければ『そこそこ楽しめる作品』なのは間違いないですよ。