■■■「ブラインドネス」■■■
(55点/サスペンス)
『突然に目の前が真っ白になって失明する』という謎の伝染病が発生。
伝染病は瞬く間に街中に蔓延し、感染者たちは政府によって古びた精神病院に隔離され監禁されてしまう。
日増しに数を増す感染者たちによって隔離施設は満員となり、食料の配給もままならなくなった事から、こんな状況でありながら感染者同士の諍い(いさかい)が絶えなくなり、やがて感染の拡大によって全世界の社会の機能は失われて、生き残った人々は生死をかけたサバイバルを余儀なくされていくのだった…
唐突に発生した謎の伝染病によって、全世界の殆どの人々が視力を視力を失った世界を描いた、パニックもの風味のサスペンス映画。
設定だけ聞くとなんとなくSFっぽい印象を受けますが、あんまりそういう要素は無くて、極限状況に置いても諍い(いさかい)を止めない人間同士のエゴや心理を描いた、群像劇というかヒューマンドラマ的な印象の強いお話です。
一言で言ってしまうと、盲人版の「蠅の王」みたいな感じのお話ですかね?
(主人公が青少年って訳でもないので、ちょっと違うか?)
実際に『SF的な設定』は殆どマトモに行われていなくて、伝染病の正体に関する具体的な説明は一切ないですし、ゼロ号患者の青年がロクに検査もされずに隔離されてたりと、そういう科学的観点で観た際のツッコミどころは満載。
まあ、映画の趣旨が人間ドラマを描くことを中心に作られているようなので、そういう設定にはこだわりを持ってないのかもしれませんが…
同時に、そういう設定部分での『リアリティの無さ』のせいで、お話に現実味が無くて臨場感が失われてしまっているのは、ちょっと勿体無いのでは無いかとも思いました。
少なくとも『SFパニック映画』的なノリを求めているなら、かなりテイストの異なる映画ですので、そういうノリに期待している人は要注意です。
お話そのものは、序盤に『やや冗長な印象』はあるもののサスペンスとしてはなかなか良く出来ており、隔離施設の閉じられた世界の中での極限状況での人間のエゴや、そんな状況下ですら争いを続けてしまうという醜さなどが上手く描かれていて、なかなかに考えさせられる内容になっています。
登場人物に、設定として一切『名前がない』のも、群像劇を描く手法としては面白いですね。
ただ、ラストに関しては若干『ご都合主義的すぎる』気もしたので、もうちょっと落としどころを工夫しても良かったのではないかと…
総評としましては、群集心理を描いたサスペンスドラマとして観るならば、そこそこに良く出来た作品だと思います。
逆に先述したとおり、SFっぽい設定ですが『SFパニック映画』を期待して観ると、全くそういう要素はありませんので、そういうノリを期待している人はスルーしてしまった方が良いかもしれません。
なんとなく、映画というよりは『舞台劇』っぽい印象を受けるお話でしたねぇ…
ですので、舞台的な設定の群集劇や心理ドラマとか、そういうノリの映画が好きな人なら、割とオススメな作品ではないでしょうか?