■■■「THE LOST ザ・ロスト -失われた黒い夏-」■■■
(60点/サスペンス)
とある夏に友人達とキャンプ場に来ていたレイは、出来心から2人の女子大生を射殺してしまう。
それから4年後、事件は未解決でレイは逮捕されないままに過ごしていたが、警察の再捜査によって追い詰められ精神的にも追い詰められた彼は、凶器へと囚われて再び凶行を繰り返そうとするのだった…
ホラー作家であるジャック・ケッチャムの「黒い夏/THE LOST」を映画化したという、サイコサスペンス映画。
原作は、かのS・キングが絶賛した小説だとの話ですが、残念ながらこの作家さんの事は名前ぐらいしか知りません。
…が、それを差し引いても、本編の映画の方は『なかなか良く出来たサスペンス映画』だと思います。
主人公が、軽薄かつ恐ろしく身勝手な性格で、『自分の思い通りにならないから』という物凄くわがままな理由で殺人を犯しておきながら、その殺人のせいで精神的に追い詰められて更に凶行を重ねていく…という『負の連鎖』は、観ていて非常に不快な気分になりますが、構成としてはなかなか面白いですね。
なんというか、主人公の『最低っぷり』が非常に良く描かれており、サスペンスとして良い意味で『不快な気分』や『不安な気分』になれる作品です。
主人公や周辺の登場人物の心情の描写がなかなか丁寧で、主人公が追い詰められていく様子や、周りの人間が主人公にどういった感情を抱いているかや、徐々に心境を変化させていく様子やらの描き方が秀逸なのは良い点ですね。
小説版だと、恐らくこの辺りが更に丁寧に描き込まれており、高く評価されているのであろう事が想像されます。
ただ心理描写を中心にお話を描いた事もあってか、お話のテンポそのものは非常にスローテンポで、中盤とかは観ててちょっと退屈さを感じてしまうのも事実。
もとより、映像だけでは心理の機微が描ききるのが難しいのであれば、もう少し全体のテンポを早くして、終盤の盛り上がる展開を長めに取っても良かったかも?
でも、ラストの投げっぱなしっぷりは『痛快かつ不安感を煽るような終わり方』でなかなか良かったと思います。
総評としましては、ネタとしての新鮮さとかインパクトは薄いですが全体的に『割と良く出来た感じのサイコサスペンス映画』だと思います。
本作ならではというウリは少ないものの、キャラクターの描きこみとか、心情の描写なんかが上手いので、堅調に楽しめる作品だと言えるでしょう。
『暴走した身勝手な若者が犯罪を犯す』ある意味でテンプレート的な内容ながらも、その手のバイオレンス&サスペンス映画が好きな人ならば、ごく普通に楽しめる作品だと思いますので、そういうジャンルが好きならば観ておいて損は無い一本ではないでしょうか。