■■■「マーダー・フィルム」■■■
(55点/スラッシャーホラー:結構オススメ)
映画館でバイトをするブリジットは、ある日、深夜の映画館でボーイフレンドのジョシュや友人達と一緒に「ザ・ダーク・ビニーズ」という40年前に作られたホラー映画を観る事になる。
映画の上映が始まって暫くはチープなシーンが続くが、やがてスクリーンの中に彼らの友人が姿を現して惨殺されるという奇妙な現象が発生。
彼らは、スクリーンの中で殺害された友人が現実でも殺害されている事を発見する。
劇場に居合わせた刑事から、事件に『5年前に大量殺人を犯した殺人鬼が関連している』と教えられた彼らは、劇場に本物の殺人鬼が紛れ込んでいるのでは無いかと疑うが…
逃げ惑う彼らの元に本当にスクリーンの中から姿を現した殺人鬼が現れ、命を狙われるようになるのだった。
映画のスクリーンから現れた殺人鬼によって観客が命を狙われるという、スラッシャーホラー映画。
何か同じような設定の作品をどこかで観たような気がしますし、パッケージとかも物凄くチープで安っぽい作品に見えますが、映画の方は以外にも良く出来た佳作B級ホラーと言った感じの内容でした。
設定そのものはありがちな感じなのですが、演出や見せ方がなかなか上手くて物語のテンポも良いので、ありがちな展開ながらも物語に引き込まれるような作りなのは上手いですね。
主要登場人物や殺人鬼のキャラクターの個性付けもキチンと行われており、全体的に及第点を満たした模範的なB級ホラーといった印象の作品です。
ただ模範的なのは良いのですが、全てが『及第点を満たす程度のレベル』でしか無いかなぁ…と感じてしまうのは残念なところ。
殺人鬼もキャラとしての主張はしてるのですが、一度観たら一生忘れないほどのインパクトがある程のキャラでは無いですし、殺害シーンもスピーディーではあるもののバリエーションに乏しくて見せ方も薄味な印象。
主人公やメインのキャラもしっかりと個性付けはされているものの、各人の見せ場に乏しくて主人公ですら影が薄い感じです。
ストーリーやプロットも割と細かく練られているっぽいのに、全体的に説明不足で『殺人映画を撮った監督の素性』やら『映画のフィルムの秘密』やら、良く分からない部分が多くて消化不良気味。
といった感じで、どうにも全体的に物足りなさが残るんですよね。
どこか一つでも突き抜けた個性があれば、かなりの名作になったんじゃないかと思うのですが…
あと、殺人鬼が使う『ドリル型の刃物』のアイデアは良いのですが、見た目が小ぶりで地味さを感じてしまったので、同じような武器でも『もっとデカくて凶悪さを感じさせるようなデザイン』だと良かったかも?
総評としましては、B級映画としては全体的に良く出来ているのですが、『良く出来ているが故に、あと一歩の物足りなさを感じる』という、非常に惜しい作品ですね。
ただ佳作レベルは十分に満たした作品だと思うので、スラッシャーホラー系の映画が好きな人であれば、間違いなく観ておいて損は無いタイトルだと思いますよ。
『超常的なパワーを持った殺人鬼もの』が好きならば、なかなか楽しめる一本だと言えるでしょう。
割と定番のB級ホラーって感じの作品なのに、『パッケージから漂うZ級臭さでちょっと損してるタイトルじゃないかなぁ?』と思いましたよ。
少なくとも、もしこの監督が別の新作ホラーを撮るとしたら、次も観てみたいと思わせるレベルの作品ではありましたので…