（６５点／オカルト：結構オススメ）
とある郊外の住居に、司法試験の受験を控えた息子の居る５人の一家が引っ越してくる。
息子は、最初にその家に入った際に異様な雰囲気を感じ取るが、やがてその家に込められた『呪い』によって徐々に正気を失っていき…
本シリーズでお馴染みの『呪われた家』に関わった人間が陥っていく『呪いの連鎖』を描いた「呪怨」シリーズの最新作。
「呪怨」シリーズの製作から１０周年を記念した作品で、同時期に公開された「呪怨 黒い少女」と姉妹作に当たる作品になります。
（パッケージの『呪い続けて、１０周年』のキャッチコピーに、ちょっと笑いました。）
今回はシリーズの監督である清水崇氏は、監督ではなく監修という立場になったようなので、『シリーズのクオリティを保てるかな？』という一抹の不安があったのですが…
なかなかどうして、キチンと『「呪怨」らしさを持った作品』に仕上がっており、近年の「Ｊホラー」の中で見ても『普通に怖い作品』というレベルで一安心な内容でした。
お話のノリ的には『劇場版』の続きというよりも『ビデオ版』の続編的な内容で、作りとか映像とかもチープなのですが、むしろシリーズ物の雰囲気を良く出していて、なかなか良い出来なのではないでしょうか？
少なくともハリウッド版「THE GRUDGE」で、違う方向に向かってしまった海外シリーズに比べるとキチンと「呪怨」してるので、シリーズを好きな人は安心して良いかと思われます。
本作を観て思ったのは、こういういかにも『ビデオ作品』って感じの微妙にキレイじゃない映像が、むしろ不安感を煽って『安っぽさの中に怖さを感じさせる』ってのは、心霊番組とかの『再現フィルム』等で独特の文化を築いた『Ｊホラーならではの表現』と言った感じで『海外ホラーには出せないテイストだよなぁ…』ってのを改めて感じました。
ちなみにお話の構成は、いつものように『オムニバス形式』で『呪われた家』に関わった人間の身にふりかかる不幸を描くという感じなのですが、ストーリーの時系列を上手く組み替える事によって『ミステリーっぽい雰囲気』を出しているのは、なかなかに上手い手法だと思いました。
この辺は、むしろ本家の清水監督よりも構成の仕方としては上手いかも？
60分という短い尺なのも、お話が冗長にならない程度にまとまっており、むしろこのシリーズはコレぐらいの長さの方がしっくり来る感じですね。
ただお話そのものは割と面白いのですが、流石に『ホラー的な絵作り』の上手さでは清水監督には及ばない印象です。
ところどころに『ゾクッ』と来るシーンはあるのですが、清水監督の作品のような『一度観たら一生忘れないようなインパクト』は感じられないかなぁ…ってのは正直な所。
序盤の『バイトのお兄ちゃんが家に入っていくシーン』が物凄く怖くて、後のシーンはちょっと尻すぼみな印象なのは、構成として勿体なかったかな…
クライマックスの見せ方に、もう少し工夫が欲しかったかも？
この監督は『ストーリーの不安感でお話を盛り上げる』って演出は上手いと思ったので、ビジュアル的なセンスで清水監督を見習うようにすれば、もっと怖い作品を作れるようになるんじゃ無いかと思うので、そういう方向にセンスを磨いていっていただきたい所です。
あと、余談ですが…
本作は南明奈がヒロインと言う扱いになっているのですが、その割には矢鱈と影が薄くて笑いました。
それと、『トシオ君が犬の人形と遊んでるシーン』はちょっと可愛くて和みました。（笑）
でも、今回は伽耶子は出てこないので、伽耶子好きの人にはちょっと残念かもしれません。
個人的に気になったのは、お婆さんが矢鱈と『バスケットボール』を持ってるのって、いったいどういう演出の意図なんですかね？（『赤ちゃん』か何かに見立ててるみたいだったけど…）
中盤の『お婆さんがバスケットボールを持って駆け寄って来るシーン』では、不覚にも思わず笑ってしまいましたよ…
何か小道具としても違和感があったのですが、「呪怨」シリーズに何かそういうネタがあったんでしたっけ？
或いは、もう一本の「黒い少女」を観れば何か分かるんですかね…
総評としましては、普通に『そこそこ良く出来たＪホラー』ってレベルの完成度の作品だと思います。
少なくともシリーズを好きな人ならば、不安を払拭する程度の出来の出来の新作だと言えるでしょう。
ただ「呪怨」シリーズを全く知らない人が見ると、あの場所が『呪われた場所』であるという前提知識が無いと、流石に『強引すぎるかな？』と思われる部分も多いので、シリーズを見たことが無い場合は、先にオリジナル版を鑑賞しておく事をオススメしますよ。
まあ、オリジナル版ほどの強烈なインパクトを期待していると肩透かしを食らうかもしれませんが、個人的には『やっと、オリジナル版の正当な続編が来た』という感じの作品なので、シリーズが好きならば観ておいて損は無い作品だと思いますよ。
