■■■「グリズリー 2010」■■■
(60点/生物パニック)
投資家であるサムは妻のリズ、弟のニックとその恋人と共に『両親の結婚30周年のお祝いパーティ』を開くべく、実家へと車で里帰りの為に向かっていた。
しかし、その道中でニックが近道をしようと通った森の中でタイヤがパンクし、携帯電話の電波も通じない森の中で立ち往生することとなってしまう。
森の中で車の修理をする彼らだったが、修理を終えた彼らの前に一匹の雌の灰色熊(グリズリー)が出没。
サムの所持していた銃で、なんとか灰色熊を撃ち殺して難を逃れたかと思われたが、その場に後からやって来た、死んだ雌の『つがい』と思われる怒り狂った雄の灰色熊の襲撃を受け、逃げ込んだ車ごと横転させられてしまう。
灰色熊によって車の中へと閉じ込められた彼らは、なんとかして熊の隙を付いて森から脱出しようと試みるが…
つがいの雌を殺されて怒り狂った灰色熊によって4人の男女が車に閉じ込められるという、生物パニックホラー映画。
生物パニック映画が好きな人向けに簡単に言うと、早い話が「オルカ」と「クジョー」を足して2で割ったようなお話の『灰色熊版』って感じですな。
まあ、設定としては『目新しくも無いような感じのお話』なのですが、シンプルな設定の割りに意外とコレが良く出来た作品だったりします。
『故障した車の中に閉じ込められて、外には怒り狂った灰色熊』という状況が、完全に『自分達の招いた結果』だという設定も皮肉が効いていてなかなか面白いですし、何が出没するか分からない夜の森の不気味さも、なかなか良い味を出しています。
80分程度の尺の映画とは言え、流石に四六時中に熊が襲撃を繰り返している訳ではなく、襲撃の無いシーンは車内での会話劇みたいなのが中心となる訳ですが、実はこの家族が『円満な家庭』ではなく極限状態におかれる事で彼らの持つ『秘密』が噴出していき、どんどん『精神的にも追い詰められていく』って展開もなかなか面白いですね。
何とも言いようの無い気持になる『印象的なラストシーン』のオチの付け方なんかも上手いと思いますし、全体的に良く出来た脚本だと思います。
登場する灰色熊は『本物の熊』と『着ぐるみ』が使い分けられているのですが、見せ方がなかなか上手くて特撮の粗は殆ど気にならないレベル。
ただ、若干『人間と熊との絡みのシーン』が迫力不足なのは残念なところかな?
…とまあ、なかなかに好感触な部分の多い作品なのですが、いかせん『かなりの低予算で作られた映画』っぽくて、構成や映像から全体的に『予算かかって無さそうだなぁ…』と言うのが、如実に感じ取れてしまうのは辛いところです。
またドラマ部分が割と面白いとは言え、基本的に『車の中や周辺での4人の会話劇』のみがメインのストーリーになっているので、流石に中盤とかは『ちょっと単調で退屈に感じてしまう』ってのも正直なところ…
色々と、演出や脚本で『低予算をごまかす努力』はしているんですが、根本的に『生物パニック映画』を超低予算で作るのは流石に無理があるのかなぁ?
やっぱ『モンスターの映像』に迫力が無いと、どうしてもインパクトが弱くなってしまいますからねぇ…
もうちょっと予算があって、映像とか見せ場とかがシッカリと作られていれば、そこそこの良作になったと思われるので、その点は非常に残念なところでした。
総評としましては、超低予算映画であるという点にさえ目をつぶれれば『思ったよりも良く出来た生物パニック映画の良作』と言えるレベルの作品だと思います。
…が、とにかく非常に低予算さの溢れる作品ですので、灰色熊の怖さや迫力を求めている人には、同時に『物足りなさの残る作品』になってしまうかも?
とまれ、生物パニック映画とかが好きな人ならば普通に楽しめるレベルの作品ではあると思いますので、そういったジャンルが好きであれば『そこそこオススメ出来る一本』だと思います。
同じように低予算な作品ですが「クジョー」とかのノリが好きな人なら、割とオススメですよ。