■■■「アリス Episode1:ワンダーランドにようこそ」■■■
■■■「アリス Episode2:ワンダーランド最後の日」■■■
(70点/ファンタジー:オススメ)
柔道のインストラクターを勤めるアリスは、ある日、恋人のジャックを自宅へと招いた帰り道に、ジャックが何者かに車によって拉致されて誘拐されようとしている現場を目撃する。
アリスはジャックを救出するために車を追跡しようとするが、そんな彼女の前に『ジャックの友人』と名乗る初老の男性が現れ、その男によってジャックから貰った指輪を奪われたアリスは男を追跡して走るうちに鏡の中へと飛び込んでしまい、不思議な世界へと迷い込んでしまう。
その世界で『ハッター』と名乗る一人の若者と出会った彼女は、ここがハートの女王によって支配された『不思議の国』であると教えられ、150年前にこの世界に訪れて世界に変革をもたらした伝説の少女『アリス』の再来ではないかと言われるが…
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をベースとして、大胆な新解釈と現代風アレンジを施した冒険ファンタジー映画。
最初は『ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」の便乗作品かな?』と思っていたのですが、コレがなかなかに非常に個性的で面白い作品でした。
とにかく世界観の構築が面白くて『他の作品には無い個性』となっているところが良い感じで、マッドハッターはイケメン、ドードーはアウトローのバイカー、三月兎はサイボークエージェント、トランプの兵士は「MIB」ばりの黒服軍団といった具合に、『こんな「アリス」は他で見たことねーよ!!』って感じのノリがなかなか楽しいです。
世界観もファンタジーでありながら、スチームパンク風の建物やメカが登場したりと『現代風』というか『コミック的』な印象ですね。
実際に、CLAMPとかPeach-Pit辺りがコミック化したら結構面白そうな感じのお話です。
また単純なビジュアルイメージだけではなく、お話の方もなかなか現代風にアレンジされていて良く出来ております。
『ハートの女王』が、現実世界の人間を誘拐して『人間の感情を吸収する装置』を使って『感情エキス』を独占供給する事で世界を支配していたり、ドードーやキャタピラーがレジスタンスとして女王と戦っていたりというSFっぽい設定も、いかにも現代風で面白いです。
また、ヒロインのアリスとハッターとジャックとの恋の三角関係や、10年前に行方不明になったアリスの父親の秘密…等といった具合に、なかなかに先の読めない展開を仕込んで居るのも良い感じですね。
本編は元々は米国のTV映画で前・後編で放送されたもののようで、日本でもDVDのPart.1~Part.2の2本で発売されており、尺の長さはそれぞれ90分の計3時間といったところ。
割とスケールの大きい話なので3時間という尺は適正な長さだと思われますが、Part.1は非常にスピーディな展開で面白かったのですが、Part.2の前半辺りが世界観や世界背景を説明するための『説明的なセリフや展開』が多くて、ちょっと中だるみしてしまったのは残念な所かな?
ある意味で『個性的な世界観』を作りすぎた事による弊害とも言えるかも?
あと、世界観や美術デザインのセンスやらはかなり良い感じなのですが、TV映画だけあって『予算的に苦しそうな部分』が垣間見られるのは難点ですね。
TVシリーズとしてはかなりお金がかかっている作品だとは思うのですが、やはりハリウッドメジャーの作品と比べると、どうしても映像的に粗が目立ったりしてしまう印象です。
特に全体的に『スペクタクル的なシーン』が少なく、また映像的にも今ひとつ迫力が無いので、終盤とかはちょっと物足りなさを感じてしまう部分も…
アクションシーンとかにもうちょっと迫力があれば、ハリウッドメジャー級とも張り合えるレベルになってたと思うんですがねぇ。
ストーリーに関しても不満を上げるならば、アリスと父親との邂逅シーンとかラストの女王と対峙するシーンとか、『もうちょっと上手い見せ方が無かったのかなぁ…』と思う部分も無くはなかったりで、若干の『垢抜けなさ』を感じてしまうのは致し方ない部分かも?
総評としましては、「アリス」という作品を新機軸で捕らえた、なかなか『個性的で面白い冒険ファンタジー映画』だと思います。
ノリ的には、マンガやアニメのようなノリと海外ドラマ的なノリとが融合したような作品ですので、単純に「アリス」という設定だけではなく、そういった青年コミック的なジャンルが好きであれば、なかなか楽しめる作品だと言えるでしょう。
パッケージだけみると、ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」を意識しすぎてて、その辺の面白さが伝わりにくい印象ですので、ちょっと『パッケージで損をしている作品かなぁ…』と思わなくもないですが、個人的にはなかなかオススメの一本ですよ。