NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「Dr.パルナサスの鏡」(75点/ファンタジー:オススメ)

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■■■「Dr.パルナサスの鏡」■■■
(75点/ファンタジー:オススメ)

 2007年のロンドン。
 パルナサス博士の率いる旅芸人の一座は特殊な出し物を売りとしていた。
 それは、人が心の奥に持つ密かな欲望の世界を、鏡の向こうで形にしてみせるという『幻想館(イマジナリウム)』という特殊なものだった。

 しかし、1000年の歳月を生き魔法の鏡を操る博士には一つの悩みがあった。
 それは過去に悪魔との賭けに応じたせいで、娘の16歳の誕生日に『悪魔に自分の娘を差し出す』という約束をしてしまった事だった。

 そしていよいよ、悪魔との約束である娘の16歳の誕生日が3日後に迫った日に、博士は悪魔から『新たな賭け』を挑まれ、娘の命を救う為にその賭けを受ける事となるが…



 未来世紀ブラジル」等でお馴染みのテリー・ギリアム監督による、人間の業や欲望を幻想的に映し出す『鏡』の幻想世界を描いた、大人向けファンタジー映画。

 テリー・ギリアムも最近ではすっかりメジャーになってしまったので、ウチのブログで扱うような『B級作品』って雰囲気でも無いですが…
 「ブラザー・グリム」とかは微妙な印象でしたが、コレは久々にギリアム監督らしさを感じさせる面白い作品でした。

 ファンタジーでは『人間の心象風景を現実にして見せる』ってアイデアは、ともすれば非常にチャチな印象になってしまうのですが、ギリアム監督の独特の映像表現によって、ある時は絵本の中の世界のように、ある時はダリの抽象画のように、あるいは「モンティパイソン」のアニメーションのように、なんとも奇想奇天烈な幻想世界をリアルに描いて見せる手腕は相変わらず素晴らしいです。

 いやはや、最近ではこの手の幻想世界の映像化をやらせたら『ティム・バートンテリー・ギリアムか…』って感じですな。

 個人的にコレは出来れば劇場の大画面で観ておきたかったと感じた作品ですが、とりあえず未来世紀ブラジル」やら「バロン」やらが好きだった人なら、この映像表現を見るためだけにでも鑑賞しておく価値のある作品だと言えるでしょう。

 お話の方もなかなかに面白い作りで、幻想世界で提示される『選択』によって人間の業や欲望といったものを描いたり、不老不死となってしまった博士の生涯やらを通じて『人が生きる意味』とかを皮肉っぽく暗示しているのは、いかにも大人向けファンタジーといった風味を感じさせて良かったです。

 また、ストーリーも二転三転する先の読めない展開で最後まで飽きずに楽しめましたし、シーンによって主人公を、ヒース・レジャージョニー・デップコリン・ファレルジュード・ロウの4人の超大物俳優が演じ分けるという演出も、心象世界を表現する面白い手法だと思いました。

 ハッピーエンドでありながら、どことなく皮肉も感じさせる結末も良かったですが、ちょっと不満点を上げるならば主人公のライバル役のキャラの扱いが妙にぞんざいなせいで、ラストがちょっと釈然としない部分があった事かなぁ…

 あとは、タイトルやパッケージの印象と作品の中身があまり一致しない点や、お話の序盤の『掴み』の部分が少し弱い感じなのが欠点といえば欠点かな?


 総評としましては、ややブラックな部分もある『大人向けファンタジー映画』としては非常に良く出来た良作だと思います。

 ファンタジー映画が好きな人であれば十分に楽しめるレベルだと思いますし、テリー・ギリアムらしいケレン味あふれる作品』ですので、旧来のファンであっても安心して観れるレベルだと言えるので、この手のジャンルに興味があるなら『間違いなくオススメ出来る作品』だと言えるでしょう。

 未見ながら、同系列と言えるティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」があまり評判が良くないようですので、そちらでガッカリした人は試しにこちらを観て見ると良いかもしれませんな。