(55点/モンスター)
ウィーンに暮らす若者のミヒャエルは、ふられた彼女に復縁を申し込むべくベルリンにある恋人のガービの家へと訪れる。
しかし生憎にも彼女は留守で、部屋で帰りを待とうとしていたところ工事に訪れていた作業員の1人が唐突にゾンビのような怪物になって襲い掛かってくるという異常事態に遭遇。
怪物の襲撃をなんとか逃れた彼はハーパーと名乗る作業員の若者と一緒にアパートの一室に立てこもるが、奇妙な叫び声に窓の外をみると外ではゾンビ化した人たちが大量に暴れまわっているのを目撃する。
TVのニュースでパニックの原因が『正体不明の感染症』である事を知った彼らは、事態の収拾を待つべくドアに鍵をかけて外へと出ずに過ごすが、いつまで経っても事態は好転せずにやがて食料も尽きてきて、ゾンビの徘徊するアパートから危険を冒しての脱出の決断を迫られる事となって行くのだった…
アパートの一室に孤立した主人公達がゾンビであふれかえったベルリン市街から脱出を目指すと言う、サバイバルモンスターホラー映画。
まあタイトルを見てそのまんまな感じの、ベルリンを舞台にしたゾンビ映画ですな。
ドイツ製のゾンビ映画って言うと、なんとなく『ゴア表現がエゲつなくてグロいばっかりの映画』ってイメージがありますが、本作はそういう事もなく主人公達の心理描写とかを中心に描いたサスペンス要素の強いドラマって感じの作品です。
むしろ特撮とかは全然たいした事がなくて、ゾンビ化した人たちってのも『顔を赤っぽく塗って白いカラーコンタクトレンズを入れただけ』みたいな感じで、まあいかにも低予算だなぁ…という印象。
ただ、いわゆる「28日後....」みたいな『元気一杯のゾンビ』というタイプなので、スピード感あふれる襲撃シーン見せ方や表現の仕方のおかげで、ショボさはあまり感じない作りになっているのは上手いですね。
ストーリー的には『ゾンビの群れによってアパートに閉じ込められた人たちが脱出を試みる』ってだけのお話なんですが、ゾンビウィルスに感染しても『アドレナリンが分泌されなければ発症しない』という設定が個性的で、この要素がストーリーになかなか上手に絡んでいる印象。
誰かが『ゾンビウィルスに感染しているんだけど発症していない』という状況に陥った時に、主人公達が『どういう行動を取るか』がドラマ要素を盛り上げるという仕掛けは上手いと思いました。
しかし、もともとTV映画なのか何なのかは分かりませんが、映画全体の尺が60分しかなく『盛り上がってきたと思ったら、あっと言う間に終わってしまう』のは残念な部分ですね。
ストーリーとか設定とかは面白いので、もっと普通の映画の尺でシッカリとキャラクターや物語が描かれていたらもっと面白くなったかもしれないですし、ラストの何とも『やるせ無さの漂う結末』も良い味を出していて、全体的に良く出来ている部分の多い作品だったのでちょっと勿体無さを感じましたよ。
総評としましては、短い尺でコンパクトな内容ながらも『なかなか良く出来たパニックホラー映画』だと思います。
全体的に物足りなさを感じる部分も多いですが、人間ドラマとかサスペンス要素とかの部分が面白いので、ゾンビ映画のそういった要素が好きな人ならばごく普通に楽しめる作品だと言えるでしょう。
逆に残虐表現とかは全然無いようなレベルですので、ドイツ製のゾンビ映画だからといってソチラ方面に期待していると、ちょっと肩透かしを食らわされるかもしれませんが、サクっと短時間で小気味良くホラーを楽しみたいのであれば割とオススメの一本ですよ。