■■■「フローズン」■■■
(55点/サスペンス)
ホリストン山という雪山のスキー場にスキーに来たダン、ジョー、パーカーの3人の若者たちは、最後の滑りを楽しもうと夜間のスキー場でリフトに乗る。
しかし彼らが乗ったリフトが山上へ向かう途中で、係員が勘違いしたせいでリフトを停止してしまい、地上十数メートルの空中に彼らは取り残されてしまう。
スキー場は週末のみの営業のため1週間後までリフトが動かない事を知った彼らは必死で大声を出して助けを求めるが、彼らの声は誰にも届かず救助は一向に訪れない。
最初は楽観的に構えていた彼らだったが、やがて吹雪の勢いが強くなってきて人が誰も近づかなくなった事から、自分達が食料も連絡手段も持たないまま極寒の雪山に取り残された事を知り…
夜間のスキー場でリフトの上に取り残された3人の若者の運命を描いた、シチュエーションサスペンス映画。
いわゆるディザスタームービーとかによくある『極限環境』を描いたパニック映画なのですが、スキー場のリフトの上ってのは割と新しい目新しいシチュエーションだと言える作品ですね。
同じようなシチュエーションの『取り残され型』の映画では、海を舞台にした「オープン・ウォーター」なんて映画もありましたし、本作も都市伝説にでもなりそうなシチュエーションのアイデア自体は悪くないと思うのですが、流石に舞台を『リフトの上』だけの映画で90分もたせるのは、ちょっと無理がありすぎかなぁ…
一応、緩急ある展開でお話を盛り上げようとはしているのですが、いかんせん場所が『リフトの上』から殆ど動かないために、いまひとつ盛り上がる要素が無さすぎます。
シチュエーションのパターンも思いつく限りでは『吹雪』が来るぐらいしか無いのですが、狼の群れがやってきたりと色々とシチュエーションに幅を持たせようとしているのはなかなか良い感じ。
加えて『痛そうな表現』とかも描く事で、単純なシチュエーションサスペンスではなく『痛そうな映画』としても見せ場を作ってるのは、割と好印象なところ。
ただ、それでも『大海原の真ん中』みたいな完全な孤立状態という訳でも無いし、リフトの高さもそこそこで『頑張れば脱出できるシチュエーション』なので、全体的に絶望感や緊張感が薄いんですよね…
雪山遭難を題材にした作品のような『極寒による怖さ』が今ひとつ伝わってこない構成なのも、ちょっと残念なところ。
また登場人物が3人と少ない事もあって間が持たない部分があり、ちょっと冗長な印象になってしまっているのも難点かなぁ…
この手の映画では登場人物が少ない事を補うために、割と『極限状況における心理劇』を中心に描いたりする事が多いのですがそういった方向にも走りきれてないような感じなので、いっそメインの登場人物を6人ぐらいにして『犠牲者』のバリエーションでも増やせば、そこそこ盛り上がる映画になったかも?
あるいはもうちょっと舞台に広がりを持たせるような要素があれば、もっと面白い作品になったと思うので、その辺は惜しいところですね。
あとどうでも良い話なのですが、このシチュエーションなら3人で上着を脱いで『簡易ロープ』を作って、ある程度の高さまでロープで降りてから飛び降りてれば、普通に無傷で脱出できたんじゃないかと思ったのは自分だけですかね?
まあ自分が同じような状況に陥ったときに、そこまで冷静な判断が出来るかは分からないですが…
総評としましては、シチュエーションもののサスペンス映画としてはそれほど出来は悪くは無いものの、特筆するほど面白い要素も無いために『ごく普通の地味なパニック映画』になってしまっている感じの作品です。
アイデアやシチュエーションは割と面白いと思うのですが、なんというか『それだけの映画』で終わってしまっているのが残念なところ。
まあ、微妙な部分もあるもののサスペンス映画としては及第点は満たしていると思うので、気になっているのなら観ておいても損は無いレベルの一本だと思います。
スキー場で怖い思いをしてみたいとか、これからスキーに行くので景気付けに観てみるというようなネタで観るのも、割とアリの映画かもしれませんね。