■■■「SAWレイザー」■■■
(45点/サイコサスペンス)
とある事件によって恋人のエリザベスを失った事により狂気に捕らわれた美容師のヘイゲンは、死ぬ間際に『いつでも戻ってくる』と言った恋人の言葉から、彼女の復活を信じて死体を防腐処理し自室で管理し続けるという異常な行動を取り続けていた。
そんなある日、不気味な2人組みの男から『死者を復活させる方法を知っている』という奇妙な話を聞かされる。
それは自分の背中の皮膚に魔法陣を刻み込む事によって、『地獄の門』へと自らの魂を運びこむというオカルト的な呪法だった。
呪法を試した彼は寂れた地下通路のような場所で目を覚ますが、そこで全身を拘束具と鋲で固定した異様な姿をした『悪魔』と遭遇し…
『愛する人の死』から狂気に捕らわれた男たちの運命を描いた、オカルト風味のシチュエーションスリラー映画。
タイトルの「SAWレイザー」ってのは、『「ソウ」の緊張感と「ヘルレイザー」の残酷さが融合した作品』という意味だそうですが、当然ながら実際にはどちらの作品とも全く関係ないですし、それほど共通点のある作品でもありません。
まあ『愛する人の死を受け入れられずに、罪の意識や後悔の念から自分の魂の中にある『地獄』にハマり込んでしまった主人公たち』という設定は、なんとなく「ヘルレイザー」を彷彿(ほうふつ)とさせる部分はありますし、なかなか面白い設定ではあると思います。
あと、主人公たちが地獄で出会う『悪魔』の姿が『全身に拘束具や鋲を取り付けた異様な姿』でデザインされてる辺りは、「ヘルレイザー」の『魔導師』のデザインに影響を受けているというのは感じられますね。
ちなみに、低予算映画の割にはコイツらのデザインがなかなかカッコ良かったりするので、「ヘルレイザー」の『魔導師』大好きな人なら、それだけの要素でもちょっと楽しめるかも?
ただ「ソウ」の要素に関しては、『悪魔』の1人がブタっぽいマスクを被っている事と、『悪魔』の声がボイスチェンジャーを通した「ソウ」のジグソウっぽい声な事ぐらいしか思いつかないので、正直言って『「ソウ」ってタイトルを付ける必要とかあったんかいな?』とツッコまざるおえません。
肝心の作品の内容は雰囲気や映像表現のセンスはなかなか良く出来ており、低予算ながらも作品全般に流れる陰鬱な雰囲気は良い感じですし、『悪魔』のデザインやら美術センスも悪くない印象。
ただ低予算ゆえに全体的に特撮が微妙な感じで、割と『痛々しいシーン』とか『残虐描写』をウリにした作品の割には、あまりにも『作り物っぽさ』がモロに分かってしまうせいで、『痛そうなイメージ映像』で済ませているシーンは不気味なのに『リアルに描いた残虐シーン』ほど『逆に痛々しさや気持ち悪さを感じられなくなってしまっている』のは本末転倒というか何と言うか…
ストーリーに関しても、お話が進んでいくに従って謎(彼らが何故に『地獄』に捕らわれたか)が解き明かされるような展開になっているのはなかなかに面白いと思うのですが、複数の主人公の視点をシャッフルするような感じでお話が進んでいくため、全体的に話が分かりづらくてちょっとイライラする部分があったのは残念なところ。
作品のプロットやアイデアは悪くないと思うので、もう少し理解しやすい構成になってても良かったんじゃないかと…
あと、謎解きを散々引っ張った割にはオチが矢鱈とアッサリしており『非常に物足りなさが残る構成』なので、オチはもう一捻り…というか、もうちょっとインパクトのあるラストシーンが準備されてても良かったかな?
また、どうにも撮りたい方向性に対して『予算不足や監督の技量不足』が透かし見えてしまう部分が多いので、もうちょっと予算をかけるか、逆に予算や技量に見合ったレベルで我慢して作品を作ってればもっと良い感じになったんじゃないかと思うので、そういう意味では惜しい作品でした。
総評としましては、狙った方向性や雰囲気は悪くないと思うんですが、全体的に『雰囲気やアイデアが良い割には内容で物足りなさの残る作品』って感じですね。
少なからず『見るべきところ』はあるんですが、全体的にショボさが目に付いてしまう部分が多くて辛いので、その辺を寛容な心で許せる人であれば十分に楽しめる作品だと言えるでしょう。
まあ所詮は低予算映画なので過剰な期待は禁物ですが、「ヘルレイザー」とかの雰囲気が好きであれば『物の試し程度に観てみても良いレベルの作品』かもしれません。