■■■「邪神バスターズ」■■■
(50点/モンスター)
エジプト北西部のカタラ台地から、クトゥルフ教団が古代の邪神である「クトゥルフ」の墓所を開くための鍵となるレリック(遺物)の片割れを発掘する。
教団を監視し行動を阻止しようと活動する『協議会』は、邪神の復活を防ぐためにもう一つのレリックの片割れをラブクラフトの子孫へと託す事を決定し、彼の元を訪れる事となる。
しかし売れない広告デザイナーで何の取り得もないジェフは、『協議会』から自分が唐突にラブクラフトの子孫であり『人類の滅亡を防ぐためにレリックを守ってくれ』という事を依頼されて困惑するが、最初は半信半疑だったものの『クトゥルフの落とし子』の率いる教団の刺客が彼らの元を襲撃。
オタクの同居人であるチャーリーと共に『レリック』を持って何とか襲撃を逃れた彼らは、邪神教団への対抗手段を知るためにクトゥルフ神話の大ファンである旧友の元を訪れ協力を依頼するが…
H・P・ラブクラフトの子孫である何の取り得もない若者たちが邪神クトゥルフの復活を阻止するために戦うことになるという、コメディタッチのモンスターホラー映画。
いわゆる「クトゥルフ神話」をベースとしたコメディホラーで『何の取り得もないオッサンどもが邪神の復活を阻止するために戦う』という設定から、なんとなく「ゴーストバスターズ」のパクリっぽいタイトルを付けた感じなんでしょうが、まあ当たらずとも遠からずって感じの内容の作品ではありますね。
こんなふざけたタイトルながらも内容的には意外にキチンと「クトゥルフ神話」していて、序盤にクトゥルフ神話を知らない人向けに『クトゥルフ神話の簡単なあらまし』みたいなものが語られてみたりと、『初心者向けの配慮』がされている辺りが妙に良く出来ててちょっと感心しました。
しかし『クトゥルフ神話をベースとした世界背景の設定』やらは割と良く出来ているものの、肝心のお話の方はイマイチな内容といった感じ。
アバウトすぎるストーリー展開なのはコメディだから許すとしても、中盤の『ロードムービーっぽい展開』は作品のテンポを悪くしているだけだし、主人公たちのオタクっぽいキャラクターも特に好感を持てる要素も無くて、今ひとつキャラクターに魅力が感じられないのは辛いところ。
(クトゥルフ神話オタクの人って、本作のようなギーク的なタイプじゃなくて、もっと『作品を分析したり理屈っぽい事ばかりを語っているタイプ』じゃないかって気がするし…)
「ギャラクシークエスト」的なノリを狙った作品なんでしょうが、コメディ要素も『ここは笑うべき所なの?』という感じのネタが多くて、今ひとつセンスが感じられないというか面白味に欠ける内容です。(というか、クトゥルフ神話を題材にした『定番パロディ』的なネタが、そもそもあまり存在しないのが辛さに拍車をかけてる気がする…)
また低予算ムービー故に仕方ないとは言え、登場する邪神教団もショッパい連中ばっかりだし、『チュパカブラの着ぐるみ』にしか見えない「深きものども」も非常に残念な印象。
本編のボス的存在である「クトゥルフの落とし子」もTシャツを着た矢鱈とフランクな格好で威厳もクソも無い(まあ、そこはコメディ故のデザインって事なんでしょうが…)ですし、物凄く弱くて見せ場が殆ど無いのも残念なところだなぁ。
もっと『クトゥルフ神話らしい怪物』を色々と登場させたりデカい邪神を登場させたりとか、盛り上がるシーンを作って欲しかった。
ラストも矢鱈とアッサリしすぎで『邪神教団もそんなにアッサリあきらめちゃうの?』って感じだし、どうにも全体的に物足りなさの残る作品でしたよ…
総評としましては、『ボンクラなラブクラフトの子孫が邪神復活を阻止するために戦う』という設定そのものは面白いと思うのですが、監督のセンスやら予算やらの面が不足しており『設定を上手く料理しきれなかった作品』といった感じの一本ですね。
作り方しだいではもっと面白い作品になったと思うので、全体的に残念な部分ばかり目に付く内容になってしまっているのが惜しいところです。
まあ単純にコメディホラーとして観るといま一歩な内容ながらも、そもそも『クトゥルフ神話のパロディ』って作品自体が非常にレアな存在ですし、そういうジャンルに興味があるのであればチェックしておいても損は無い一本だと言えるでしょう。
そういう意味では『クトゥルフもの』といったジャンルものの好きな人であれば、とりあえず観ておいても損は無い作品かもしれませんね。