■■■「THE JOYUREI ~女優霊~」■■■
(40点/オカルト)
霊による悪夢と幻覚に悩まされる映画監督のマーカスは、病床の妻を救うために新作映画を撮影するオファーを受ける事となる。
彼は自分の幻覚の元になっている、1928年にオルト監督によって撮影された『中世のルーマニアに伝わるマーティアという悪霊の伝説』を撮った映画を題材として映画を撮ることを決意する。
ルーマニアのトランシルバニアで映画の撮影を開始したマーカスだったが、彼が幼少のころに観たと信じていた映画はスタッフの変死によって実は完成しておらず、誰の目にも触れていなかった作品だという事を知らされる。
不可解なものを感じながらも撮影を続ける彼だったが、やがて撮影の最中に奇妙な事故が相次いで発生するようになり…
映画撮影にまつわる都市伝説を題材とした中田秀夫監督のデビュー作「女優霊」のハリウッドリメイクに当たる、オカルトホラー映画。
一応は「女優霊」のハリウッドリメイクという扱いになっていますが、ぶっちゃけ『設定の一部のみを共通のベースとした全く別のお話』って感じの作品ですね。
序盤の『過去に未完成となったホラーをリメイクする』って展開までは同じなのですが、オリジナルでは明確に定義されていなかった霊の正体を『古代伝承に伝わる悪魔』として定義しており、終盤ではその悪魔が登場して大暴れするという展開で、殆どモンスターホラーみたいなノリになっております。
海外ではやはり『ハッキリと正体の分かる怪物』が登場した方がウケが良いのかもしれませんが、『「女優霊」のリメイクでソレをやっちゃダメだろう?』って感じ…
そんな展開ですから、オリジナルの最大の持ち味である『何だか良く分からないけどとにかく鳥肌が立つぐらい怖い』という雰囲気や、『自分の過去の記憶と重ね合わせて都市伝説を追体験するような演出』も無いですし、何というかオリジナルの良い部分をものの見事にスポイルしてしまっている印象です。
ただ、代わりに残酷描写やグロい演出は大幅に強化されており、ぶっちゃけ『ちょっとグロすぎだろ!!』と思わなくも無いですが、そういうノリが好きな人なら楽しめる要素が追加されているとも言えるかも?
ストーリーも大幅に改変されている事から、正直言って『別の作品』として楽しんだ方が良いようなレベルなのですが、この改変後のストーリーも無駄に難解で終盤の展開とか蛇足っぽい部分も多くて、なんとも微妙な印象なのは困り者かなぁ…
もともと、日本の映像文化や都市伝説っぽい設定に根付いて作られた作品なので、ハリウッドリメイク向けじゃ無かったという点で無理がある作品だったのかもしれませんが、もうちょっとどうにかならんかったんだとうか?
総評としましては、「女優霊」のリメイクとして観ると『何じゃコリャ?』ってレベルですが、オリジナルのモンスターものオカルトホラーとして観るならば『とりあえず、観れるレベル』って感じの作品ですかねぇ?
グロ系のオカルトホラーが好きな人ならば、そこそこ楽しめる作品だと思うのですが、逆に「女優霊」が好きでリメイクとして期待して観るならば正直言って『観ない方がマシ』なレベルの一本です。
純粋にそういったジャンルが好きな人か、敢えてハリウッドリメイクホラー作品の『ネタ映画』として観てみたいというのであれば、総じてそこまで酷い出来の映画ではありませんので『お好みでどうぞ』ってところでしょう。