■■■「[リミット]」■■■
(55点/サスペンス)
イラクでトラックの運転手を勤めていたアメリカ人のポールは、ある日、トラックが何者かに襲撃されて目を覚ますと『棺おけのような木箱の中』に閉じ込められて、土の中に埋められている事に気づく。
手元にはライターと携帯電話が置かれており、携帯電話で警察やFBIへと連絡をとるものの今の自分の状況を説明しても一向に信じてもらえずに途方にくれてしまう。
着信履歴からテロリストらしき相手と会話し『3時間以内に500万ドルを届けないと命は無い』と要求された彼は、やっとの思いで国防省と連絡が付き救出を依頼する事に成功するが、箱の裂け目から砂が入り込んできたうえに酸素の残りも少なくなり、彼の生命のタイムリミットは刻々と迫りつつあった…
テロリストによって地面の中に生き埋めにされた一人の男の辿る運命を描いた、シチュエーションスリラー映画。
いわゆる『密室監禁タイプ』の作品で、登場する人物も主人公のみという典型的なタイプのシチュエーションスリラー作品ですね。
お話の舞台が『地面に埋められた棺おけの中』という極めて限定的な状況での物語を描いているという部分はなかなか個性的ですし、その状況でストーリーがキチンと成り立っている辺りは、なかなか上手い作品だと思います。
ただ内容のほうは、シチュエーションの特異さの割には平凡な『並レベルの作品』ってのが正直なところかなぁ?
シチュエーションスリラーの面白さって『限定された状況でのサスペンス的な謎解き』に加えて『自分がこういう状況に陥ったらどうしよう』という怖さがあると思うのですが、本作は主人公が『イラクに出稼ぎに出ている民間ドライバー』という極めて特殊な立場の人間なので、今ひとつ現実感が無くて共感を抱きづらいのは辛いところ。
あと、主人公は基本的に『棺おけに閉じ込められているだけ』なので、タイムリミットはあるものの『直接的な脅威』や『駆け引き』というものがあまりなくて、それほどの緊張感が無いのは残念な部分ですね。
シチュエーション的に閉所恐怖症の人間には怖そうなイメージなのですが、映像的に『閉所』という圧迫感もあまりなくて、いまひとつ面白味がないのも惜しい…(「HAZE」とかみたいに、もっと押しつぶされそうな圧迫感が感じられた方が良かったと思う。)
ただ、ストーリーのプロットや物語の組み立てはなかなか上手く出来てて、危機的状況を理解して貰えずに電話でたらいまわしにされたり、テロリストから電話がかかってきて様々な要求をされたりと、この状況で90分間ダレることなくお話を組み立てているのはなかなか上手いです。
しかし、先述のとおり『盛り上がる要素』があまりに少なく、犯人が最初から分かっているので謎解き要素もなく、オチも『救出される』か『死ぬ』かの2択なのが分かっているので、全体的に『もうひと捻り欲しかった』ってのが正直なところでしょうか?
それにしてもいくら盛り上げるシチュエーションが少ないからといって、『棺おけのなかに毒蛇が紛れ込んでる』ってシチュエーションはあまりにも強引な気が…
あと、テロリストが主人公を方向転換も出来ないような『棺おけ』に閉じ込めた際に、携帯電話や要求を描いたメモを『足元側に置いておく』ってのは嫌がらせ以外に何か意味があるのだろうか…
シチュエーションが乏しいからといって、そんな部分でまで無理やり緊張感をもたせるような演出をする必要があったのかと…(笑)
総評としましては、映画としては悪い出来ではないものの『シチュエーションの特異さ』の割には内容の方はそれほどでもないという、ちょっと『物足りなさを感じる作品』ではありますね。
もうちょっとサスペンス的な要素なりがしっかりと作られてれば良作になったと思うのですが、全体的に普通レベルにまとまってしまって単なる『小ぢんまりとした映画』になってしまっているのが惜しい。
ただ、シチュエーションスリラーとしては凡庸なレベルながらも『及第点を満たしている作り』ではあると思うので、シチュエーション的に惹かれるものがあるならば観ておいても悪くない作品かもしれませんね。
過剰な期待をしなければ、そこそこ楽しめる一本ではないかと…