■■■「悪霊の餌食」■■■
(65点/モンスター:オススメ)
欧州のブラックウッドという人里離れた森の中に住む年老いた両親の元を訪れたポールとクレアの夫妻は、死期の近づいた母親から謎の『壷』を託され『嘆きの婦人を決して傷つけてはならない』という奇妙な伝承を聞かされる。
その日の深夜に『異様な叫び声』のようなものを聞いた彼らは家の外まで音の原因を調べに行くが、その隙に家へと『白い霧を吐く魔女』のような怪物が襲来。
クレアは何とか怪物を撃退するが、彼女が怪物を傷つけてしまった事が原因で、蘇った死者の群れが次々と彼らに襲いかかってくるのだった…
北欧の伝承に伝わる『バンシー(泣き女の精霊)』を題材とした、オーストラリア製のモンスターホラー映画。
タイトルとかパッケージのイメージからして『B級どころかD級映画ぐらいの雰囲気がぷんぷんする作品』なので、正直なところ全く期待していなかったのですが、意外にもなかなか面白い…どころか『かなり怖い作品』でした。
お話としては『バンシー』を題材としたオカルト風味のモンスターホラーといった感じなのですが、映像や特撮のレベルはたいした事がないものの全体的な雰囲気作りが素晴らしい。
北欧の寂れた森の奥の田舎の風景や、古びた屋敷と老夫婦といったシチュエーションのかもしだす『異様な雰囲気』は、まさに『欧州ならでは』といったテイストで絵面的に『言いようの無い不気味さ』を表現しており、それだけでも一見の価値あり。
(Jホラーで『古びた日本家屋』が独特の怖さをかもし出すのと同様に、これは欧米ならではの独特の怖さだと思う…)
序盤は単なる不気味な映像の『雰囲気映画』かと思いきや、中盤からは『怒涛(どとう)の展開』といった感じで、鎌を持った死神みたいな死霊が現れたり、殺された家族がゾンビになって現れたりと、そこそこ派手な展開と残虐描写のある『悪趣味なモンスター映画』になってしまう辺りもいかにも欧州ホラーっぽくて面白いです。
モンスターの襲撃シーンとかは若干少なめですが、緊張感の持続させ方や間の持たせ方が上手くて、あまり退屈はしない雰囲気。
次に何が起こるかの予測できないドキドキ感と、作品全体に漂う絶望感が良いテイストを出している作品ですね。
(でもちょっとネタバレになりますが、この展開であれば個人的にはもっと『救いの無いオチ』でも良かった気はするなぁ…)
ただ惜しむらくは、低予算ゆえに特撮とかのレベルが全体的にあまり高くない事かな?
CGを用いているシーンにちょっと違和感を感じたり、派手な見せ場のシーンが今ひとつ盛り上がらなかったりする部分があったので、もうちょっと予算があればもっと高レベルの作品になったと思うので、その部分はちょっと残念なところかも?
総評としましては、全体的に非常に雰囲気が良くて想像以上に良く出来た『掘り出し物的なB級ホラー映画』って感じの作品です。
あきらかにパッケージとかタイトルで損をしてる作品だと思うので、『もうちょっとどうにかならんかったもんか?』とは思いますが…
とまれ、B級ホラーが好きであればかなり楽しめる作品だと思いますので、『欧州の独特の雰囲気のホラー』が好きな人や『モンスター映画』が好きな人であれば、とりあえずチェックしておいて損は無いタイトルだと思いますよ。
メジャータイトルほどのインパクトはありませんが、小粒な掘り出し物的ホラーを探しているならオススメの一本ですね。