■■■「バタフライエフェクト・イン・クライモリ」■■■
(55点/サスペンス)
森の奥で不審な男が何かを埋めているのを目撃した高校生のマークは、友人らと3人でその場所を掘り返したところ、バックパッカーの女性と思われる死体を発見。
好奇心から自分たちで犯人を突き止めようとした彼らは、マークがた手がかりである『蝶の模様のタイヤカバーを付けた4駆』を探し、実際に犯人を付きとめる事に成功する。
しかし犯人を突き止めた彼らは警察に通報しようとはせず、逆にその殺人犯を利用して『自分たちと過去に確執を持つ仮釈放中の犯罪者』であるゲーリーを、殺人鬼の手によって殺害させようと画策するが…
過去に秘密を持つ高校生3人組が、殺人鬼を利用して自分たちと対立する別の人間の殺害を計画するという、オーストラリア製のサスペンススリラー映画。
何と言いますか、全方位から『ツッコンで下さい』と言わんばかりのタイトルの作品ですが、別に『主人公がタイムスリップして過去を改変しようとする』訳でも無く、『森の中に住む食人一家』が登場する訳でもなく、当然ながら「バタフライエフェクト」とも「クライモリ」とも全く関係の無いお話です。
まあ、殺人鬼と『蝶』の関連が印象的に使われていることから百万歩ぐらい譲って「バタフライ」は理解できるとしても、「クライモリ」の方は本作と1ナノメートルたりとも関係ないと思うのですが、何を思ってこんなタイトルを付けたんだろう…
(ちなみに原題は「acolytes(侍祭:聖職者の下級聖職の1つ)」というタイトルです。)
タイトルのツッコミどころの満載っぷりはさておくとして、肝心の本作の内容の方は『割と凝った設定のサスペンス映画』って感じの作品ですね。
一見、関係の無さそうな事象が意外なところで関連を持っていたりして、終盤の展開の『先の読めなさ』は意外性があってなかなか面白いです。
思わずビクッとしてしまうような『フラッシュバック的な効果』を多用する演出もなかなか良くできていて、映像のセンスとかも良い作品ですね。
ただ個人的に気になった部分としては、主人公たちにあまりにも奇矯(ききょう)な行動が多くて『全く感情移入できない事』かなぁ?
いくらワルぶってるからといって、死体を放置して警察に通報もせず自分たちで犯人のことを調べて、挙句の果てに『殺人鬼に別の人間を殺害させようとする』なんて、流石にキチガイじみすぎてて、ちょっと付いていけません。
あまりに主人公たちに『アホな行動』が多くて、他に登場するのも殺人鬼や前科者といった酷い連中ばかりなので、正直言って登場人物の誰一人として感情移入をすることが出来ずに、途中から『お前ら全員、さっさと酷い目にあえよ!!』ってぐらいの気分で観てしまい、思わずイライラしてしまったのは辛いところ。
ただそれ故に、ラストの「バタフライエフェクト」とは似ても似つかないような『救いの無いオチ』は、非常に印象的で良い感じではありました。
総評としましては、ちょっと特殊なテイストながらもスリラーやサスペンスとしては『割と観るべきところのある作品』だと思います。
『主人公たちのアホっぷりがどこまで許容できるか』で評価が割れそうな気もするので、心情的にアホ(というかDQN)な主人公たちが許せないという人はスルーしてしまった方が良い作品かも?
ただ映画そのものの出来は悪くはないので、ジャンルとして気になっているのであれば、とりあえずチェックしておいても損は無い一本かもしれません。
ちなみに前述のとおり「バタフライエフェクト」や「クライモリ」とは全く関係がなく、それどころか共通点を探すのが「ウォーリーを探せ!!」の上級問題なみに難しいレベルなので、その2作のタイトルに釣られて観ようとしている場合は要注意ですよ。